6 教育
紀元前592年(皇紀8年)
5年経ち、ようやく製鉄技術も完成した。
まだふいごを使う少量しか生産出来ないやり方だが、鉄を作れるようになったのだから大きな一歩だ。
早速鉄で武器を作ってみた。
先ずは剣。
これは俺と同じような両刃の単純な剣。
そして槍だ。
槍もまだ単純な矛型の刃だ。
これだけでも攻撃力は増した。
そして何より大事なのは矢じりを鉄にした事だ。
基本的に俺の軍は弓矢を主体に戦うから矢が最も大切な武器と言える。
武器の他にも、現在は防具を作らせている。
今までは皮の鎧を着させていたが、やはり皮の防御力はたかが知れる。
だから今は鉄の兜や鎧を開発中だ。
鎧と言っても全身を守れる物では無く、銅と腕、腰、スネを守れるだけの単純な奴。
古代ローマ兵みたいな感じだ。
出来るなら全身を守れる鎧が良いが、流石にまだ技術的に難しいので出来ない。
まぁそれでもこの時代の日本に鎧を着た兵士はいないからこれで良い。
それと盾だ。
鎧が頼りないから古代ローマのように盾を持たせる。
これで敵の矢や剣からある程度は守れるだろう。
しかしまだ人口が少ないので他の地域に進出はしない。
にしても邪馬台国は人口が1万人を越えていたらしいが、どうやってそんな数を集めたんだ?
あんな昔に(この時代よりは新しいが)人を集めるのは至難の技だ。
ある程度文明が発達し、情報化社会になれば人は集まりやすいが、古代の日本にそんな便利なモノは無い。
やっぱり戦争で国を大きくしたのか?
俺みたいな増やし方だと最低でも数百年は生きないと無理だし。
鉄は武器だけでは無く、万能に役に立つ。
調理に使う包丁や建築材を補強するなど、用途は様々。
だからじゃんじゃん鉄を作り、更なる製鉄技術を育成させる。
須恵器も完成したが、ただ素焼きにしただけでは水が染み込んだりして脆い。
だから原始的だがワラや木灰等を使った上薬を開発させた。
これを使えばどうしても色ムラは起きてしまうが、耐久性と使い心地がかなり上がる。
それと箸を作った。
縄文時代に箸なんかあるわけ無く、基本手づかみで食べる。
しかしこれでは不衛生的だし、見た目も良くないから木を削り、樹脂等を塗って耐久性を上げた箸を支給した。
そして村人全員に箸の使い方を教え、「これからは箸を使って食べるように」と命じた。
更に「箸は使ったら原則として洗い、地面に置くな」とも命じた。
流石にこれは面倒くさがるかな? と思ったが、村人は反発せず、ただ素直に従った。
もしかしてこれは前にもあったように村人が信者になったのか?
その時も最初は反発したが、ある程度時間が経つと逆らう事が無くなっていった。
そしていつの間にか俺を祀る宗教、北郷教が完成していた。
……まぁ、楽で良いんだけど、あれには俺も引いたからな。
この時代だったら集団を纏めるのには宗教が一番楽だから良いか。
宗教は腐敗や発展の阻害さえしなきゃ悪くは無いしな。
そのうち正式に北郷教を立ち上げ、教典でも書くか。
プロテスタントに似せた内容にすれば発展の阻害はされないし。
大人達は俺が出した開発命令のせいで忙しく、教育は無理だが、子供なら暇がある。
5~15歳までの子供を対象として小学校を建設。
読み書きや簡単な計算、そして洗脳教育だ。
子供の柔軟な脳みそなら今まで見たことも無い文字でも理解出来る筈。
将来、コイツらに俺を補佐して貰うんだ。
手を抜けない。
幸い、あまりにも小さいガキは無理だが、10歳を超えた奴等は俺がどんな存在か理解出来てるので従ってくれる。
しかし5歳ぐらいのガキには神もクソも無いから中々言うことをきかない。
小学校低学年の教師達の気分が分かる。
そりゃ体罰もしたくなるわ。
まぁ俺はガンガンするけど。
子供が親に泣きついたとしても親は「お前が悪い」と言うからな。
親からしてみれば俺に教育してもらっているという考えだし、神である俺に文句を言うなど不可能だ。
と言っても理不尽に体罰をすることは無い。
騒いだりしたら立たせたり、ふざけた態度を取れば軽く叩くぐらいだ。
反抗心を持たれたら教育する意味が無いからな。
態度を改めればちゃんと褒めるし、それに洗脳教育が効いてくれば俺に絶対の忠誠を誓う。
今は面倒だが、将来に向けての先行投資だ。
ロウソクを開発した。
今までは松明で灯りを照らしていたが、松明では火が強すぎるし長持ちしない。
蜜や樹脂を使った原始的なロウソクを作り、村にも普及させた。
油が手に入りにくいからロウソクの方が手軽だ。
江戸時代じゃ逆だったがな。