杏。
アタシ。橋田杏。
今、告白真っ最中…。
あ、告ってるのじゃないからね。
「…というわけで、付き合って!」
今アタシの目の前にいるのは矢田智樹。
同じクラスのお調子者だ。
はっきりいってアタシは彼が嫌い。
うるさいし…。
「嫌ですごめんなさい」
お決まりのセリフを吐いて靴箱へ向かおうとする。
「だ…大好きなんだッ!!」
「…え?」
歩みを止めて顔だけ振り返る。
「大好きなんだ!…ずっと!!」
…今までこんな告白は無かったから、正直驚いた。
「これだけじゃ、伝わらないか…?」
う…。そんな目で見られても困るんですけど…。
「な…なんでもするから!!」
「…それって舎弟じゃないの?」
「う…。そうか…。…じゃあ、ずっと愛し続けるから!!」
「ッ!!」
何を言っているんだろう。
「愛?…そんなもの存在しない…!!」
耐え切れなくなったアタシは急いで家に帰った。
アタシの家は、アパート。
お金には困ってないけど、両親がいない。
アタシは両親に、多額の金だけを残されて、捨てられた。
愛だ?
そんなもの、存在しない。
あ…違う。
アタシが愛を知らないだけか。
「悲しい奴…」
鏡に映る自分の顔を殴った。
「ぅ…ッ!!ぁぁああああああッ!!」
―ピンポーン
「は…?誰よ…?」
アタシの家に人が来るわけがない。
「ピンポンダッシュかな…。子供の悪戯か…」
――ピンポンピンポンピンポン!!
だーーーーーーーーーーーーーーッ!!うるさいわね!!
一言怒鳴ってやるんだから!!
ガチャッ!
勢い良く戸を開けると…。
「よッ!!」
「な…んで…」
外に立っていたのはコンビニ袋を提げた矢田智樹。
「いや~、一緒に夜メシ食べようと思って!…コンビニ弁当なんだけどさ…。アナタとコンビに♪ってか?」
「な…ななな…」
「あ、笑えなかった?ゴメンゴメン~」
「じゃなくて…な…?」
「ん?」
「なんで家知ってんのよ!?」
「え?あ~、先生に聞いたんだ。…悪かった?」
「悪すぎよ!!」
「…なにもそこまで言わなくても…」
「で、なんか用?」
「だから、夜メシ…。じゃ、お邪魔しまーす♪」
「え!?あッ!!ちょっと!!」
勝手に入らないでよ!!
「靴くらいそろえなさいよ…」
…迷惑なはずなのにちょっと喜んでる自分がいた…。
「どう?この弁当オレ好きなんだ!ウマイ?」
「…普通」
…嘘。いつも一人で食べてるお弁当よりは何100倍もおいしく感じた。
「にしても橋田、箸の持ち方キレイだな!オレなんて親に持ち方教わったことないし…。橋田は、親に愛されてるからかな~」
「ッ…」
「橋田?」
「それは・・・ないよ」
「は…?」
「アタシ、親に捨てられたから…」
アタシ、こんな奴になに話してるんだろ…。
「…」
話し終わっても矢田は黙ったままだ。
「…なにか、言いなさいよ…」
「…」
「…ッつ!」
「よし!」
矢田は一言そういうと、勢いよく立ち上がった。
「な…何よ…?」
「オレ、毎日橋田ん家来るから!」
「な…!?」
「オレが、オマエの家族になってやるから…」
「な…なにいってんのよ…?」
「だから、オレと付き合えよ」
「だからなに言って…」
「少しは人に…オレに…甘えろよ…」
そういって正面から抱きしめてきた。
「なに…やってんの…」
「ずっと…ずっと、愛すから…」
そういって矢田は軽く触れる程度にキスをしてきた。
「ん…ぁ」
初めてのキス。
でも、アタシは矢田を拒むことなく…。
矢田と…、付き合い始めた。
中学のころの矢田、めっちゃカッコイイやんかあああああ!!
…みたいな(笑)
次の更新はいつになるか…。
実は受験生だったり(笑)