目覚めるとそこには……
目を開くとそこは知らない天井……では無く、見覚えの無い大きな丸い出っ張りが視界を塞いでいる。まだ焦点が定まらなくて目が良く見えない。睡眠不足だったからか頭がうまく働かない。
なんだこれ? 手を伸ばして掴む。
フニフニムニュムニュ。
柔らかい。おっきなマシュマロかなぁ? 触ってると落ち着いてきて眠くなってきた。
「夕貴、大事が無いようで何よりなのだが……そろそろ放してもらえないか」
耳に届く少し低い声。その声が僕の意識を現実に引き戻す。
目をしっかり開けて状況を把握しよう。
まずこの声は竜宮寺さんの声だ。
そして頭は何か柔らかくて温かい枕みたいな物の上に乗っている。僕は仰向けに寝ているのか、よしここまでは理解できた。
しかし分からないのはこの目の前にある僕の手が掴んでいる球状の物体だ。今現在もその球体は圧倒的モニュモニュ感を持ってして僕に安らぎを与えてくれている。
でも竜宮寺さんの姿だけが見当たらない。
「夕貴、起きているのだろう? 放してくれ」
突然、球体の横に竜宮寺さんの顔が見えた。
「――ッ!?」
仰向け、柔らかい枕、モニュモニュ、そして竜宮寺さんの顔……ッ!? 頭の中で点と点が繋がり線になる。
た、たた大変だ大変だ大変だッ! これは――ッ!
「おっぱーッ!?」
膝枕されたまま絶叫してしまう。
二つの球体は竜宮寺さんのおっぱい!? 乳房!? パイオニア!?
「なんだ今まで気付かなかったのか? まったく何て鈍感な、これでは君に頼むのはやめに……いや待て、これはいわゆる可愛い要素の一つである『天然』というものではないか? だとしたらまさに――」
竜宮寺さんは僕に揉まれたことなんか気にしてないようになにか一人でブツブツと言ってる。でも僕の頭の中はさっきの柔らかさとパイオニア発言でおっぱい――いや、いっぱいだよ! おっぱいがいっぱいなんだよ!
「りゅ、竜宮寺さんッ!」
「――うってつけではないか、そもそも可愛いという概念を私は――」
「竜宮寺さん!!」
「――ん? あぁ済まない、聞いてなかった」
「うん、そうみたいだけど、ちょっといい?」
「ん? 胸ならもう揉ませないぞ?」
「も、揉まないよ! そうじゃなくて、起きるから、その……胸に顔が当たらないようにしてね」
普通なら膝枕から起きるくらいでそんな嬉し恥ずかしハプニングは起きないと思うんだけど、竜宮寺さんのおっぱいは常識のそれを逸脱しているんだ!
僕はおっぱいに当たらないように頭をおっぱいと垂直――つまり太ももと平行方向に引き抜いて上体を起こす。
いやまぁ正直なところおっぱいに当たりたい気持ちはある。男の子だもん! でもさっきまであれを鷲掴みにしてたことを思うと、罪悪感があったんだ。
それにしても僕はこの短い間でどれだけおっぱいと考えたのだろう。
平静をどうにか保ち、座り直って竜宮寺さんと向かい合う。
「大丈夫みたいだな。心配したんだぞ?」
「へ?」
あぁそういえば、竜宮寺さんに激しく頭を揺さぶられてそのまま意識が飛んだような……。
「全く、人と話してる時にいきなり寝るだなんて豪快な奴だな」
「ええ!? ちょ、ちょっと! 竜宮寺さんの中では僕が普通に寝たことになってるの!? ほぼ百パーセント君のせいで気絶したと思うんだけど! というか、さっき心配したって言ったよね? 寝たんじゃないって分かってたよね?」
「アッハッハ! まぁそんなことはどうでもいいじゃないか」
バシバシと背中を叩かれる。
「強引だね」
「長所だ!」
「そう自信を持つ類の物でもないけどね!?」
「まぁそんなことより私の頼みでも聞いてくれ! というか叶えてくれ!」
「いやいやいやいや! 脈絡も何もあったもんじゃないよ! 竜宮寺さん国語の成績悪いでしょ」
「まぁ……中の下、段払いからの右直突きってところかな」
「そんな空手風の表現で答えられたの初めてッ!!」
「うむ、私も初対面の人とここまで打ち解けたのは初めてだ! ハッハッハ!」
ニヤっと歯を見せて彼女が笑う。
「……まぁ、話を聞くくらいならいいけど」
彼女の奔放さに、そう言うしか僕に選択肢は残っていなかった。
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