52 ローマ帝国の復興
西暦160年(皇紀760年)
ユダヤ教の神殿とキリスト教の聖墳墓教会が完成した。
ユダヤ教の神殿は唯一残っていた壁をそのまま使い、巨大な神殿を再建した。
巨大でありながら壁や天井の装飾の細かさ、きらびやかさ。
揃えられた限りの資料を基に見事に復元出来た。
完成した後にユダヤ人達に見せたら歓喜のあまりに涙を流した程だ。
キリスト教の聖墳墓教会は現代の物をそのまま作った。
最初に提示した設計図や完成予想図を見てキリスト教徒達も満足していた。
キリストの埋葬地はやはり特定は出来なかったが、現代同様一番確立が高い土地に建設した。
キリスト教徒が少ないが持っていたキリスト縁の品を展示し、出来る限り権威を高める。
まだユダヤ教に比べれば出来て日が浅く弱小だが、何とかユダヤ教に対抗してそれなりの教会を築いた。
巡礼のルートや宿泊施設なども完成した。
始めはルートやエルサレムを壁で囲んで逃げられないようにしようと思ったが、それでは巡礼者に圧迫感を与えるし、ルートやエルサレムの近くに街を建設する予定も無いのでブルキナファソ同様壁ではなく、二重の鉄条網や金網、地雷を埋め、監視塔や偽装した監視カメラを設置する事にした。
これならまだ精神的にマシだ。
巡礼のルートやエルサレムは景観の保護という名目でほとんど開発してない。
万が一外国人が街にでも逃げ込まれたら厄介な事になる。
だから周囲は何も無く、例えルートやエルサレムから逃げたとしても餓死するだろう。
まぁその前に監視塔や監視カメラで見つかって射殺されるのがオチだ。
それとエルサレムは制限区域に指定され、国内と国外の巡礼者が入れる日は別になっている。
これは国内のキリスト教徒やユダヤ人が交流して日本の技術を伝えるのを防ぐためだ。
外国のユダヤ人やキリスト教徒が巡礼に来るには、マルタ島に集まりジャンク船に乗ってイスラエルの港に入る。
その際乗客は沿岸部や軍艦に接近したら窓の無い船倉に入れられ、港に着くまで外を見せない。
原則イスラエル沿岸の巡礼者専用の港以外には接近せず、軍艦は事前に航行ルートから外すが、万が一があるので見られるのを防ぐ。
巡礼者専用の港はマルタ島と同じ規模にされており、周囲に近代的な街は無い。
巡礼者のためのルートのみがあり、道はレンガで舗装され、巡礼者用の馬車が常駐している。
巡礼者なら無料でエルサレムまで乗れる。
ていうか馬車以外でエルサレムに行くのは許さない。
徒歩で行かれると監視が出来ないからな。
北朝鮮の外国人に対する処置に似たようなもんだ。
常に二人以上の監視が付き、何かしないように見張る。
休憩地点以外では馬車は止めず、ひたすらエルサレムに向かって走る。
食事やトイレは何ヵ所かある休憩所でしてもらい、またひたすら走る。
観光バスみたいなもんだ。
そしてエルサレムに着いたら自由時間だ。
と言っても馬車が発車する時間は限られているから長く居られても2、3時間が限度。
そしてまた馬車で港に帰り、船でマルタ島に運ぶ。
これが基本コースだ。
観光ツアーと違って幾ら金を出してもオプションや別のコースは無いがな。
巡礼コースは月1回、参加料や船賃、馬車代、食費、その他諸々込みで1人につきマルタ島銀貨1枚。
これが唯一外国人がマルタ島以外の日本領内に入る方法だ。
マルタ島銀貨1枚ということだから大体1人10万円だ。
かなり高いが、維持費が結構かかるし、これは信者達が大勢で来るのを防ぐためだ。
幾ら制限していてもあまりに大勢で来られたら管理が出来ない。
だから料金を高くし、富裕層や庶民はかなり頑張らないと手が出せないようにした。
それでもユダヤ人やキリスト教徒にとっては自分達の聖地を作ってくれた事に深く感謝し、両方の宗教は特例を認めた第27代日本帝国皇帝北郷一宏を聖人に認定した。
どちらの信者でも無いのに聖人認定ってスゲェな。
まぁこの時代のキリスト教やユダヤ教にとっては正に聖人にふさわしい事をしてくれたんだから当然か。
ローマ帝国はまたトライアヌスの時代に戻った。史実より早いが、敗戦の責任を取ってアントニヌスは退位、アウレリウスが皇帝に即位した。
マルクス・アウレリウス・アントニヌスは5賢帝最後の皇帝で、後世では鉄人皇帝と称される程だ。
アウレリウスは日本との戦争で弱体化したローマの栄光を取り戻すため、領土拡大のために、ダキアやゲルマニアへの遠征を始めた。
領土の半分を失い、激減した国力を取り戻すためにローマ帝国は再び侵略主義に戻ったのだった。
更にアウレリウスはローマ軍を強化するためにマルタ島にて日本製の武器や物資購入を図るが、あまりの高価さに大使館へ値段交渉に行った。
アウレリウスは隣国としてのよしみや、ローマ帝国の現状を訴るなど、必死に情に訴えかけた。
その結果、知らない国が隣国になるよりは良いとしてマルタ島大使は便宜を図る事を約束。
後日、本国からの許可を取り付けたとしてローマ軍向けに特別に武器や防具、物資を格安で販売する契約を結んだ。
ローマ軍に日本製の良質な剣や槍、ハルバード、長弓、短弓、鎧、盾、馬、馬具など様々な物が入った。
しかし大幅に値下げしたとは言え、やはり高価な事には変わりはないので全体には行き渡らず、親衛隊や精鋭部隊にのみで大多数の一般兵には行かなかった。
それでもローマ軍の戦力は上がり、各戦線でも優位に立つ事が増えた。
これで何とか保つだろう。
平和維持から侵略主義に変わったから軍との対立も無くなる筈。
旧ローマ領も安定してきたからスエズ運河建設を始める。
運河を築くとヨーロッパ勢の進出を助ける事になりそうだが、別に運河の通行を許さなければ良いし、領海内に侵入させなければ良いので気にする必要は無くなった。
ローマ帝国には領海の概念を教えたから明確な線引きは出来ないが、大体は理解しただろう。
その証拠に前までは度々あった領海侵犯も大分減った。
領海侵犯をする度に拿捕して船員を死刑にしたのが効いたらしい。
おかげでローマ帝国の船はマルタ島以外には近付かない。
はっきり言って必要無いが、更なる兵器開発として純粋水爆が完成した。
純粋水爆は従来の原爆や水爆と違い、高濃度のウランやプルトニウムを必要としないので放射性落下物の少ない「クリーンな水爆」とも言われている。
まだ現代では実用化には至っていないが、戦国時代の後半では実用化に成功した。
しかしあまりの威力の高さに最後まで使う事も発表することすらしなかった。
純粋水爆の他にもレールガンも完成。
今はまだ駆逐艦に積む程に大きいが、これでもかなり小型化した。
始めは戦艦に積まなきゃいけない程に大きかった。
何れは更に小型化して携行兵器として使えるようになるだろう。
メタルストームシステムを開発した。
メタルストームは1分間に数100万発以上の銃弾を発射することが可能であり、完全な電子制御で単発から連射まで自由に制御することが出来る。
また、弾丸を装填するための機械的システムがないので弾詰まり(ジャム)を起こすこともないという画期的な銃だ。
多数の弾丸を一つの銃身にぎっしりと並べて装填し、1本の銃身上にとびとびに配置された発火装置により弾丸が目も眩む速さで次から次へと連射される。
弾丸が発射され、その反動で銃身が動く前に、通常より多くの弾丸を発射できる。
後ろの弾丸が前の弾丸を押し出すような形になり、弾丸の速度が増加する。というとんでもない兵器だ。
このメタルストーム化した多連装型の機関銃を国境警備に利用すれば国境警備は万全になる。
まぁ完全にオーバーキルになるのは間違い無いがな。
もし下手に国境に近付けば一気にミンチにされること間違い無し。
ミサイルどころかロケット弾まで撃ち落とす事さえ出来るんだ。
人間に使う兵器じゃねぇ。
そのメタルストーム化した機関銃等はコンピュータで自動制御し、24時間密入国が無いか警備する。
と言っても流石に関知した全ての物を自動で撃つ訳ではない。
機械が侵入者を探知し、照準を定めるまでは自動で行うが、発射するかは人間が判断する。
搭載されたカメラからの映像を確認し、敵なら撃ち、味方は警告する。
やっぱり機械だけに任すのは不安だから最後は人間が必要だ。
機械は応用がきかないからな。
兵士は主に警備室に詰め、監視カメラやメタルストームが送ってくる映像をチェックする。
そしてカメラが侵入者を探知したらメタルストームが侵入者に照準を定め、警備システムに警告を出す。
その警告を聞いた兵士は画面を確認し、敵なら発射命令を出す。
するとシステムは命令通り発射し、侵入者を射殺する。
そしてバラバラになった死体を兵士が処理し、機関銃の弾薬の補充やメンテナンスする。
こんなシステムがあれば誰も国境に近付かなくなるだろう。
ウラル山脈やカザフスタン等に設置すれば守りは万全と言える。
かなり長大な国境線だからいちいち人間を配備するより機械の方が楽で良い。
人間なら集中力が途切れるけど、機械に集中力もクソも無いからな。
しかし人間による監視を完全に無くす訳ではない。
やっぱり機械は柔軟性が無いし、故障する可能性がある。
だから従来通り監視塔を建てたりして警備する。
機械のメンテナンスも必要だしな。
このメタルストームを歩兵用の兵器や車載兵器に使えば戦力はかなり上がる。
威力に比例するように弾切れも物凄いだろうが、利用価値はかなり高い。
従来の車載兵器と違って軽量でスペースを取らないので普通のトラックにさえ搭載出来る。
そうすりゃ立派な戦闘車両になる。




