5 製鉄
紀元前597年(皇紀3年)
この世界に来て3年。
ようやく水田や塩田が安定的に運用出来てきた。
初めは水路を引いたり、田んぼを作るのに四苦八苦していたが、俺のコピーと村人の懸命な努力の結果、完成。
1年目はあまり芳しい成果をあげられなかったが、段々コツを掴んで来て、3年目にして安定的な収穫が期待出来るようになった。
塩田の方も長い雨にやられる等して悲惨な目にもあったが、ようやく安定的に塩を生産出来るようになった。
今までの世界ならある程度文明や技術があったからあまり苦労しなかったが、この世界では俺以外は無教養な奴等ばかりでみんな経験でしか分からないから教えるのに苦労した。
早いところ官僚や役人、技術者を育成しないと面倒だ。
でもまだ村人は字さえ分からない。
流石に色々作業させ、更に字を教えるというのは不可能だった。
字を教えるのはもう少し安定してからだ。
じゃないと余裕が無いから反発する。
肉体労働の後に頭脳労働なんてさせられたらやる気を無くすのは当然だからな。
さて、とりあえず食料問題は確保出来たから次はいよいよ技術促進。
青銅や鉄の製造だ。
青銅は鉄に比べて弱いからあまり武器には向かないが、装飾品や技術にはなるから一応製造法を教える。
そして最も必要な技術、製鉄だ。
鉄が無いと技術発展なんか夢のまた夢だからな。
まぁ教えるのはかなり原始的な製鉄法。
ふいごによる送風で木炭や砂鉄、鉱石などを溶かして精製する方法だ。
これなら仕組みも簡単。
縄文人でも理解出来るだろう。
そしてある程度人口や建築技術が進んだらたたら製鉄にしよう。
こっちの方がより大量に得られるし、日本と言えばたたらだからな。
弥生土器が出来たから次は須恵器だ。
古墳~平安時代にかけて生産された陶質土器で、半地下、地下式の窯を使って焼くから縄文や弥生土器に比べて強度もかなり強い。
ろくろを使って形成するからろくろが必要だが、手回しや蹴りろくろならそんなに難しく無い。
次は建築関係だ。
今までのような半竪穴式から弥生時代のような完全な竪穴式住居にする。
そして俺の屋敷は二階建ての木造建造にする。
屋根は茅葺きだが。
弥生時代には神聖な物は高床式みたいに高くして存在感をアピールしていたが、俺は別に高い位置に建てる必要は無いから普通に平地に建てる。
ちなみに備蓄倉庫は高床式にした。
やっぱりネズミの被害が酷いらしいので、ネズミ返しのある高床式が良いだろう。
日本建築の釘や接着剤を使わない技術を教え、ノミやトンカチ、カンナを作らせればある程度の耐久性がある建造物が作れる。
鋳造技術はまだ0に近いが、製鉄が出来れば釘を開発するのも難しく無い。
現代みたいな形は難しくても、似たような形は作れる。
まぁまだ製鉄技術が出来てないから予定に過ぎないが。
後は獣や他国からの侵略を防ぐために木で壁を建築した。
簡単な物だが、ハッキリと領土内と領土外の区別がつく。
ちなみに人口増加を見込んで森を切り開き、新しく土地を開拓した。
やはり神の命令だからか、どこの家庭でも子作りに奮戦している。
既に新たに産まれた子供もいる事から、これから住居が更に必要になっていくだろう。
だからどんどん開拓し、居住地を増やす。
ある程度増えたら他の地域にも進出する。
最低でも500人は突破しないと話にならないが。
米の収穫が増えていくにつれ、結構な重労働になるので鉄製の農機具や脱穀機として千歯扱きを開発した。
今までは量が少なかったから必要無かったが、今は食料増産のために新たに水田を作っているから手では間に合わない。
かなり原始的だが、それなりに役に立つ。
更に食料増産のために二期作や二毛作も行う。
米の他にも様々な野菜を栽培している。
一応連作障害が起こり難いように輪作や他の植物を植えたり、肥料を与えたりしている。
最初は肥料として人糞を利用すると言ったら流石に反対意見もあったが、神の威光で押しきった。
しかし堆肥を使う事によって明らかに植物の生育が良くなったから今では村人も支持している。
ちなみに堆肥の他にもワラとか枯れ草等を使ってる。
食料が増えてゴミも減るので大好評だ。
植物栽培を始めたので養蜂も始める。
植物を受粉させるには蜜蜂を使うのが一番手っ取り早いし、蜂蜜も出来るから一石二鳥だ。
ニホンミツバチは攻撃性が低いから飼育もそんなに難しく無い。
まぁセイヨウミツバチに比べて蜂蜜の採取量が少ないのと、逃亡の習性があるから面倒だが、セイヨウミツバチみたいに徐々に家畜化すれば良い。
今まで取る事しかしなかった縄文人には蜂を育てるというのが理解出来ないらしいが、まぁ今までの功績がある俺からの命令だから黙って従った。
やっぱり神設定は楽で良いな。
どんなにぶっ飛んだ事を言っても「何でそんなことを知ってるんだ?」とか聞かれない。
「神だから」の一言で簡単に受け入れる。