Eクラス。
一方、朱里。
ど…どどど、どうしよう…ッ!!
あたしの席、1番後ろだ…ッ。
このパターン、知ってる。知ってるよ…。
中学生のときもそうだった。
しかも今回もまえの席の人、めちゃめちゃ背が高いッ!!
ーーーキーンコーンカーンコーン……
あああ!!鳴っちゃったよチャイム!
…落ち着けあたし、落ち着いて席に着くんだ…。
ガララッ!!
あああ、先生も来ちゃったよ…。
「はい、注目ー」
パンパンと先生が手をたたく。
若い先生だ。それに、けっこうカッコイイ。
「今日から担任の棗愁登だ。先生になって、まだ2年だ。慣れなくて先生として頼りないかもしれないが、1年間よろしく頼む」
パチパチパチ……
みんなが拍手したのであたしも手をたたいた。
「じゃあ、自己紹介から入ろうかな」
そう言って全体を見渡した。
「じゃあ、藍田から…」
あああ!!きた~。やっぱり!!
どうしよう、あたし小っさいから見えないよね…。
「えーと?次は林?林朱里!」
ううう。ゆっくりと立つ。そして、息をゆっくり吸って…
「えと、喜多見中から来ました……」
「林、立ってから自己紹介をしなさい」
ほらね。やっぱり。
「先生…立ってます……」
みんながクスクス笑う。
ううう……恥ずかしいよぅ…。
「あっと、悪い。見えなかった。じゃあ、林、そのまま自己紹介を続けてくれ…」
ううう、先生の、バカ。
「喜多見中から来ました林朱里です…。すきなものは……」
1日で、有名人だよ…。
「アンタ、林朱里っていうの?」
ショートホームルームが終わり、上から声が降ってきた。
「あ、はい!」
どうやら、前の背の高い人らしい。え~と、たしか名前は…橋田…
「アタシは橋田杏。出席番号、アンタのいっこ前だよ」
橋田さんは、なんてゆうか、カッコイイ。サバサバしている。だけど、優しそうだ。きっと女子にも男子にも人気がある。
「よかったら、アタシと友達ならない!?」
いきなり、だった。
「へっ!?」
びっくり。
「アタシさあ、池波中からなんだけど、池波中の人誰もいないんだよね」
そう言って、苦笑いを浮かべた。
「だから、よかったらさ、……友達になって?」
顔が真っ赤だ…。可愛い…。
「うん!いいよ!!あたしも女友達いないんだ~」
友達はこの学校では圭吾しかいない。
「え!?ということは、男友達がいるの?」
あたしたちはタメ口で話せるほどもう仲良くなっていた。
「うん!自慢の幼馴染!!」
「そうなんだ!」
そういうと橋田さんは笑った。
「ねえ、ねえ、橋田さん」
「杏でいいよ」
「じゃあ、杏ちゃん!」
「呼び捨てでいいのに~」
杏ちゃんは笑った。
「でもこの方がしっくりくるよ」
あたしは呼び捨てで呼ぶことがほとんど無い。
「杏ちゃんって、頭よさそうなのになんでEクラスなの?それとも、やっぱり…バカ?」
本当、とても賢そうだ。バカには見えない。
「え?あ~…」
この反応からして、やっぱり頭はいいんだ…。
あたしは最下位…。うえーん。
「入試のときにね、寝ちゃったのよ」
「ええ!?」
寝ちゃった!?
…でも、それでもあたしより点数は上ってコトか…。
なんか、泣けてきた…。
「まあ、正確に言うとアタシ38度熱があったのよね~」
「えええ!?」
「ははは。前日勉強がんばりすぎて遅くまで起きて、当日バタンキューよ。ほんと、アタシってバカだよね」
はははっと杏ちゃんは笑った。
「で?朱里はなんで?」
ううう…。そんなの、決まってる。
「実力…です。これ以上聞かないで…」
杏ちゃんは目を見開いた。ちょっとすると笑い声が…。
あはははっ!!……杏ちゃん、大笑いだよ。
「いーじゃん!いーじゃん!!個性じゃん!!」
え?なんて?分かってくれるの?
このあたしの気持ちを分かってくれるの!?
「あ…杏ちゃんッ!!」
杏ちゃんに抱きつくと杏ちゃんはよしよししてくれた。
「圭吾はねッ、バカにしたんだよ~」
あああ、杏ちゃん優しい!!
「圭吾…って、幼馴染?」
「え?うん!!」
「まあ、幼馴染じゃね~」
そういってあたしを見た。
「今度紹介してね」
またにっこり。スマイル0円…。
「うん!」
入学初日、あたしにはすごくステキな友達ができた。