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日本帝国記  作者: 浦波
17/55

16 日本統一

 紀元前380年(皇紀220年)



 北海道、琉球を平定。

遂に日本統一を果たした。


良し、ようやく前提条件は全て果たした。

これで技術発展を進められる。

新たに領土となった北海道、琉球にも農耕を教え、食料生産体制は整った。

後はインフラ整備をすれば本土並になるだろう。

まぁしばらくは三等国民だから洗脳教育を重視するが、いずれは本土と同じ権利と義務を持つようになる。




 日本統一の祝いとして宗教の自由を許した。

別に今までも他宗教に入信しようが別に文句は無かったのだが、国民の意識として北郷教に入信しないと疎外させる感じがあったからだ。

教典に「他宗教を正当な理由も無しに批判してはいけない」、「差別、偏見を持ってはいけない」という文があるからあからさまな差別はしないが、無視をしたりなど面倒な所が出てきた。


だからこの期に『宗教の自由』を発令。

法律に触れない限り何を信仰しても許される。という法を制定した。

更に、教祖たる俺から正式に

「北郷教に入っていないからといってその者を差別や疎外してはいけない。

そういった行為は北郷教の品位を貶める行為に他ならない」

と正式に発表した事で差別や疎外意識も徐々に薄れていった。




 とうとう実用的な蒸気機関が完成。

蒸気機関自体は完成してても、実用には耐えられない物ばかりだったから、この完成は大きい。


早速蒸気機関車を開発し、日本中に路線を広げる。

馬が無いから流通手段を鉄道に求めるしかない。

鉄道が出来れば今までの流通問題は一気に解決するし、地方支配も容易になる。

この世界も地方分権ではなく、中央集権体制を取ってるから地方への命令伝達が大変だった。

今までは船や徒歩で長い時間をかけてようやく到着するんだ。

場合によっては九州から命令を出し、目的地に命令が行くには3ヶ月もかかった。

鉄道が出来ればその苦労が一気に解決出来る。




 現在の首都は九州の福岡だが、この位置では日本全体を掌握するのは難しいし、大陸と距離が近くて危ないから現在の首都東京に遷都する。

東京は既に首都にするために省庁や街を建設してたから遷都はスムーズに済んだ。

新たに作った俺の居城は石と鉄筋コンクリートで現代の国会議事堂に近い建物を建設した。

ちなみに福岡の城は記念の建物として保存され、海外からの特使を招く建物として利用する事にした。




 蒸気機関の完成によって武器も発展。

フリントロック式銃にライフリングを削りヤーゲル銃にした。

これで飛距離や命中精度はかなり上がった。

今は紙薬莢と弾丸を現代の形に近づけたミニエー弾、今までは銃口から弾丸をいれる前装式から後装式のミニエー銃を作ってる。

ちなみに製紙技術はとっくに完成している。




 紙が出来たので新聞を発行するために鋳造を使った活版印刷を開発。

だだでさえ閉鎖的な社会だから新聞を発行すれば情報を牛耳れる。

幸いにも現在日本帝国の識字率は8割を越えてる。

ちなみにまだ低い地域は北海道や琉球だけ。

後は長年の義務教育によって読める。

だから新聞は絶大な効力を発揮するだろう。




 貿易は前漢が出来てから始めようと思ったが、何も国同士でやる必要は無い。

民間の非正規の密貿易をすれば良いと気付いた。


だから北郷商会に「ジャンク船を使って大陸で買い物をしてこい」と命じた。

中国や朝鮮半島の沿岸付近にジャンク船を係留させ、小型ボートで上陸して貿易させる。

ちなみに言葉は既に習わせた。

たまに大陸から戦乱を逃れて日本まで来る中国人や朝鮮人がいる。

そいつらに現在の大陸の様子や、この時代の中国語や朝鮮語はどんな感じなのかを聞いた。

予想通り現代との相違点があったが、それも調整して問題無い筈だ。


 ちなみに買ってくるように命じた物は馬(中型と大型馬)、牛(食肉用と乳牛)、羊、鶏、蚕、小麦、芋、レアメタル等々、日本には無い物を買ってこいと命じた。

代金として金や銀を持たせた。

これなら日本からの密貿易だとバレにくいだろう。

流石に一度に大量に買いに行くとバレるから複数回に分けて買いに行かせる。

いくら戦乱とは言え、経済は回っている。

それに戦乱のドサクサに紛れれば尚バレにくい。



ついでにインドへ綿花を手に入れさせに行きたいが、流石にインドまでは遠すぎる。

ガレオン船があるから行けなくは無いが、中継地点無しでの長期間の航海は厳しい。

蒸気機関を積んだ船が出来ない限り無理だな。

それと保存食。

普通の食料では1月以上保たない。

缶詰めや瓶詰めが必要不可欠だ。




 これから技術発展をさせるためには日本国民の教育水準を更に引き上げなくてはならない。


今までは小学校と大学しか無かったが、これからは小学校、中学校、高校、大学、大学院の6、3、3、4、6年の現代式に変える。

科目も数学や科学、化学、物理、外国語、現国、地理など現代に近付けなくてはいけない。

と言ってもいきなり現代式では理解出来ないだろうから先ずは明治時代の初期~後期の水準だ。

これからは化学技術を発展させるために知識が必要になる。

既に理系や文系の分野を教えた奴等がいるから教師役には困らない。

印刷技術も完成してるから教科書も出来る。

まぁ時間はあるんだ。

ゆっくりやるさ。


ちなみに三等国民が入れるのは中等部まで。

二等が高等部。

一等なら全部。

だから三等国民が就ける役職は係長クラスまで、二等なら部長、一等なら社長になれる。

義務教育については三等国民は小学校低学年まで、二等なら小学校卒業、一等なら中学校卒業。

それと日本帝国は現代日本同様飛び級を認めていない。

飛び級は身心育成に良くない。と表向きには言ってるが、実際は短い期間で卒業されると洗脳効果が薄くなるからだ。

だから代わりにレベルが高くてより実践的な教育を施す特別校を開設した。

教育を受ける年数は変わらないが、即使える人材を育成する。

裏切らないように普通の学生よりも念入りに洗脳を施すがな。




 近代化をさせるために鉄が更に必要になる。

今までの水車式だけでは製鉄量が足りないから反射炉を作った。

熱を反射させる単純なやり方だが、石炭を利用出来るようになったから火力は以前よりも増す。

これなら更に高品質で大量に製鉄出来るだろう。




 今までは諜報なんて概念すら無かったから必要無かったが、これからは文明国を相手にするんだから諜報組織が必要になる。

現代の技術を教え、スパイを養成する。

諜報や煽動、破壊工作、誘拐、暗殺など様々だ。

大陸から来た奴を洗脳して工作員に仕立てあげて大陸に潜入させた。

まだ通信技術が未発達だから情報を得るのが難しいが、経験は必要だからやらせる。

今まで日本は諜報なんてやったこと無いからな。

先ずは慣らせなきゃいけない。


それと暗号だ。

まだ無線とかは出来てないが、手に入れた情報がバレないようにするために暗号は必要だ。

暗号を作るチームと解くチームを作って競争させよう。

てっとり早く技術が上がって良い。




 製紙技術が上がったし、鉄道も使えるようになったから郵便事業を起ち上げた。

世界初の切手の肖像画は富士山にした。

やっぱり日本の象徴だからな。まだそんなに知られてないけど。




 日本統一からしばらく経ったある日、北郷一寛は重大な発表があるとし、首都東京で演説をした。

「私がこの地に降りて220年。

……様々な出来事があった。

私がこの日本に降りたばかりの頃は未だ国という概念すらなく、各々小規模な集落を形成して生活を営んでいた。

隣国である大陸は既に国が出来、高度な文明を築いていたというのにこの島国は完全に時代に取り残されていた。

その状況に見かねて私はこの地に降り、知識を与え、国を起こし、遂には日本統一までもを果たした。

……私の役割はもう終わった。

もう神が人間に指示を出す時代は終わり、自らが時代を築く時が来たのだ。

だから後継者として息子に皇帝の地位を継承させ、私は天に帰る。

皇帝に即位した者は我が北郷一寛の名を名乗り、この国を導く。

諸君らはもう成長した。

何時までも親があれこれ口を出してはいけない。

しかし案ずるな!!

私は常にこの国を見守っている!!

私の民を、私の子供達を常に見守っている!!

例え姿を表さなくとも、私は君達を案じ、見守っている!!

日本帝国万歳!!

日本国民万歳!!」



こうして神、北郷一寛は天に帰り、二度と姿を現す事は無かった。

国民はその事に深く悲しんだ。

しかし、新たに北郷の息子が皇帝に即位し、北郷一寛に就任する式にて国民に向かって演説するその姿は正に北郷に生き写しのようだった。

帝国は確かに神はいなくなったが大丈夫だ。

北郷様の血は確かに受け継がれている。

それに北郷様は見守って下さっているのだ。

天におられる北郷様を安心させるためにも頑張らなくては。

と国民は安心し、新皇帝への忠誠を誓った。




 上手くいった。

少し不安だったが、何とか国は持ちこたえた。

後は戦国時代同様、子孫を前面に押し出し、俺は裏に回る。

これ以上いたら写真や絵で肖像画を作られそうだからな。

そうなったらもう逃げ場は無いし、他国に攻め込んだら暗殺されかねない。

だから息子を皇帝に据えれば俺に害は及ばない。


既に頭脳としてまた戦略研究会を組織した。

アイツ等には現代知識を与え、俺をサポートする。

戦略研究会は俺の指示で動き、皇帝は戦略研究会の指示通りに動く。

こうすれば今まで通りだ。

戦略研究会や俺の一族は俺を神と疑ってないし、洗脳も済んでいる。

余程の失敗を犯さない限りは大丈夫だ。

まぁこのまま文明レベルを上げまくれば例え失敗してもカバー出来るから何の問題も無い。




 新皇帝は北郷教の教主を信者に譲渡し、政教分離を発表。

今までは皇帝が教主も兼任していたが、自分は皇帝で精一杯なので信頼の置ける信者に教主の地位を譲ると宣言。

そして今までも別に政治に口出ししなかったが、これを機に正式に宗教が政治に関与する事を禁じた。

信者達は反発すると思いきや、静かに受け入れた。

何故なら教典に「宗教が政治に口出ししてはいけない」と明記されているからだ。

だから元々口出しする気は無かったし、法律で定めても別に何とも思わなかった。



これで徐々に宗教国家から普通の国になるだろう。

宗教は楽で良いけど、時代が進むとどうしても邪魔になる。

俺が引きこもれば何れは伝説や神話になって俺の存在が疑われるようになる。

まぁ初代皇帝として名は残るだろうが、神としては疑問を持つ者達が増える。

そうなればわざわざ神に頼る事は無くなり、勝手に発展してくれる。

北郷王朝が何の問題も無くこのままいけばどっちにしろ愛国心が生まれて従う。

あのまま俺が神のままいたら何時までも俺を頼って来ただろう。

そのうち大規模な自然災害や温暖化でも起きたら俺に何とかしてくれとか言ってきそう。

残念ながらなんちゃって神様の俺には不可能だ。

寿命が長いのとコピー能力以外はそこらへんの人間と変わり無いからな。

神の立場さえ捨てればいざという時には逃げ出せる。

地球がダメになれば最悪宇宙ステーションや月に移住してやる。

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