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日本帝国記  作者: 浦波
50/55

49 日ロ講和

 開戦から一月。


日本軍は現代で言うヨルダン、イスラエル、レバノン、シリア、トルコを占領した。

他にもキプロス、マルタなど島も占領。

これで当初の予定通り欲しかった場所を手に入れた。




 ヨーロッパはいらないからこれで良い。

大体ヨーロッパなんか手に入れても逆にマイナスが多すぎる。

アフリカや中東みたいに膨大な資源がある訳じゃないし、肥沃な大地でもない。

あまりにも民族の数が多すぎるから管理がかなり面倒。

領有化した所でお荷物にしかならないからな。

だったら日本の団結力を維持するための敵役になってもらう。

人種のるつぼであるアメリカが纏まってるのも共通の敵がいるからだ。

敵がいない国を纏めるのは至難の技だ。

今はまだ日本と差がありすぎるから脅威にならないが何れは追いついて日本に攻めてくる筈だ。

そうなれば日本人共通の敵として使えるようになる。




 早速講和の準備をしよう。

このままローマ帝国に進軍する意味は無いし、ローマ帝国の力をこれ以上削ぐとまた面倒が起きるかも知れないからな。

かなり軍事力は落ちたが、まだ何とかなるレベルだ。

むしろもう東方やアフリカの心配をする必要は無いから丁度良いだろう。

これでようやく分相応の領土になった。

ローマ帝国の国力を考えればこれぐらいが丁度良い。




ローマ帝国サイド


 最前線であるビザンチウム(現代で言うイスタンブール)にある簡易式の対日本戦線司令部内の雰囲気はこれ以上は無い程に重い。

日本との戦争が始まり約30日。

既にローマ帝国領土は半分を失い、士気は最悪。

連戦連敗で1度も勝ててない。

戦線は毎日下がり、遂にはボスポラス海峡を越えてこのビザンチウムにまで来た。

しかしここに来て日本軍の進軍は停止。

あれほど苛烈だった攻撃は止み、日本軍は進軍から占領した土地の統治を始めた。

やはり先の書状に書いてあった地域以外には興味は無いらしい。

「首都ローマを蹂躙されるのでは?」という不安はとりあえず無くなったから安堵した。

しかしこのまま戦争が続けば気が変わって更に進軍を続けるかも知れない。


だったらここで終戦を迎えたいが、それは勝ってる側が決めること。

負けているローマから言って良い事では無い。

唯一敗者が言っても良いのは降伏宣言だけだ。

降伏するば戦争は終わるだろうが、それではローマ帝国は滅ぶ可能性が高い。

敗者は勝者に逆らってはいけない。

勝者が欲する物があれば差し出すしかない。

それが例え国であっても。


今、ローマ帝国は2つに割れている。

このまま戦争を続ける派と、さっさと降伏して日本の慈悲にすがる派だ。

続ける派は「伝統あるローマがただ敗けを認めるなんて耐えられん、まだ戦力があるんだから徹底交戦すべき」と言い、降伏派は「これ以上の戦争は無意味。

どうせ勝てないのだからさっさと降伏して日本と交渉すべき」と言う。

意見は割れているが、どちらもローマを思っての事だ。

ちなみにアントニヌスは中立。

どちらでも無い。

心境的には徹底交戦を選びたいが、実際は降伏が濃厚だろう。

これまでの戦闘で日本軍の強さは嫌と言う程身に染みた。

例えローマ軍全軍を当てても勝てないだろう。

だったら屈辱にまみれても降伏し、戦後の事を勝者と話し合った方がまだ生産的だ。


しかしそう簡単には事は進まない。

日本軍の強さを今ひとつ知らないローマ市民は降伏を許さないだろうし、元老院や軍にも徹底交戦派が多くいる。

これがヨーロッパにまで攻められているなら流石のローマ市民や元老院達も降伏やむ無しと認めるだろうが、いかんせん戦場がアジアやアフリカ方面だけ。

まだ戦場が遠く、実感が沸きにくいのだ。

だからと言って日本軍がヨーロッパにまで攻め込んで来るのを待つ訳にはいかない。

ならば皇帝の権力を使って無理矢理にでも降伏するしかない。




 アントニヌスが降伏の決意を固めようとしている時に、なんと敵国である日本帝国から特使が来た。

日本帝国皇帝からの親書を携えての来訪に、ローマ帝国側は降伏勧告をしに来たと確信した。

徹底交戦派は「追い返せ」と言うが、アントニヌスは「特使に会う」と宣言。

どうせ間もなくこちらから降伏しに行っていたのだ。

だったら向こうから来てくれて手間が省けた。と半ば自棄になりそうになったが、皇帝としての威厳を失う訳にはいかないのでちゃんと準備し、日本特使と面会した。


アントニヌスは玉座に座り、特使を見下ろす。

「して、日本帝国の特使が何用か?」

分かっているが一応聞く。

「日本帝国皇帝、北郷様よりの親書をお渡しに参りました」

特使はカバンから親書を出し、警護の兵に渡す。

兵は罠が無いか確認した後にアントニヌスに渡した。

受け取ったアントニヌスは親書を読み始める。

すると間もなく目を見開き、驚愕の表情をした。

「こ……講和の要求…だと?」

信じられない物を見るようにアントニヌスは特使を見る。

「はい、皇帝陛下は最早これ以上の戦争を望んでおりません。

したがって我が国は貴国との講和を望みます」

その言葉に周りにいた兵や重臣達も驚愕した。

何せ圧倒的強者が無理矢理蹂躙せず、話し合いで解決しようなんて言ってきたのだ。

降伏させれば話し合いなどせずに勝手に決められるのに、何故わざわざ講和なんて?


「つきましては講和条件についてですが」

特使がカバンから別の紙を取り出した。

それを見てアントニヌスは気を引き締めた。

降伏ではなく講和で良いと思ってしまい、喜びそうになったが、これから一番重要な講和条件の話し合いが始まるのだ。

もしかしたら講和とは名ばかりの降伏要求かも知れないのだ。

周囲の人間もアントニヌスと同じ事を思い、気を引き締める。

「1、我が国が現在占領している全地域の割譲」

特使が紙を読みながら言う。

それぐらいなら想定済みだから何とも無い。

周囲の人間も何ら驚かない。

「2、我が国と交易を結び、貿易をすること。

その際日本帝国を最恵国待遇とし、ローマ帝国の関税自主権は認めない。

交易地はマルタ島を使用する」

何故交易を講和条件にするのか分からなかったが、その前に知らない単語があったのでアントニヌスは尋ねた。

「最恵国待遇と関税自主権とは何なのだ?」

「最恵国待遇とは他国を、つまりこの場合は我が国を自国と同じように扱い、他国だからと差別や偏見などで低い待遇にしないという事です。

関税自主権はその名の通り関税を自国で決める権利です。

今回の要求ではその自国で、つまり貴国が決める事を許さず、税率を我が国が決める事になります」

「…つまり貴国から入ってくる品の関税の税率は貴国が決めるという事か?」

「そのとおりです」

特使は顔色を全く変えずに言った。

その顔をアントニヌスは睨み付けるように見る。

関税を勝手に決められるというのは他国に自国の市場を独占される恐れがある。

何故なら関税を全くかけないならその品は安く売れ、安いなら市民達はそっちを買うようになる。

そうしていけば国内の産業が成り立たなくなり、他国に牛耳られる事になる。

成る程、確かにかなりキツイ要求だが、受け入れるしかない。

我らは弱者。

それにこれならまだ我慢出来る程度だ。

属国に入れとはまだ言われてないからな。


「3、ローマ人のみならず、ヨーロッパ人の日本帝国への入国を禁ず。

唯一入国出来るのは交易地のマルタ島のみとする。

マルタ島以外の日本帝国領へ不法入国した際には日本帝国の法に基づいて裁く」

「? 我が国だけならまだしも、我が国以外のヨーロッパ人も禁ずるのか?」

「はい、そのとおりです」

「しかし我が国以外の者達が従うかは分からんぞ?」

知らない国の人間が勝手に日本領に入国したら自国が非難されるのでは? と特使を見る。

「ヨーロッパ中に広めて下されば結構です。

それでも不法入国する者については貴国の罪は問いません」

そう言われてとりあえずホッとするが、何故入国を禁じるのか分からない。

「何故マルタ島以外にヨーロッパ人が入国してはいけないのだ?」

「皇帝陛下が仰るには伝染病を防ぐためと、我が国の技術を盗まれないようにするためだ。だそうです」

それを聞いて少し納得した。

確かに他国から持ち込まれた伝染病は脅威になるし、自国の技術を盗まれたくないのも分かる。

しかし入国を禁止にまでするのは異常だ。

今までの戦闘から日本はローマより遥かに進んだ技術を有しているのが分かる。

その技術を手に入れたいアントニヌスは少し粘ってみる。

「マルタ島以外の入国は絶対に禁止なのか?」

「原則として禁止です。

皇帝陛下が直々に招かなければ。

それ以外でしたら外交についてもマルタ島にて行います」

頑なな態度に妥協は無理かと悟る。

全て禁止なら何かしら言えるが、例外も設けている。

これを覆すには戦争に勝つ必要があるが、それは不可能なので黙る。


「4、日本帝国のローマ帝国内での領事裁判権を認める」

「領事裁判権?」

聞いたことの無い単語にアントニヌスは聞き返す。

「領事裁判権とはつまり、ローマ帝国内で日本帝国の国民が罪を犯した場合、ローマ帝国の法では裁かず、日本帝国の法で裁くという事です」

「…貴国の民が我が国で罪を犯してもローマの法では裁けないという事か?」

「はい、そのとおりです」

これには流石にアントニヌスも怒りを覚えた。

これでは日本人がローマで罪を犯しても何ら罪に問われなくなってしまう。

反論しようとしたがその前に特使が口を開く。

「しかしこれは逆に貴国の得になるかと」

「……何故だ?」

「我が国は国の品位をとても気にする性質があり、例えば帝国内で窃盗をしても短い懲役で済みますが、外国で窃盗をすれば国の品位を貶めたとして原則死刑です。

これは窃盗だけではなく、どんな犯罪であろうと死刑になります。

つまりこの領事裁判権は他国で軽罰に終わってしまう可能性を防ぐためです。

それにヨーロッパ人を入国させないように、日本人も原則としてヨーロッパへの出国を禁じてますのでこの条件は空文も同然です」

それを聞いてアントニヌスは怒りを静める。

入国を許さないなら出国だって許す筈は無いからな。

それにしても随分と恐ろしい国なのだな。

国の品位を守るためとは言え、窃盗などでも死刑とは。

日本帝国とはとてもプライドが高い国なのだな。とアントニヌスは思った。


「5、この講和を調印直後に不可侵条約を締結すること」

これには別に異論は無い。

こっちからわざわざ攻める気は無いし、日本からの侵攻も防げるのだからむしろこちらから申し出るつもりだった。




「以上の5つです。

我々にとって良い返事を期待しております」

そう言って講和条件が書かれた紙を置いて特使は帰っていった。

明日また来るので返答をそれまでに出して欲しいと言われた。

その後司令部では講和についてどうするか話し合った。

関税自主権や領事裁判権について反対意見があったが、私はこれだけで済むのならむしろ喜ばしい事だと思った。

戦況はあちらが圧倒的有利に立ち、そのまま攻め込めばローマ帝国を滅ぼす事も簡単な筈。

しかし日本はヨーロッパには攻め入らず、講話を持ちかけて来た。

内容は屈辱的だったが、今の状態を考えればかなりの好条件だ。

何せ領土を半分失うが、独立を保っていられるし、賠償金を支払わなくて良い。

今回の戦争でローマ帝国はかなり疲弊したので、莫大な賠償金を要求されていたら国が崩壊していただろう。

しかし日本は一切賠償金は要求しなかった。

何故だ?

確かに日本が圧倒していたが、少なからず消耗している筈。

だったらその消耗分を敗戦国に要求するのは当たり前だ。



う~~む……日本の狙いがよく分からんが、こちらとしては降伏ではなく、講話という事なら面目も立つ。

これならローマ市民や元老院も納得してくれる筈だ。

…まぁ納得しなかったらその時はローマが滅びるだけだ。

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