10 領土拡大
日本統一まではかなりチート気味に技術発展をします。
紀元前560年(皇紀40年)
ある程度人口は増え、官僚や役人の数も増えてきたので、とうとう領土拡大に動く。
今までは自分達から臣従してくる村々を併合して領土を拡大していたが、これからは積極的にうって出る。
軍人の数も200人を超えたからこの時代の日本ではそう簡単には負けないだろう。
と言っても無理矢理侵略するのではなく、一応降伏勧告はする。
軍隊を見せれば大抵の村や集落は何もせずに下るだろう。
まだ国という概念事態がそれほど無いだろうし。
先ずは福岡を制覇する。
今いる辺りは海に近い上らへんの地域だ。
この軍人の数では福岡を制覇するのも大変だろうが、まぁ気長にやるさ。
時間はたっぷりあるからな。
食料増産で田んぼや畑、農場の数を増やしたからより収穫を楽にするために千歯扱きから足踏み式の脱穀機に変える。
これならより早く脱穀出来る。
更に、今まで精米は人力でやっていたが、量が増えてとんでもなく重労働だったので水車小屋を建てて精米する事にした。
これなら川の流れが止まらない限り24時間精米し続けられる。
それと田んぼの病害虫予防として田んぼに鴨の子供を放つ。
本来なら合鴨を使うのだが、アヒルは日本にはいないのでまだ不可能だ。
大抵の便利な動植物は大陸とか日本以外から来ているからな。
水車を作る事が出来たので、更に製鉄技術を高めるために水車式製鉄所を建設する。
ふいごやたたらでは人力に頼るため、どうしても不安定になる。
だから炉の温度を上げるために行う送風に水車を使えば安定した送風を得られるし、人間ではないので疲れない。
しかもこの方法ならより炉の温度を高める事が出来るから質が高く、大量に鉄を作れるようになる。
これから更に鉄が必要になるからな。
鉄の他にも金、銀、銅などの鉱物を溶かして精製する必要も出てくる。
石炭を掘削するまではこの方法が一番だ。
ヨーロッパでこの方法が取られたのが確か14~15世紀だったな。
2000年以上前に完成させるとはな……。
耐火レンガの製造とか、苦労する面も大きかったが、技術レベルの進歩は更に加速している。
それでも人口が少ないせいでそんなに発展は出来ないがな。
食器類が土器から陶磁器に変わった。
高温を保つ技術などが発展したので須恵器などの土器や陶器から、現代の陶器である陶磁器を開発。
これで食器類もかなり美しくなるし、美術的な価値が上がる。
今までは木製の木器か土器、陶器しか無かったから色合いがかなり地味だった。
とりあえず全国制覇するまでは文明を進めるのを緩めよう。
これ以上進めると新たに領土にした土地の奴等が理解出来ないレベルに上がっちまう。
もう既に理解出来ないレベルだろうが、まだ今ならギリギリいけるだろう。
これぐらい上げればとりあえず当面は困らないだろうし。
名もない村サイド
遥か昔から変わらず何時も通り狩りに出かけ、獲物を仕留め、村に返ってから皆で分けあい、暮らしていた。
しかし、その何時もの日常は突然変わった。
それは何時も通りの朝を迎え、何時も通り狩りに出かけようと準備をしていた時、突然現れた。
何か見たことの無い物を着た? 集団が現れた。
その数およそ20人。
その集団は何故か広がらずに詰め、更には同じように歩いている。
見たことの無い集団に村の住民は警戒し、女子供を家に避難させ、男達は石で作った槍や弓矢を構える。
するとその動きを見た謎の集団も見たことの無い何かで作られ、日の光に反射して光っている武器を構える。
互いに武器を構えるという一触即発の状態になったが、そんな緊張した空気を裂くように集団の中から1人が出てきた。
「我々は知恵と豊穣の神、北郷様より遣われし兵士だ。
北郷様はこの地を平定し、新たに国を作られるおつもりだ。
なのでこの土地も北郷様の領土としたい。
どうか貴君等も我々に従い、北郷様にこの地を譲ってはくれないだろうか?」
代表と思われる男は冷静に臣従要求をしてきた。
言い方こそお願いしているが、実際は脅迫しているのと同じだ。
幾ら無学な彼等でも容易に理解出来た。
このいきなりの臣従要求に村長は悩む。
北郷という名前に聞き覚えはあった。
噂によると何も無い場所から何でも出せ、色んな事を教えてくれる神らしい。
その神の話を聞き、近くの村々がその北郷が治める村に助けを求めた。
すると北郷は自分に従うなら助けてやる。と言った。
ロクに獲物が手に入らず、最早神にすがるしか無かった村々は北郷に忠誠を誓った。
すると北郷は沢山の食べ物を出し、その村々を救った。
実際に見た訳ではなく、ただの噂に過ぎなかったから信じていなかった。
しかしその神から遣われた兵士達を見れば噂は本当だったのでは? と思えてきた。
何故なら北郷の兵士達の格好が異常だからだ。
何で出来ているのかは分からないが、鈍く光り、丈夫そうな服。
板のような形の服と同じで何で出来ているのか分からない物を手に持ち。
とても鋭い槍や弓矢を持っている。
村の長たる自分でさえ何か分からない物を沢山持っているのだ。
もしかしたら神である北郷が与えた物なのか?
とにかく何かは分からないが、恐ろしかった。
この村の男は20人で相手と同じだが、何故だか勝てる気がしない。
それどころか自分達が皆殺しにされる光景しか浮かばないのだ。
村長は色々考えたが、やはり勝てる気が全くしなかったので
「……分かりました。
我々は従います」
臣従を受け入れた。
すると後ろに控えていた村の男達はホッとしたように武器を下ろす。
男達にも相手の不気味さと、何故か勝てないだろう。という雰囲気を感じ取っていたのだ。
臣従を受け入れ、一時的に部隊を率いていた隊長が村を統治した。
村長に村の人口や家族構成、付近の地形、どんな植物や動物がいるのか、等様々な事を聞き、竹簡に書いてメモを取る。
少しすると、村を支配下にした報告を聞いて北郷から派遣された役人や技術者などが来た。
役人が村長を引き継ぎ、兵士が記したメモを基に正式な文書に書き写し、支配体制を構築する。
技術者達は農業なんてほとんど知らない縄文人達に農業を指導する。
その間、軍人達は役場や家々を建設する。
北郷軍の兵士達は軍人であると同時に優れた建築技師でもある。
遠くの領地を獲得し、いちいち大工を本国から派遣するのは時間がかかる。
だから最初にある程度はその地を占領した兵士達が開発する。
本格的な戦闘なんか無いと確信していた北郷は軍事訓練と一緒に建築技術も兵士達に教えていた。
と言っても本職では無いから複雑な事はせず、とりあえずの統治が出来るレベルに過ぎない。
ある程度安定してきたらまた新たにちゃんとしたのを建て直すので簡易的な作りになっている。
それでも村人にはカルチャーショックだった。
今までは不安定な狩りをしていて生計を立てていたというのに、狩りよりは安定的な農業によってある程度の食料を確保出来、見たことの無い技術で見事な(村人視点)役所を建て、更には自分達の家も建ててくれる。
まだ田んぼや畑が出来てない時は本国から大量の食料を運んで来てくれ、配給してくれる。
更には学校という物を作り、自分達が知らない様々な知識を与えてくれる。
これまでの生活が良い方向に激変したため、村人達は「臣従しといて良かった」と心から思った。
もし逆らっていたら皆殺しにされていたかも知れないのだから。
実際、軍の臣従要求に逆らい、攻撃を仕掛けてきた村もあった。
攻めてきた者達は矢で射られたり、槍で滅多刺しにされたり、首を落とされるなど様々な方法で殺された。
それが例え女子供であろうと北郷軍は等しく殺した。
軍人として教育されていたのもあるが、彼等からしてみれば神からの祝福を断ったのだ。
そんな奴等に容赦は必要無い。と彼等は判断した。
この報告を聞いた北郷は「まるで十字軍のようだ」と引いた。
このままでは不味いか? とも考えたが、ほとんどの村は反抗せずに降伏するからそんなに問題は無いだろうと判断した。
それでも一応は軍事教練に「捕虜に対する扱い」等を教える事にした。
無抵抗の奴等まで虐殺するのは不味いからな。
軍規にもきっちり明記しとく。