俺、Aクラス。(自慢)
ざわざわ。
校門入ってすぐに人だかりができていた。
「ねえ、ナニかなっ!?いってみよっ!」
朱里が俺の腕をぐいぐい引いていく。…痛いって。
「クラス発表なんじゃねえの?」
きっと、そうだ。自信がある。……お、あたり。
「うーんうーん。みえない…」
朱里はぴょんぴょん跳ねる。
うさぎか、お前は。
ぴょんっと跳ねてくるりと俺の方を向いた。
「圭吾……。……抱っこして欲しいぴょん」
……………は?
コイツ、なんて言った?今?ラッコが見たい…?
無理無理。ここ学校だもん。
「う~~~っ抱っこ!!」
はっはっは。幻聴幻聴。俺たち、コーコーセー。
「はいっ」
はああ!?まじで言ってんのか!?コイツッ!!
両手広げられても困るんですけど……。
「やだ」
うん、俺正しい。
「え~っケチだケチだッ!圭吾の鬼ッ!!」
はいはい。…ってか、ケチでも鬼でもなくね!?普通じゃね?
「ケチでけっこう」
朱里の頭をぺちぺち叩く。
「まぁ、俺みてやるよ」
そう言い残してクラス表を見に行く。
えーと?深山圭吾…深山、深山っと…。
あ、俺Aクラスだ。
で、林朱里…林…林…林…林…林…林…??
……まじで…?
「オマエ、Eクラスじゃん」
そういうと、朱里は…固まった。
「ウソ!?ウソウソウソ!?」
「いや、まじ」
この学校は入試のときの成績でクラスが分けられる。
全部でクラスは6クラス。
高い方から、S、A、B、C、D、E……。
うん。俺はまあまあだな。けど朱里は……。
「最下位クラスなの!?あたしっ!」
そう、最下位クラスだ。
「…もういっそ、おめでとう」
拍手、拍手~。
俺の幼馴染はこんな馬鹿だったのか。
まあ、アホだとは思ってたけど。
「うっうっ。いーもん。別にいーもん。この林朱里様に負けてこの学校落ちた人だっているもん…。大丈夫だもん…」
そういって自分に言い聞かせる朱里。でもな…。
「ここ、今年はめずらしく定員ぴったりしか受験するヤツいなかったんだってさ」
ガーン!っていう音が聞こえた気がするが、続ける。
「しかも、最下位の合計点、5教科で32点だってさ」
ガガガガガガーーーーーーン!!
「それ、あたしじゃんか……」
え!?うっそ、まじで!?じゃあ、こいつ……
「学校で最下位じゃん…」
うわーーーーーー!!まじでーーーーーーー!?
って、こんな幼馴染がいる俺も恥ずかしいけどね?
「わーん、圭吾おおおおお~」
わ、泣いた。
「はあ、とりあえず、クラスいこーぜ」
とりあえず、慰めて朱里を連れて校内に入る。
「ほわわ~、校舎、キレー」
立ち直り早ッ!?
もう、校舎の綺麗さに感動している!?
「そうだな、朱里よりキレーだ」
……なんつって。
「圭吾ひどい~」
あああ、また泣きそうだ。
「冗談だよ」
ああ、なんだかなあ……。
俺達は、それぞれ分かれて教室に入った。
えっと、俺の席、俺の席。
あ、ここか。
出席番号順で並べられた椅子に腰掛ける。
はあ、やれやれだぜ。
「オマエ、ふかやま?」
知らない男が声をかけてきた。
どうやら俺の後ろのようだ。初対面でオマエはないだろ…。
「どちら様で?」
俺は後ろを向く。
「ん?オレ!?オレは矢田智樹!」
矢田はそういうと、俺に向かってピース。
……馴れ馴れしいヤツだ。
「で?ふかや……」
「み・や・ま、だ」
俺は矢田の言葉を遮る。
「おっと、失礼」
そうは言っているが、ちっとも失礼だと思っていないだろう。
てか、まじで馴れ馴れしくね?
「で、深山。朝一緒にいたのは彼女か?」
は?
「は?」
何言ってんの、コイツ。
「いやあ、朝イチャイチャしてたじゃんかあ~」
矢田がニヤニヤ笑う。
「違うって。幼馴染だよ」
ああ、そうだ。幼馴染だ。
まあ、俺はそうは思ってないけどな。
「そうなのか?へー、ほー」
あんまり納得していない。
だから、困るんだよな、朱里の態度…。
矢田は俺の顔を覗き込み、そして言った。
「でも、オマエはあのコのことが好きだろ?」