ロリコンチェック
「よぅし、準備オッケー!」
藍とクローゼットの中に入り、お見合いが始まるのを待つ。藍は心なしかテンションが高い。
「藍、静かにしてないとばれちゃうよ?」
「オッケーオッケー。小声で話せば大丈夫でしょ」
クローゼットは部屋の端にあるし小声なら人がいても話せると思う。
「緊張するなぁ」
「なんでおにぃが? 花音ちゃんなら大丈夫だよ」
「藍は特訓を見ていないからそんなこと言えるんだよ、花音さんの趣味スクワットなんだよ!? あれからテスト勉強の様に可愛い受け答えを丸暗記してもらったけど、イレギュラーな質問が来たら一発アウトだよ! 例えばパンツの色とか」
「そんな事を聞いてくる見合い相手の方がアウトだと思うよ!?」
そうだ。あの特訓の日々の結果が、今問われようとしているんだ。答えの出ない感情と、特訓の成果が試される。このお見合いはもう僕にとっても特別な物なんだ。
「こちらでございます」
ドアが開く音の後に柏木さんの声が聞こえた。話声も聞こえる。源次さんともう一つは知らない人の声だ。多分見合い相手の父親だろう。
クローゼットの隙間から見えるのはソファーだけ、それも細い隙間だから良く見える訳でも無かった。
四人が腰かけ、お互いの紹介が終わる。
お見合い相手の名前は桜庭 修一さん。いかにもお金持ちって感じの名前だ。いや、もちろんイメージだけど。
そしてこれからが本番、練習を重ねた質問タイムだ。
「花音さんのご趣味は?」
ここで初めて声を発したのは修一さん。姿を確認することはできないけど、低音で良く響くいい声だ。
「休日に飼い犬と遊ぶことです」
花音さんは練習通りに答えを返していた。
この返答は動物好きをアピールできつつ、ちょっと子供っぽい演出もできる芸術的な返答だ。もしも相手がロリコンだった場合「動物と戯れる女の子キター!」となるし変態だった場合「犬にどこを舐めさせる遊びかな? ぬふふふぅ!」となること請け合いだ。
「いいですね。私も犬を飼っていまして、今度一緒に散歩したいですね」
「えぇ、是非。最近可愛い首輪にしたので見て頂きたいです」
この回答もロリコンだったら「はぁはぁ、女の子とおさんぽ!」そして変態だったら「ぐへへ、首輪をするのはお前だがなぁ!」となる。あれおかしいな、どっちも変態にしか思えない。
そもそも可愛さを演出するためにロリータを進めたのであって、相手が実際にロリコンな訳では無いのだから、ロリコンだったらっていう考えはやめよう。今必要なのは、普段の花音さんよりも少しだけ可愛い花音さんだ。
「それでは私達はここら辺で失礼しようかな、後は若い二人で、ということで」
「え、えぇそうですな。花音、失礼の無いようにな」
そうして大人二人が出て行ってしまった。テレビでしか見たことが無かったお見合いだけど、本当に「後は若い二人で」なんて言うんだな。
「花音さんは高校生ですよね?」
「はい。先日入学したばかりです」
「そうですか、もう友達はできたのかな?」
「えぇ、親友が一人できました」
「そうですか……もし結婚することになったら学校には行きたいですか?」
「それは……」
しばらくの沈黙の後、花音さんがはっきり言う。
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