第一部 第二話
一週間とは、それなりに時間があるものだと最初、隆聖。
いや、リュウセイは思っていたのだが、いざ蓋を開けてみれば駆け抜けるかのように過ぎ去ってしまった。
ステータスに表示されたデジタル時計が狂っていなければ、後三十分程度で最初の世界へとダンジョンは繋がるだろう。
正直に言えば、大掛かりな準備は出来ていない。
時間が足りないのは勿論だが、ダンジョン形成に必要な“魔力”という力が圧倒的に足りなかった。
それでも仮眠が魔力回復に有効だと知ってからは、限界までダンジョン形成、魔物召喚を繰り返し、先日ようやくそれなりの形となった。
また、当初懸念していた飲食による餓死だが、どうも今の肉体はそれらを必要としないらしく、リュウセイを安堵させた。
現在のダンジョンは全三層。
本当なら五層は欲しいところだったのだが、最大魔力量の問題でどうしても不可能であった。
一層目は広大な“草原”。二層目は“森林”。三層目は“洞穴”となっている。
一番広いのが草原であり、次が洞穴、狭いのが森林だ。
これは理由があって、どうも深層になればなるほど、その層の広さ、配置物、魔物許容数が増えるらしい。
また、それらは最大コストという概念で層毎に設定されており、それを超えた配置はできないようだ。
草原が一層目なのに対して広いのは、余計な配置物が少ないのが理由である。
そして各層には二種の魔物を召喚、配置した。
草原には“グレイハウンド”と“スライム”。
森林には“ゴブリン”と“グレイハウンド”。
洞穴には“スライム”と“スケルトン”だ。
草原は正直、さほど重要ではない。
一層目は踏破が容易いと思わせれれば十分だった。
森林には多少知恵のあるゴブリンと、地の利を生かしてくれる灰色の大型犬、グレイハウンド。
また、ゴブリンとグレイハウンドは自然交配で増えてくれるのも利点だろう。
洞穴は非常に入り組んでいるため、天井からスライムの強襲、スピア装備のスケルトンによる強制的な一対一の戦闘。
また、この三層目からは罠を仕掛ける事が可能らしく、幾つか設置してある。
吹き矢の罠
補足:地面のスイッチを押すとどこからともなく、毒を塗った吹き矢が飛んでくる。
竹槍の落とし穴
補足:深さ二メートル程度の穴底に竹槍を設置。
コストの問題でこの二種のみだが、起動ごとに設置位置がランダム転移してくれる素敵仕様である。
訳も分からずダンジョン機能を使用しているが、考えれば実に不思議だろう。
なお、これら全てを踏破された場合、最後の砦となるのはダンジョンマスターだ。
ダンジョンの主が倒れればその迷宮は崩壊し、巨大な迷宮核と呼ばれる宝石が残る。
これを目的とした冒険者は多く、ダンジョンマスターが狙われる一因とも言えよう。
なんせ、迷宮核は使い方によっては人の夢の一つである不老や仮の不老不死さえなし得るのだから。
「後十分か……やばい、緊張してきた」
繋がる先が知的生命の大都市近くとかであった場合は、正直お手上げだ。
せめてどこか森林の中であるとか、都市から外れた場所であれば時間も稼げるし、ダンジョンを発展させれる。
こればかりは時の運によるところが大きいだろう。
なんせ配下の魔物はどれもレベル一であるリュウセイと比べても脆弱だ。
正直、初期に配置できる魔物がこれほど雑魚いとは思ってなかった。
種族:グレイハウンド
属性:獣・魔
特攻:なし
ランク:1
クラス:なし
称号:のらいぬ
忠誠度:75
レベル:1
能力値:STR(F+)VIT(F+)INT(F)WIS(F)
DEX(F+)AGI(E)CHA(F)
成長性:STR(F)VIT(F)INT(F)WIS(F)
DEX(F)AGI(E)CHA(F)
耐性値:斬(3)打(3)火(2)水(4)風(4)雷(4)土(5)光(2)闇(5)無(3)特(1)
スキル:地形対応(10)奇襲(10)
補足:犬型の魔物。類型種では最下位に位置する。
一言:「ワンワンオー!(気力が充実している)」
種族:スライム
属性:水・魔
特攻:器
ランク:1
クラス:なし
称号:粘菌生物
忠誠度:75
レベル:1
能力値:STR(F)VIT(E)INT(F)WIS(F)
DEX(F+)AGI(E)CHA(F)
成長性:STR(F)VIT(E)INT(F)WIS(F)
DEX(F)AGI(E)CHA(F)
耐性値:斬(2)打(7)火(4)水(A)風(5)雷(2)土(4)光(2)闇(5)無(2)特(3)
スキル:酸性(8)酸耐性(20)
補足:粘菌系の魔物。類型種では最下位に位置する。触手とかは出せない。
一言:「……にゅる(やる気は満ちている)」
種族:ゴブリン
属性:魔・亜
特攻:なし
ランク:1
クラス:剣士or弓士
称号:森の住人
忠誠度:80
レベル:1
能力値:STR(F+)VIT(F)INT(E)WIS(F)
DEX(F+)AGI(F)CHA(F+)
成長性:STR(E)VIT(F)INT(E)WIS(F)
DEX(E)AGI(F)CHA(F)
耐性値:斬(3)打(3)火(4)水(4)風(4)雷(4)土(6)光(3)闇(7)無(3)特(4)
スキル:繁殖(35)絶倫(25)拙い知能(8)
補足:一メートル少々の小人。緑色の肌が特徴。獣よりは知性がある。
多種交配が可能であり、よく人間の女性を襲う。
一言:「オソウ! コウケンスル! ハラマセル!!」
種族:スケルトン
属性:死・魔・造
特攻:人
ランク:1
クラス:槍兵or剣士
称号:名も無き骨
忠誠度:99
レベル:1
能力値:STR(E)VIT(F)INT(E)WIS(F)
DEX(F+)AGI(F)CHA(F)
成長性:STR(E)VIT(F)INT(F)WIS(F)
DEX(E)AGI(E)CHA(F)
耐性値:斬(8)打(3)火(5)水(5)風(8)雷(5)土(4)光(1)闇(8)無(5)特(9)
スキル:物理耐性(25)聖属性虚弱(85)
補足:人型の骨が魔力を浴び、徘徊するようになった魔物。
稀に生前の技能を持ちえる個体が存在する。
類型種では最下位だが、侮れない魔物である。
一言:「……カタカタ(顎が楽しげに揺れている)」
「……何度見てもこれは酷い」
仮にもダンジョンマスターであるリュウセイと比べるのは酷かもしれないが、それでもあんまりだった。
これでは例えレベルがあがろうと、まともに能力は上昇しないだろう。
見れば見るほど不安になるが、召喚できるのが今はこれくらいだからしょうがない。
配合士による、魔物同士の配合も、数すらそろえるのが難しい現段階では見送るしかなかった。
ダンジョンマスターの間と呼ばれる、最下層に設置した石造りの冷たい玉座で溜息を吐く。
時刻はとうとうダンジョンが繋がる一分前を指している。
今更どう足掻いたところでどうなる訳でもないが、こつこつと指は肘掛を突き、足は貧乏ゆすりをやめない。
心臓はバクバクと鳴って煩いし、この肉体になって感じた事のない喉の渇きさえ覚えるかのようだ。
――――そしてついにその瞬間はやってきた。
カチリ、と。何かがはめ込まれるような、不思議な感覚が身体を突き抜ける。
言葉にし難いその感覚は、不思議とダンジョンがどこかに繋がったのだと確信させた。
後に、次元間大迷宮と、あらゆる世界で呼ばれ恐れられるようになるダンジョン。
その最初の一歩が今確かに産声を上げた。




