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SAKKs!  作者: 釜揚げ製菓
プロローグ
1/18

天然芝のグラウンド~あいつとの最後の試合

「おい! ボールをよこせっ!」


 後半ロスタイム、攻め上がってきた、相手チームの怒涛の攻撃を守りきり、ボールを掴んだ味方キーパー宮寺に、俺はハーフウェイラインあたりから、ジェスチャーを交えて思い切り叫んだ。


「頼むぜ、鷹也!」


 宮寺は俺の声に気づき、ハンドスローで俺にめがけてボールを投げた。


「九番にプレスをかけろ!」


 相手チームが俺の背番号を呼びかけそう指示する。だが、遅い――!


 相手チームの選手が俺にチェックに来る前に、俺は落下してきたボールに向かって走り、相手ゴールに向かうようにして、ボールをトラップした。


 突っ込むように俺に向かってくる相手の六番を、俺はちょんと右にボールを蹴り、かわした。六番は勢いあまって体勢を崩した。


「いけ鷹也!」


 言われなくても行くに決まってんだろっ! ボールから顔を上げ、俺は前方を確認する。


 ディフェンダー二人にキーパー一人か……。攻撃主体のチーム、後半ロスタイム同点のままゆえに、カウンターを決まれば、守備が手薄であった。


 だが、油断はできない。攻撃に転じているのは俺一人、実質三対一だ。ドリブルで相手ディフェンスに近づくにつれ、俺はどうやってゴールを奪えるかのみを考えた。もう、時間は無いに等しい。


「タカヤ、こっち!」


 俺の背後から、味方の声がした。風藤の声だった。


 俺と同じポジション、フォワードであるにも関わらず、守備に回っていた風藤は、ここにきてやっと攻撃に戻ってきた。


 風藤は持ち前の俊足を駆使し、俺と相手ディフェンスの真ん中あたりに走りこんだ。


「風藤!」


 これで三対二だ。俺は前を向いたままの風藤に、ボールを出した。


「取りに行け!」


 相手キーパーがディフェンスの一人にそう指示する。ディフェンスの二番は、風藤よりも先にボールを取ろうと走りこむ。


「ナイスパス!」


 余裕たっぷりに、俺に親指を立てる仕草を取る風藤。その間にも相手の二番はボールへと向かう。圧倒的体格の違いからこのままでは、風藤は吹っ飛ばされる……。頭の中に相手にボールを奪われるというイメージを持った俺は、すぐさまフォローに向かおうと、ボールに向かってダッシュした。


 だがそのイメージは、風藤自身によって打ち消された。


 向かってくる相手の二番に対して、風藤は右側へと体の重心を傾けた。二番はそれに釣られるように、自分も体を右に傾けた。


 すると、ボールは右に傾いたことによってできたスペースに、そのまま転がっていき、風藤と相手二番の横を通り抜け、そのまま前に転がっていった。


 風藤はそれを見越し、すぐさま体勢を立て戻し、同じように二番を抜いて、ボールをキープした。風藤は、ボールに触れることなく、相手を抜いたということだった。


「――っそ!」


 二番もすぐに風藤を追おうと、横からチャージングにいこうとした。俺はその間に入り込み、風藤をチャージから守るかたちをとった。


「……ぐっ!」


 岩にぶつけられたような感覚が、俺の体に襲ってくる。とても、俺と同じ歳、小学生の力だとは思えなかった。


 流石県内屈指のディフェンスって言われているだけある…………けどな! 


 よろめきながらも、俺はギリギリのところで足を踏ん張り、チャージに耐え、逆に俺は二番に向かって肩を使って押し返した。


 こっちも……負けるわけにはいかねえんだよ!


 もつれあうようにして、俺と二番は両者地面に倒れた。ファールはない。俺はペナルティエリア内に入りこんだ風藤の姿を追う。


 ペナルティエリア内に入り込み、一対二になった。残るディフェンダーは三番のみ。キーパーは動こうとしない。

 

 風藤、前方に三番がいるにも関わらず、シュート体勢に入った。風藤のいる位置は中央、三番とキーパーはその前にいる。


 三番は、風藤のシュートコースを潰そうと、風藤の右足側に足を伸ばす。まさに今、ボールが足に触れるか触れないかといった時、風藤は右足を空振った。


 これには一番もタイミングがずれ体勢を崩した。だが、それは風藤も同じ。このままでは風藤「は」、シュートには入れない――。


 立ち上がり、俺は本能的に、風藤の後ろに向かって走りこんだ。


「タカヤ!」


 俺を呼ぶ声が答えだった。風藤は空振った右足を戻す勢いを使って、ヒールで俺にバックパスを送った。


 俺が走ってくるのをあらかじめ分かっているかのような、そんなパスだった。――いや、わかっていたんだ……。


 風藤の出したボールは、走り詰めてくる俺の歩幅に合わせたかのような速度で、俺の足元に転がる。俺は利き足の左足を思い切り振り上げ、風藤の出した最高の「贈り物」を、さらに最高なものにしようと、力強く蹴り込んだ。


 ――気持ちの良い感触が、俺の左足から体全体へと伝ってくる。シュート練習でもあまり感じたことのない、蹴った瞬間に、「決まった」と感じる感触だった。


「――ナイスシュート! タカヤ!」


 ボールの行方が分かるよりも前に、風藤は俺に満面の笑みを見せながら、俺に向かってきた。


「――お、おい!」


 飛び込むようにしながら、俺にハグする風藤。それと同時に、俺はボールがゴールネットを揺らすのを見た。



「――よっしゃあああぁ!」



 風藤にハグされたまま、俺は右手を突き上げ、腹の底から叫んだ。


 ゴールを決めたというホイッスルが鳴る。その後すぐに、審判はこの試合の終わりを告げる笛を、高らかに鳴らした。



 ……同時に、その笛は俺が風藤と一緒に試合をした、最後を告げる笛の音でもあった――。



 風藤朱鳥(かざふじあすか)という、俺のチームメイトであり、同時に最高の親友であった「女の子」は、次の試合が始まる前日に、誰に知らせるわけもなく、突然、転校してしまった――。

「蹴球に集い」に続いて再びのサッカー小説です。一応、世界観は同じという設定です。似たような話の展開ですが、徐々に違ったものにしていきたいと思います。

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