駆け落ち
朝食も済ませて、後は竜宮寺さんが迎えにくるのを待つばかりの昼近い時間。姿鏡の前に立ちファッションチェック。白いブラウスにピンクの春色ストール。チェックのパンツを合わせてちょっとだけフォーマルにかつカジュアルに。
うん、やっぱり僕には可愛い物が良く似合う。
この週末が終われば僕は竜宮寺さんとも仲良くして、可愛いものに包まれた普通の高校生活が待っている。あれからあまり話はしてないけど、新妻さんも何度か遊びに誘ってくれているし、行ってみたい。
僕の未来は順風満帆だ。
「お、おにぃ準備できたよ!」
玄関に座っていると藍が荷物を持ってきた。両手にキャリーバック、この子は今から旅行にでも行く気なのでしょうか。
「すごい荷物だね」
「お、おにぃが少なすぎるんじゃない!?」
「いや、必要なものは持ったから大丈夫だよ」
着替えとメイク道具と貴重品。一泊するだけ何だからこれで充分だと思うけど……やっぱり本物の女の子は必要な物が多いのだろうか。
遠くから車のエンジン音がして僕の家の前で止まったのが分かった。
「母さん! 行ってきます! 藍、行くよ!」
「ちょ、ちょっとそんな大きな声を出しちゃ駄目なんじゃないの?」
「お邪魔する!」
玄関が竜宮寺さんの手で開かれた。
「おぉ夕貴、準備がいいな。早速車に乗ってくれ」
竜宮寺さんに促されて外に出て車に乗る。
「迎えに来るって言ってたから車でくるとは思っていたけど……すごい車だね」
僕でも知っている様な高級車。ボンネットに光るのはスリーポインティッドスター。
「アハハ、それほどでも無いさ。では行こう」
「あ、ちょっと待って」
藍がまだ車に乗っていなかった。そもそも竜宮寺さんに藍も行っていいかと聞くことも失念してた。
「竜宮寺さん、よかったら藍も一緒に連れてっていいかな?」
「ん? あぁ構わないぞ。幸い客室はいくつもあるのでな」
「ありがとう。藍、おいで」
僕は玄関で固まっている藍に声をかけた。
「あぅ? くるま? なんで? 駆け落ちは?」
なぜかクエスチョンマークを頭の上に量産している藍を引っ張って車に乗せる。
「ほら藍、これから一泊お世話になるんだから挨拶しなきゃ」
「泊り? 挨拶? ……っ!」
「やあ藍くん。よろしく頼むよ」
竜宮寺さんが藍の手を取って親睦を深めようとしてくれる。
「……だまされたぁあああああああ!!」
「藍!?」
「アッハッハ、藍くんは愉快だなぁ」
藍の絶叫は閑静な住宅街に響き渡った。
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