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日本帝国記  作者: 浦波
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2 探索と野宿

 とりあえず移動を開始。

磁石も無いから方角はよく分からないが、太陽の位置から大まかには分かる。

それに夜になれば星が出て、もっと詳しく分かるだろう。

にしても前の世界で暇つぶしに様々な本を読んどいて良かった。

まさかこんな知識が役に立つ日が来るとはな……。

弥生時代から大体現代くらいまでの知識ならある。

確か日本でちゃんとした国である邪馬台国が出来るまで後800年程度。

それまでに九州くらいは制覇したい。

1から国を作るのはかなり面倒だが、国が出来るまで何百年も待つのはキツイ。


大体、寿命はあっても体は普通の人間と変わらないから病気にでもなったら一大事だ。

破傷風や肺炎、風邪でも簡単に死んでしまう。

だから何としてでも国を作り、文明を発達させなければならない。


そして更に、周辺諸国からの侵略を防ぐために最低でも日本統一は成し遂げなくてはならない。

まだ大陸は日本の存在すら知らないだろうが、後漢や晋の時代になれば日本に来はじめる筈。

侵略してくる確率は低いが、警戒しといて損は無い。

それに軍備を整えておかないと侵略されたらアウトだ。

大陸は既に人口が2、3千万は超えてる。

兵士の数も百万は軽くいく。

現在の日本の人口は約50万人。

現時点で日本の総人口を超えてんだ。

敵う筈が無い。

まだ大分先だが、西暦200年~300年の大陸を抑えられるのはローマ帝国ぐらいだ。

つまり後800年ぐらいで日本はローマ帝国に匹敵する力を所有する必要がある。




 ……いや、無理だろ。

だって西暦200年の日本の人口は多く見積もっても80万前後。

確か100万はいってなかった。

流石に大陸も全兵力を日本に振り分ける訳は無いし、現実的に考えて海を越えてやって来るとしたら多くても1万前後だろう。

そう考えると可能性が無くは無いと思えるが、日本の人口比率から考えて、戦える奴は5000もいけば良いほうだ。

それにそれまでに日本統一して全てを掌握出来てないと揃える事すら不可能。

国民皆兵でいけば撃退出来るかも知れないが、その後の経済活動は不可能。

ていうか大陸が第2陣を派遣したらまず勝てない。



無理だな。

とりあえずはしばらく大陸に朝貢して属国として頑張るしかない。

卑弥呼みたいに国として承認してもらおう。

別に属国となって冊封体制を敷いても問題無い。

時間を稼げれば良いのだ。

その時の状況にもよるが、後漢の時代に既に大陸と戦えるだけの戦力があるなら侵攻する。

それが無いなら時間稼ぎのために属国となり、期を待つ。

大陸は日本に対してそんなに興味は無いだろうし、難癖つけて来る前に属国になれば流石に言えないだろう。

それに属国と言えど、一応独立国だ。

大陸の支配を受ける事は無い。

下手に刺激して侵略され、支配されるよりずっとマシだ。



 さて、基本的な方針が決まった所で先ずは確認だ。

矢筒の中の矢を触り、コピーする。

すると全く同じ矢が出てきた。

「良し、とりあえず能力に変わりは無いようだな」

俺が唯一与えられた能力、コピーだ。

見たり触ったりした物なら何でもコピー可能。

大きさや数に制限は無いが、唯一生物だけはコピー出来ない。

と言っても俺が「これは生物じゃない」と思えればコピー出来る。

今までイナゴや生物兵器物等は「これは兵器だ」と思う事でコピー出来た。

しかし軍馬は兵器だと思い込んでも出来なかった。

やはり心の底から「これは生物ではない」と思わないとコピー出来ないらしい。

なかなか難しいものだ。


まぁ良いや、とりあえずは問題無い。

何せこの能力が無いと途端に難易度がイージーからベリーハードに上がる。

ただ知識と寿命があるだけじゃ国家運営は難しい。

まぁ百年以上生きればこの時代なら神扱いされて出来なくは無いが、やはり無いと難しい。




 そして次に弓を持ち、矢をつがえ、発射体制を整える。

10mぐらい離れた所にある適当な木を狙い、矢を放つ。

カンッ!!

という音がして見事命中。

多少狙った中心から外れたが、問題無い。

「良し、弓も問題無いな」

何故俺が弓を使えるのかと言うと、前の世界で自衛用に習ったからだ。

と言っても直ぐに銃を開発し、弓を使う必要が無くなってそれ以降は銃ばっかりだった。

だから多少不安だったが、問題なく使えるらしい。

射程も精度も低いが、自衛には問題無いだろう。

矢は無限にコピー出来るんだ、弾切れは無い。




 確認が終わり、村を探すべく移動を開始したが、やっぱり簡単にはいかない。

周りは森や山しかなく、唯一あるのは獣が踏み固めた獣道だけ。

途中綺麗な川を見つけた。

非常に喉が渇いていたから飲みたいが、そのまま飲んでは寄生虫に感染するかも知れないのでかなり迷った。

煮沸するにも火はあっても鍋など入れ物が無いから難しい。

石をわざわざ削るのは面倒だし、仕方なくそのまま飲んだ。

自然の水だったからか非常に美味しく、満足した。

その後経過を見たが、とりあえず異常は無かったからその水はとりあえず安全とし、近くに生えてた竹を切り落とし、竹筒を作って水を汲んだ。

これで水に困る事は無い。

竹筒に入れた水ならコピー出来るからな。

何故か液体だけをコピーすることは出来ない。

必ず容器に入れ、容器ごとコピーしなくてはいけないのだ。



次の問題は食料だ。

流石に水だけでは生きていけない。

知識はあるから食べてはいけない毒性のキノコや植物は分かるから良いが、動物性たんぱく質が手に入らない。

魚を手に入れるには釣りや槍で突くという方法があるが、釣りをするには道具が無いし、木を削っただけの原始的な槍で泳いでいる魚を突く程の技術は無い。

どうしようかと悩んでいたら、前方15mぐらい先にイノシシを発見した。

幸いまだこちらに気が付いていないのか、下を向いたままだ。

動物性たんぱく質を手に入れるため、俺は弓矢を構えた。

出来るなら必中距離の10mまで近付きたいが、そうすると逃げたり、逆にこちらに向かってくるかも知れないので15mの距離で狙う。

照準が定まり、未だに下を向いているイノシシに向かって矢を放った。

矢は見事にイノシシに当たり、突き刺さった。

しかし命中した部位は尻の辺りで、悲鳴こそ上げるもまだまだ元気。

オマケそのせいでイノシシは俺に気付き、キレたのか猛然と俺に向かって来た。

俺は直ぐに2発目の矢を出し、構えようとするが、イノシシはもう直ぐ近くにいた。

残念ながら俺は速射力が無いのでこのままでは2発目を射る前にイノシシの攻撃を受けるだろう。

なので俺は弓を下げ、さっき射った矢を10本以上コピーして放った。

5m程にまで接近してたイノシシに次々突き刺さり、イノシシは絶命した。

イノシシの頭や体中に矢が刺さり、ハリネズミ状態だ。

何故こんな事が出来るのかと言うと、目に見えない銃の弾丸はコピー出来ないが、目に見える矢なら射って飛んでいく状態そのままをコピー出来る。

だから俺は射った矢をほぼ無限にコピーし、映画「英雄(HERO)」みたいな事も出来る。

初めからこうすれば良かったのだが、自分の実力を試したかったので1射目は自分で射った。




 ハリネズミにしたイノシシを川まで引きずり、解体を始めた。

切れ味は悪いが一応刃物の剣を焚き火の火で炙り、腹を裂く。

内臓を取り除いて首を落とし、川に浸けて血抜きをする。

ある程度浸けて血が出なくなった辺りで引き上げ、解体して皮を剥いでブロック状に切る。

そして解体が終わったら肉はそのまま川に流し、移動する。


死体になった時点で物扱いだからコピー出来る。

わざわざ重い肉を持ち歩く必要は無い。

それに血の匂いに釣られて他の動物が来るだろうから移動しとく。

もし熊にでも遭遇したら厄介だからな。

まぁコピーがあるから勝てるだろうが、遭わないに越した事は無い。

それに日が暮れる前に洞窟等の寝床を確保しなくては。

流石にそこら辺に寝てたら狼や熊に襲われかねない。

この時代の日本には狼は結構いるからな。

用心しなくては。




 洞窟を探したが、見つからない。

まぁそんな都合良く見つからないかと洞窟探しは諦め、日が陰ってきたので食事にする。

メニューは野草のサラダとイノシシの肉のキノコのソテーあえだ。

ライターで焚き火を起こして石を焼き、イノシシの肉をコピーして食べやすい大きさに切って焼く。

火加減の調節は出来ないから基本ずっと強火。

ある程度焼けたらキノコも一緒に焼き、風味をつける。

焼き上がったら皿代わりの洗った葉っぱに置き、別の葉っぱには洗った野草をコピーして終わり。


木の棒を箸代わりにして食べる。

焼き加減はメチャクチャだが、上手くウェルダンに焼けた。

動物臭さもキノコの風味が誤魔化してくれてるのでそこそこ美味い。

塩があれば尚良いのだが、残念ながら海は無いので我慢だ。

野草のサラダは苦いが、栄養バランスを考えて残さず食べた。




 日が落ちて暗くなって来たから早いが寝る事にする。

特にやることも無いからな。

下手に火を起こしたりすると興味を持った熊とかを惹き付けてしまう。

だからもう寝る。


本来なら洞窟等で寝たかったが、残念ながら見つからないのである程度の高さのある木に登り、枝に腰かけてコピーした蔓で自分を木に縛り、落ちないようにする。

あんまり良い寝床とは言えないが、襲われる危険性が低いから良しとしよう。

やれやれ、一人というのは面倒くさい。

早く村なり集落なりを見つけなきゃな。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前話の手紙でコピー能力について言及とかされてなかったと思うけど、どうやってそんな能力が自分あると思い当たったの? 唐突に出てきてびっくりした
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