表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の姫サン。  作者: うきわ
10/10

過去。

アタシと、矢田智樹は付き合い始めて3ヶ月と23日。

順調…なのかなあ。

恋愛とか、よく知らない。

だって、愛を知らなかったわけだし。

智樹はアタシにいっぱい「愛」をくれてたと思う。

たまにエロいのは嫌だけどっ…!

でも、やっぱ自分から「好き」だと言えなくて…。

素直じゃない自分が嫌いだ。

でも、智樹が好きな自分アタシなら…。

少しは自分を好きになれているかもしれない。

…まだ、言ってないけど…。

智樹のことが好きだ、と素直に言えたらな。




今日は、クリスマスイブだ。

もちろん、智樹と会う。

町にある大きなツリーを一緒にみる約束をしていた。

…その後はまだ決めてないんだけど。

でも、今日は自分から「好き」だと伝えようと思う。

恥ずかしいけど、智樹に「好き」をもらってばかりではダメだ。

…智樹が家に迎えに来るまであと2時間。

自分の精一杯のオシャレをしている。

短いフリルのスカート。

白いコート。

黒いニーハイソックス。

茶色いブーツ。

…サバサバしているアタシには似合わないものばかりだけど…。

「なんで智樹はこういう可愛い系が好きなのに、アタシなんだろ…」

…智樹はモテる。

お調子元気キャラで、人気。

顔もかっこいいし…。

たまに、自分に自信が無くなってしまう。

でも、今さら諦められないし。

智樹が自分のことを好きになってくれてアタシは変われた。

…感謝してる。

はあ、本人に言えたらいいんだけど。


…RRR,RRR…


「あっ」

アタシのケータイが鳴った。

開いたケータイには「智樹」の文字。

「思ったより早いなあ」

…でも、早く会えるのか。

そういった思いを抱いてケータイにでる。

「もしもし?」

「あ、えーと、杏さんでいらっしゃいますか…?」

「はい、そうですけど…」

…誰?

「私は双葉病院のものです。…矢田さんが…」

…え?…と…もき…?

アタシは視界が眩んだのが分かった。




「智樹ッ!」

病室のドアを開けると、智樹が白いベッドに横たわっていた。

「と…もき…?」

「杏さんでいらっしゃいますか?」

声のした方に振り向くと、そこには医者らしき人がいた。

「は…はい」

「…本当でしたら親御さんをお呼びするのですが…」

「…?」

「矢田さんのケータイには貴女のアドレスしか登録されていませんでしたので…」

「え…」

ちらり、と智樹をみた。

「そ…そうだ!!智樹、智樹は大丈夫なんですか!?」

「ああ、ケガは軽いのだけれど…」

「それは、どういう…」

「…記憶の方に、少し障害が…」

「そ、それって…?」

「…多分貴女の思っている通りです…」

「そ…そんな…」

智樹が…。

…アタシを忘れているかもしれない…?

ありえないよ…。あんなに愛してくれていたのに…。

嘘…だ。

そうだ、嘘だ。

きっと智樹はアタシのことを覚えてるッ…!!

覚えてるのよッ!!

「と…もき…?」

智樹の横たわっているベットへと歩み寄る。

「お…きて…?」

どうしよう。涙が、にじむ。

「ともき…」

アタシは智樹の隣で、声を押し殺して泣いた。




「…?」

「ッ!!と…もきッ…!!」

智樹が起きた!!

あまりの嬉しさに抱きつく。

「うわッ」

「どうしたの…?」

「うっ…ぁともき…智樹、智樹ッ…!!」

「えと…とりあえず泣き止んでください…」

「…え…?」

…敬語…?

一瞬嫌な考えが頭をぎる。

…智樹…、やめて、それ以上言わないで…。

「それと…、誰…ですか…?」

言わない…で…。

「……ッ」

…これは夢?

だったら早く現実に戻して?

智樹といた、現実に戻して…。

…どうしよう。頭が真っ白だ。

最悪だ…。

「な…んで…?ねえ、智樹…」

「あの…」

「アタシよ!!杏よ!!思い出してよ!!ねえ!!」

「わ…ちょっ」

「智樹ッ!!…ぅぁっあああああああ!!!!」

アタシはこの日を境に、智樹と会わなくなった。

智樹と関わることが怖くて、顔を合わせるのも怖かった。

アタシは智樹から逃げた。逃げたんだ。

でも、智樹がくれた「好き」だという感情は消えてはくれなかった。

私が智樹に伝えられなかった「好き」という感情が。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ