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第一部 幕間 とあるパーティーの末路

「ふぅ……おそらく、次でラストだろう。最近できたばかりだろうに、中々手こずらせてくれるぜ」

「だから言ったのよ、せめて四人は集めましょうって!」


 オーギュスト子爵の一人娘がこの付近で行方不明となったらしく、その捜索依頼が冒険者ギルドにまで回ってきたのは先日だ。

 依頼の難度は人探しとしてはそれなりに破格のBランク。

 ランクによって最低報酬金額は決まってるし、今回は状況次第で追加報酬がでる。

 最低でも五十万ガルド。俺達のパーティーなら一月は遊んでくらせる金額だ。


「仕方ねーだろーがイリア。俺だってまさかこんなめんどくせぇことになるなんて、思ってなかったんだよ……」


 三人パーティー、昔からの腐れ縁の戦士である俺、回復魔法の使い手であり、無口な神官のダドリー、そして紅一点の魔法士のイリア。

 そのイリアがところどころ穴の空いたローブを掴んで、ヒステリックに怒鳴り散らす。

 まったくもってうるせぇやつだ、少しはダドリーを見習えってんだ。

 黙ってれば美人だってのに、女はどうしてこうすぐヒスを起こすんだか。


「このローブ、防護の魔法陣が裏打ちされてて、結構高かったのよ! これでダンジョン核が安かったらって考えると、ほんっと最悪だわ!」

「……最下級のダンジョン核でも、数千万ゴルドは下らない。問題ない」

「ダドリーの言うとおりだぜ? この付近にダンジョンなんて確認されてない。ならこのダンジョンは確実に初期。俺達って仮にもBランク冒険者だ、初級ダンジョン程度踏破できねーわけがないだろ」


 そうだ。これでも俺達はベテランと呼んで差し支えないランクのパーティーなんだ。

 個人個人じゃCランク程度だが、経験と連携によってパーティランクはB。

 このまま腕を磨いていけば、何時かはAランク昇格だって夢じゃねーんだ。

 だから、ちょっとスライムに装備を溶かされかけたり、沼地に足をとられたり、ゾンビの体液を浴びたってなんともねぇ。

 イリアから少し異臭がするのだってまったく問題ないんだ、ああ。


「よし。休憩は十分だろ? さっさと踏破して迷宮核をいただこう」


 5層ごとにあるボスエリア。その5層と4層の間にあるセーフティエリアで休憩をとった後、俺は明るくみんなに声をかける。

 あんまくらい空気で挑んでもいい結果でないってのは、いわば経験則による常識だ。

 それに、あまり長いことセーフティーエリアに留まると、地形変動が起きて、強制的に上層に放り出されちまうからな。

 2人が頷くのを確認し、正面に聳えるくろがねに輝く門を押し開く。


 ――――ギィイィイイイ……ガコン







「だから言ったじゃない!! このダンジョンはどこかおかしいって!!」


 イリアの金切り声が耳にうるせぇ。

 少しは黙ってろってんだ、こっちはそれどころじゃないんだからよ。


「ダドリー、聖魔法はまだいけるか?」

「まだ大丈夫だ。けど、そう連発は続かない。正直厳しい」


 無口だが、普段は余裕を崩さないダドリーの顔にうっすらと汗が浮かぶのを見て、いよいよ進退窮まったかと嘆息する。

 ボスエリアに入って、既に10分以上経過してるが、既にこちらは詰み手前まで追い詰められている。

 瞬間、先の見通せない暗闇の一角が蠢き、無数の影のような手が高速で迫り来る!

 

「チィッ! 少しは手加減しろってんだ!! イリア!」


 計三つの影手を、ダドリーに付与してもらった聖属性のロングソードで素早く切り刻む。

 何度も繰り返したからわかるが、こいつに直接触れられると、ごっそりと体力を持ってかれるんだ。

 おかげで初期に集中的に狙われたイリアの体力は、かなりやばい域にある。

 こうしてイリアを中心に前後で俺とダドリーが守ってるが、これじゃあジリ貧なのは目に見えている。

 暗闇の中、最初に松明を消し飛ばされたのはかなり影響がでかかった。

 

「フレアアロー!!」


 俺の声に息を合わせた火炎呪文、火の矢が素早く影手の元を辿るように飛んでいくが反応はない。

 火線で一瞬照らし出された部分には俺たちの敵、そう、この絶望的な状況を生み出したやつの姿は欠片も映らなかった。

 であった時の判断といい、少なくとも人間並みには知能があるってことだが、5層程度のボスにそんな知能を持ったやつがでるだなんてきいたことがない。

 そう愚痴っても事態は変わらねーんだから、仕方ない。このままじゃどう足掻いてもなぶり殺しだろう。

 腹をくくるしかねーな。

 

「ダドリー悪いがライティングの魔法を頼む!」

「承知ッ!」


 発動消費自体は低いとはいえ、継続して使えばかなり消耗する灯りの魔法をダドリーが素早く発動させる。

 照らし出される室内はかなり広く、四隅には怪しい魔法陣が敷かれている。

 そして俺から見て13時の方角に奴、バンシーは悠々と宙に浮いてやがった。

 瞬間、あざ笑うような表情を浮かべた、見た目だけなら絶世の美少女の手から10に迫る影の手がこちらに殺到する。


「ダドリーはそのままライティングの維持と、最悪の場合聖属性の結界だ! イリアは俺と連携して威力重視で火属性魔法を使え!!」


 返事を待たずに俺は不動の構えを取り、最初に到達した影の手に剣を振るう!

 袈裟懸け、擦り上げ、一度力強く剣を引き、一歩踏み込んで撫で斬る。

 三つの影を無効化し、横をすり抜けようとした一手をさせないと踏み込み斬り飛ばす。

 ただのロングソードじゃあこんな芸当はできないが、闇魔法に光魔法はまさに天敵だ。


「…………ッツ」


 そんな油断がいけなかった。俺の後ろを狙っていた影が一瞬でこちらに方向を変え、四方から素早くその魔手を伸ばしやがった。

 三本まではなんとか斬り払えたが、一手をモロに革の鎧の上から受けちまう。

 常時発動してる筈の防御形成(15)がまるで効果を発動せず、重い衝撃と脱力感が身体を苛んでいく。

 これで都合3回目の接触、このままじゃあ俺もイリアの二の舞だ。


「カイル下がって!!」


 イリアの声が耳に届いた瞬間、脱力する身体を無理やり引きずるようにしてダドリーの前まで引き戻す。

 同時、バンシーの居る場所を中心にドデカイ爆裂呪文が炸裂した。

 鼓膜を突き破るかのような爆音が響き、高温の火の粉が周囲に氾濫する。

 肌がひりつくような熱波が俺たちの顔を舐めるように通過し、冒険者用のマントがはためく。

 火魔法に高い適正を持つイリアの切り札が見事命中しやがった!

 たとえ上級の魔物だろうと、それなりのダメージを期待できる、まさに切り札。

 いくらバンシーとは言え、これなら――――


「カイルっ、油断するな! 結界陣起動ッ!!」


 ダドリーの切羽詰まった声と同時、床に描いておいただろう陣が起動。

 聖属性の強固な結界が半径2メートルに渡って外界と内部を遮断する。


『ぉん……怨…おん……ぉん…おん怨怨…ぉん…おぉおおぉおお』


 同時、下級の霊体であるレイスが結界にダメージを受けるのもお構いなしに張り付く。

 その数、実に5体。おいおい、どこから湧いてでやがった、こいつら!?


「そんな……さっきの直撃だった筈よ!? なんで無傷なのよ!!」


 今度はイリアかっ、一体次はなんだってんだよ!

 そう思って視線をたどった先を見た瞬間、俺は間違いなく死を予感した。

 なんでかって? そんなもん、怒りに双眼を滾らせたやつの顔を見たからに決まってんじゃねーか。

 つーか、あれくらって無傷って、どう考えてもオカシイだろ。


『許さない……この身体はあの人に貰ったのに、傷つけるなんて……絶望を与えて、高純度の恐怖をって思ったけど。許さない、あなた達はすぐ殺す――コロスコロスコロスコロスころころコロころころろろろロロ――――』


 耳に這いよるような声が、心胆を凍りつかせるような声音と声量で壊れたようにコロスと口々に喚き散らす。


「ダドリー! 仕方ないめちゃくちゃたけーが帰還玉使うぞ!!」


 一個100万は下らないこれは本当に最悪の状況に備えて、一個だけ買っといたとっておきだ。

 あらゆる階層から瞬時に近くの町まで帰還できる優れた魔道具。

 その分くっそ高いが、命あっての物種だ。それにこんな異常なダンジョン、放置しておくなんてやべぇ、ギルドに報告しなくちゃ……


『ニガサナイワ』


 おかしい。おかしい。オカシイ。

 

「カイル!? 帰還玉はまだなの!!」


 イリアの声が遠くから聞こえる。

 そうだ、帰還玉だ。使わないといけない。

 だが、なんど起動を試しても一向に帰還玉が発動しない。

 クソッどういう事だ!?


「理由はわかんねー! けど発動しやがらないんだッ!!」

「……バンシーめの仕業であろうな」


 ダドリーの苦虫を噛み潰したような渋面と声に、悔しいが俺も同意だった。

 最高難度でもなきゃそうお目にかかれない、転移封印。

 どういうわけか、こんな辺境のダンジョンでそれが起きたわけだ。

 今は結界でなんとか均衡を生み出してるが、このままじゃ……


『怨怨怨nぉん怨おんおん………ぉ――――』


 耳うるさいレイスの恨みの声がやんだ瞬間、世界が白に染まった。

 音が聞こえない。視界がちかちかと赤い。身体が動かない。

 なんだ。俺は一体何をされた?


『ふふふ……自決爆破5体で呆気なく壊れましたね。て、聞こえてないでしょうけど。愚かで愚かな冒険者さん?』


 こちらに近づくバンシーが何か口にだしてるが聞こえない。

 くっそ、このままじゃマズイってのに身体に力が入らねぇ。

 それにダドリーとイリアはどうなった?

 ふと、視界の端にぐちゃぐちゃになった臓物が転がってるのが見えた。

 衣服の切れ端が見えた。ボロ雑巾のようなイリアの姿が…………っぁ?

 

 俺の意識はそこで途絶えた。


 




 バンシーは呆気なく散った冒険者を冷めた目で見やる。

 今や物言わぬ屍だが、今頃は主であるリュウセイのもとへと、その魂は流れ込んでいるだろう。

 自分は頑張っただろうか? 足りないだろうか? 褒めてくれるだろうか?

 頭とかなでてくれれば嬉しいなとおもう。

 それにしてもと、哀れな冒険者の最後を思ってバンシーは笑う。

 帰還など許す筈がないのだ。


 ――――自身の指揮官スキルとはすなわち、下級霊体召喚と帰還阻止であるのだから。






後書き


誤字脱字多いかも。

配合もの、魔物娘ものを広めるぞー!

ヒロインと書いて素材と読む。

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