柏木さん
「夕貴様の気持ちは、お嬢様にも届いたと思います。どうかお気になさらないで……いえ、気にして頂け無いと困るのですが、なにぶん、事が大きいですからね。でもご主人様もああ仰っていましたから、多分、大丈夫です」
帰りの車の中、失礼を働いた僕達をそれでも家まで送ってくれているのは柏木さんだ。実は柏木さんは源次さんに頼まれてずっとドアの前で中の会話を聞いていたらしい。
花音さんは愛されているなぁと思った。
「絶対告白すると思ってたのになぁ~、なんであそこであんなこと言うかなぁ? おにぃは鈍い! 鈍すぎるよ!」
ちょっと藍!? おにぃって呼んだら――。
「えぇ、男の子なんですからね。私もあそこはびしっと、「俺の女に手を出すんじゃねぇ!」くらいは仰られると思いました」
――って、えぇ!?
「柏木さん……僕、女の子ですよ? 女子高生ですよ?」
「いえいえ、男の子ですよ。私、確認してますもの。水着のサイズを確認するためにメジャーを巻いた時に感じたあの独特な感触。男の子のそれと、すぐに分かりました」
「え、えぇ……」
柏木さんの余りの能力の高さに言葉も無い。
「え~、でも分かってたならどうしてその場で言わなかったの? 普通だったら言うんじゃないの?」
「そうですね……外見で判断できるほど、人っていうのは簡単にできて無いからですかね。そして八割は女の勘です」
そう言って初めて見せてくれた素の笑顔はとても可愛らしくて、沈んでる僕の気持ちを少しだけ救ってくれた。
「ほへぇ~……私も早く女の勘が使えるようになりたい!」
夕日が落ちかけている国道を僕達が乗った車はひた走る。僕は柏木さんが言ってくれた「外見で判断できるほど簡単では無い」という言葉を噛みしめていた。
――数分後
「到着致しました」
車は僕の家の前に着いた。ドアの開けて車から降りる。さっきまで浮かんでいた太陽はもう沈んで代わりに月が浮かんでいる。
「柏木さん、ありがとうございました。そして本当に申し訳ありませんでした」
「私に謝ってくださらなくて結構ですよ。それよりも明日、お嬢様とちゃんと仲直りをしてください」
「……わかりました」
「それではこれで失礼します」
柏木さんの運転する車は月の方向に帰って行った。
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