第一部 第五話
予想以上に字数が多くなった。
6000字超。
およそ2話分。
順調であった。
第6層から第8層まで増築したダンジョンは、着実に冒険者の魂を量産しつつある。
ここで重要なのは、相手にも甘い汁を吸わせることと、皆殺しにしないとこだろう。
誰も戻らなければ、それこそ挑戦する者が居なくなるか、特級の戦力でたたきつぶしに掛かってくるかの二択になってしまう。
逆にいえば、ある程度の利益を生み出すのであれば、人間というのは一定の危険は需要するものだ。
リュウセイの居た地球ですら逃れられない風潮であったのだから、命の軽いこちらの世界なら尚更といえる。
この場合の利益とは、ランダムに設置されている宝箱から入手できる過去の冒険者の遺品。
あるいは地上では手に入らない自然物や、魔物から剥ぎ取られる素材。鉱石や草花、討伐部位はその筆頭だろう。
たとえ存在する自然物だろうと、濃密な魔力環境に晒されたそれらは通常とは違う性質を帯びる。
それは加工に際して様々な影響を及ぼす為、ダンジョンは一種の資源採掘地とすら言えた。
実際、ある程度の数のダンジョンは国営の元管理され、踏破、つまりはダンジョンマスターを弑逆し、迷宮核を奪うことは禁じられている。
それ一個の価値は凄まじいが、長い目で見れば、ダンジョンから得られる資源が生み出す利益の方が勝る為だ。
だが、管理に適さないダンジョンというのも多い。
得られる資源もたかがしれている低層から、やたらと難易度が高いダンジョン。
採れる資源そのものにめぼしいものが無いダンジョン。
人的消耗と採掘資源が釣り合わないダンジョン。
最後のは場合によってはその限りじゃないとしても、これらのダンジョンは概ね踏破される運命にある。
50層以上ある大迷宮など、踏破が実質不可能なものを除けば、危険の塊であるダンジョンですら人はおのれが利益のため利用しているということだ。
そこまで網羅している訳ではないが、リュウセイとて締め過ぎはよくないと理解してる。
現状のコンセプトとしては、1~4層で冒険者の見極め。
5層で最下層までいきそうな冒険者の抹殺及び、見逃しの選定。
6層は宝箱などを多めに設置し、遺品やダンジョン生成の副次品の宝石などで甘い汁を提供。
7~8層を繋げた擬態エリアで調子にのった冒険者達を刈り取っていく。
ただし、逃げに徹するなら見逃すのも忘れない。
また、7~8層は自然物が採れるようにもなっている。
雑木林をメインとした地形だが、むき出しの岩からは鉄などの鉱物。
草花からは薬草や毒草、果実などもそれなりに有用だ。
こうして危険でありながら魅力だと思わせ、深層へと足を向かわせていく。
何度か最下層まで侵入を許したりもしたが、既にBランク程度の冒険者なら複数のパーティーの集団、レイドパーティーでもない限りリュウセイ自身負けない自負があった。
上昇していく身体能力や、増えるスキルの試運転に丁度いいとさえ考えている程だ。
順風満帆といえる現状に機嫌はうなぎのぼりである。
レベル、クラスレベルも順調に上昇し、今回は10層まで構築する予定だ。
「うーん……9層は7、8層が搦手だったし、正攻法な構成にしとくか?」
あまり奇策ばかりの階層を作るのも考えものだろう。
それならと、リュウセイはいっそ清々しいくらいに正攻法な層でいこうと考える。
「道は一直線。途中途中で二股路を用意して、片方がそのまま直進、片方は戦闘部屋へとご案内って感じにするか……」
戦闘部屋で勝利すれば奥の扉が開き、正当の道へと合流する仕組みだ。
これを都合5戦分突破すれば、10層へと至る階段にたどり着けるようにしようと考えていた。
単純ではあるが、強制戦闘というのは、中々に消耗強いるためそれなりに有効なのは間違いない。
問題があるとすれば、こちらも損耗を強いられる可能性があることだろうか。
魔物を召喚するのにだってコストがかかるのだから、あまりに消耗が大きければ再召喚が間に合わなくなる可能性はある。
といっても、一日休憩すれば大部分の魔力は回復するので、短時間で繰り返し召喚を多用しなければ大丈夫とも言える。
「対策を取られると面倒だし。二股は時間経過で入れ替わる転移式にして、部屋には内部の魔物を補助する活性陣を敷いて、と……あとはどんな魔物を召喚して組ませていくかだな」
ダンジョン機能にある施設一覧から、有用そうな効果をもつものを幾つかピックし選んでいく。
活性陣はまだレベル1のみしか使えないが、効果数値は10。
つまり、効果範囲内の魔物に対し、素のステータスに対して10パーセントの増強補正をかけるってことになる。
一見地味に見えるが、活性系はスキルと重複する場合が多いため、重なるとそれこそ倍近いステータスに化ける事も少なくない。
実際リュウセイも、部屋毎に特色を設定し、シナジー的要素を組むつもりである。
「戦闘部屋も時間経過で入れ替わるようにして、順番での対策をとられにくくして、と」
9層になり、フロアに使えるコストは増えているとはいえ、ここまでの仕掛けでほぼ使い尽くしてしまう。
もっと大規模な組み合わせは、20層くらいまでいかないと無理なのだろう。
「とりあえず。不死部屋、水部屋、獣部屋、魔族部屋、蟲部屋で構成してみるか……」
ここまで決めれば後は要素ごとに召喚、配合できる魔物を選んでいくだけだ。
配合士としてのレベル、ダンジョンマスターとしてのレベルもあがったことで、ソート機能が増えたので比較的楽に一覧が見れる。
あれでもないこれでもないと、増えてきた召喚、配合の選択肢にワクワクしつつ候補を選んでいく。
それから30分。以下の構成で決定する。
不死部屋候補
リビングデット×2(ランク3)
(グール×グールorゾンビ×ゾンビ×冒険者の魂)
嘆き女(ランク3)
(レイス×レイス×魔法使いの魂)
レッサーヴァンパイア《指揮官》(ランク3)
(グール×サキュバス)
水部屋
レル・ニィ×2(ランク3)
(水精×水精×氷塊)
水乙女(ランク3)
(水精×水精)
ニルリティ《指揮官》(ランク4)
(邪水精×サキュバス)
獣部屋
武士コボルト×2(ランク3)
射掛けコボルト(ランク2)
(コボルト×ゴブリンアーチャー)
侍大将コボルト《指揮官》(ランク4)
(武士コボルト×武士コボルト×ベテラン冒険者の魂)
魔族部屋
リビングアーマー×2(ランク3)
(召喚)
サキュバス(ランク3)
(冒険者の死体×グール×魔法使いの魂)
デーモン《指揮官》(ランク4)
(下級デーモン×下級デーモン)
蟲部屋
マン・パラサイト×(ランク3)
(パラサイト×冒険者の死体)
触手(ランク2)
(召喚)
触手ロード《指揮官》(ランク4)
(触手×触手×ベテラン冒険者の魂)
「こんなところか」
一言呟き、満足そうに頷く。
どの部屋もある程度の属性を統一し、活性スキルをもつ者を組み込んでいる。
基本的に盾役、前衛火力、後衛火力or妨害役で構成している。
不死部屋であればグールの上位種であるリビングデットが盾役であり、嘆き女が妨害役、ヴァンパイアが前衛火力として機能するだろう。
水部屋はレル・ニティ、水精の亜種である言わば氷精が盾と妨害をこなし、水乙女が活性とバフをまき、ニルリティ、邪悪に堕ちた水乙女の亜種がアタッカーとなる。
獣部屋はタンクは居ない。前衛と後衛で別れ、同一種族による連携で畳み込む構成だが、侍大将コボルトの個人戦闘能力は侮れない。
魔族部屋は高いシナジーの組み合わせが強力であり、単純なバランスでは5部屋で一番高い。
中身無き鎧の亡霊たるリビングデッドが高い物理防御で相手を押しとどめ、弱点の魔法防御はサキュバスの対術結界が補う。
更にサキュバスは男性不活性のスキル、術式妨害、魅了などの優秀な妨害、異常状態スキルを持ち、夜族活性も低い数値ながら保持している。
デーモンは高い前衛戦闘力に加え、高い魔族活性でリビングデットとサキュバスの能力を底上げしてくれる。
それぞれの能力をしっかり確認し、最後に指揮官設定した魔物のステータスをもう一度視認しておく。
種族:レッサーヴァンパイア(吸血鬼種)
属性:魔・亜・死・夜
特攻:人・獣・亜
ランク:3
クラス:ファイター
称号:夜の捕食者
忠誠度:75
レベル:1
能力値:STR(C+)VIT(C+)INT(D)WIS(F)
DEX(F+)AGI(D)CHA(F)
成長性:STR(D)VIT(C)INT(E)WIS(E)
DEX(F)AGI(E)CHA(F)
耐性値:斬(7)打(7)火(2)水(5)風(5)雷(3)土(5)光(2)闇(A)無(5)特(5)
スキル:怪力(30)側面攻撃(20)発狂(10)再生(25)
スキル:死活性(12) 攻撃陣形(10)
補足 :吸血鬼に噛まれた者が確率的になる存在。
身体能力は非常に高いが、理性はほぼ無く、知能も極端に低下している。
主に吸血鬼達に使役される奴隷的存在。
一言 :「うぉおぉ……ぶぅぁあ……(理解出来ない)」
種族:ニルリティ(水精族)
属性:魔・水・夜
特攻:人・火・造
ランク:4
クラス:水魔法使い
称号:堕ちた清らかなる乙女
忠誠度:70
レベル:1
能力値:STR(D-)VIT(C)INT(C)WIS(B-)
DEX(D)AGI(D+)CHA(D)
成長性:STR(E)VIT(F)INT(C)WIS(C)
DEX(D)AGI(D)CHA(C)
耐性値:斬(6)打(A)火(8)水(G)風(8)雷(2)土(5)光(4)闇(9)無(5)特(6)
スキル:水魔法(25)流動体(10)呪いの一撃(20)
術式補助(15)水流陣(10)狂気の波動(15)
指揮官スキル:小隊活性(15)衰弱陣(8)
補足 :半透明の黒に染まった水乙女。
その身は既に精霊としての神聖性を失い、理性に乏しい。
非常に攻撃的であり、中位の水魔法操って襲ってくる。
注意すべきは受ければ数値分こちらのスキル一つのスキル値を一時的に削る呪いの一撃。
そして対策しなければ狂気状態になる狂気の波動だろう。
一言 :「……ワタシハニンゲンニウラギラレタ! ナラバ、アナタトトモニ……」
種族:侍大将コボルト
属性:亜・獣・魔
特攻:人・蟲
ランク:4
クラス:侍
称号:熟練の侍
忠誠度:80
レベル:1
能力値:STR(C+)VIT(D)INT(C)WIS(D)
DEX(B)AGI(C+)CHA(C)
成長性:STR(D)VIT(F)INT(F)WIS(E)
DEX(C)AGI(C)CHA(C)
耐性値:斬(5)打(5)火(4)水(5)風(4)雷(4)土(6)光(5)闇(7)無(5)特(5)
スキル:貫通攻撃(30)防御貫通(35)致命率増加(15)
致命必殺(20)連携(20)中隊指揮(12)
指揮官スキル:側面攻撃(15)獣活性(8)
補足 :コボルトの中でも多くの戦闘をくぐり抜けた古強者。
最早その戦闘能力はコボルトと決して侮れない。
熟練の冒険者に勝るとも劣らない刃の冴えと、数々の攻撃スキルは驚異である。
一言 :「一族の為、主の為、おぬしには儂の刀の錆になってもらおう」
種族:デーモン
属性:魔・夜・飛
特攻:人・亜・聖
ランク:4
クラス:悪魔
称号:徘徊する悪
忠誠度:60
レベル:1
能力値:STR(C+)VIT(C)INT(C-)WIS(D+)
DEX(D+)AGI(C-)CHA(C-)
成長性:STR(C)VIT(D)INT(D)WIS(D)
DEX(D)AGI(D)CHA(D)
耐性値:斬(7)打(7)火(5)水(6)風(5)雷(5)土(6)光(4)闇(B)無(7)特(6)
スキル:十字砲火(15)暗黒魔法(20)飛行(10)
暗黒の闘気(10)攻撃陣形(15)魔族活性(20)
指揮官スキル:闇術陣(15)障壁貫通(20)
補足 :魔界と呼ばれる世界に住まう住人。
その肉体は強靭であり、なまくらの剣では刃がたたない。
強固な爪を用いた肉弾戦は非常に強力。
一言 :「オロカナニンゲンヨ! ゼツボウノハテニシヌガイイ!!」
種族:触手ロード
属性:魔・造・獣
特攻:人・亜
ランク:4
クラス:触手
称号:精鋭たる触手
忠誠度:90
レベル:1
能力値:STR(D+)VIT(B)INT(F)WIS(F)
DEX(B)AGI(D)CHA(C)
成長性:STR(F)VIT(F)INT(F)WIS(F)
DEX(F)AGI(F)CHA(F)
耐性値:斬(4)打(4)火(3)水(5)風(3)雷(4)土(6)光(8)闇(A)無(A)特(A)
スキル:性欲(50)触手(50)テクニシャン(50)
術式妨害(30)防御削減(30)攻撃削減(30)
男性活性(20)女性特攻(5)超再生(40)
指揮官スキル:小隊弱体(10)蟲族活性(15)
補足 :触手の中の触手。精鋭触手。
ぬるついた表面はどこか赤味と黒を帯び、その先端はどうみてもアレ。
伸縮自在ながら弾力性に富み、僅かな隙間から器用に潜り込む。
生まれながらのテクニシャンであり、捕まればどんな女性だろうが触手様無しでは生きていけなくなる。
一言 :「ビビョル!! ビビョビョリーヌ! ビョビビビョリーヌ!!(元気よくのたうち回っている)」
流石はランク4なだけあり、どれも中級の魔物に相応しいステータスと言えた。
特に目を見張るのは触手ロードだろう。
リュウセイにやましい思考がないとは言わないが、その実かなり強力なアンチ女性スキル持ちなのだ。
特に女性特攻は、女性に対し、その数値分の倍値でダメージを与えるという、特攻と噛み合わせればまさに鬼神の如き威力となるだろう。
防御削減や攻撃削減も数値分のパーセント、直接ダメージを与えた相手を弱体させる優秀なスキルだ。
こいつの上位にはノーヴル触手、王侯触手と存在するようだが、実に恐ろしい。
確認を終えたリュウセイは、ふとそういえば新たに無機物同士での配合が機能解放されたことを思い出す。
いまは多くは用意できないため、ランク4以上の魔物になにか作ってやろうと早速試行錯誤をはじめるのであった……
あとがき
親愛なるテリーのワンダーランド好きの皆さん。
おかげさまで日間6~7位に食い込みました。
このままなんとか5位内に入り、多くの人に配合モノを見てもらうのだ!
みんな、オラに元気をわけてくれ!!
そうすれば、これから配合系の小説もどんどん……
次は冒険者視点か、三人称での外視点かな。
というか、ステータス記入するの激しくめんどい……
どうしてこんな細かくしたし。したし。




