おまじない
短編です
俺の大好きだった、大親友で、幼馴染が、事故で死んだ。
突然だった。訃報を聞かされた時、ご両親の言葉も学校からの説明も、何も聞こえなくなって、ただ、アイツがもういないってことを実感できないまま、学校にも行けなくなって、ただ時間だけが過ぎていった。
毎日、日が昇っては沈んでいく。それを見つめるだけの日々。俺、生きてる意味あるかな?どうせならあいつのいる場所に行きたい。そんなことを考えるようになっていた。
あいつが死んだ翌月の月命日、一通の手紙が届いた。差出人にあいつの名前が書かれていて、俺は無我夢中でその手紙を開けた。
「突然いなくなってごめんな?もし今、お前が俺の事で悩んでいるなら、試してみてほしい呪文がある。これから一年間、月一回それが届くようにするから。」と意味不明な内容が書かれていた。
悪戯かと思ったけど、呪文とか占いとか、そう言うものが好きだったアイツなら、やりかねないなと思えた。
封筒の中には、もう一枚何か魔法陣のような物が書かれた紙が入っていて、ソレを枕の下に挟んで寝ると、異世界に行けるんだとか、そんなようなことが書かれていた。そう言えば、錬金術だか魔法だかの本もあいつは好んで読んでいたっけ。
あいつが居なくなって生きる気力もなくなっていたから、丁度いい、暇つぶしだ。それに、異世界に転生したら、あいつに会えるかもしれないし。
そう思って、試してみた。結局、異世界には行けなかった。
枕の下に挟んだ紙を捨ててしまおうかと考えたけど、どうしても捨てられなくて、手帳に挟んでおくことにした。
次の月の月命日に、やはり同じように封筒が届いた。
「どうだった?異世界行けたか?って、この二通目を読んでる時点で、一つ目はうまくいかなかったんだな?俺も試したけど駄目だったんだ。じゃぁ次な?」
まるであいつが隣にいて、喋っているような文面。目頭が熱くなる。アイツともっと、こういう話をしたかった。会いたいよ。
次のおまじないは、寝る前に呪文を唱えるというものだった。カタカナで書かれた聞きなれない呪文を紙を見ながら読み上げるだけ。そして眠りにつくと、翌朝異世界に移動しているんだとか。
結局これも、効果は無かった。
毎月届く異世界転生をするための呪文やら護符を試していくうちに、もしかするとあいつは俺を呼んでいるんじゃないかなんて、そんな考えが頭を過っていた。俺ははなから、お前のところに行けたらいいなって思ってた。だからこの呪文たちが、どれでもいいから成功してくれることを祈る。
次の月も次の月も、月命日に届くおまじない。
でもそのどれを試しても、結局翌朝には、いつもと同じ風景が見えるんだ。
そして最後の月、あいつの本当の命日に、最後の呪文が届いた。
昼間に届いたそれを、俺は迷わず試した。もう一年も同じように繰り返しているんだ。そろそろ成果が欲しい。
今までの素人が書いた手書きの物と比べると、神社とかでもらえるような御朱印とかそう言うなんだかありがたい、効果のありそうな紙が入っていて、明らかにあいつが書いたものじゃないとわかったけど、そんなことはもうどうでも良かった。とにかくそれを枕の下に挟んで俺は目を閉じた。
目を覚ますと、俺の目の前に笑顔のあいつがいた。
「お、来た来た。やっぱ最後の奴が一番信憑性あったなぁ!時間ないから手短に言うぞ?お前に、俺からのミッション。これからこういうおまじない、全部試して、どれが効果があったか、俺に土産話聞かせろ!以上!じゃぁな!」
もう一度目を覚ますと、代わり映えのない、俺の部屋に転生していた。
勝手な事ばっかり言いやがって。俺にも喋らせろよ・・・ばか。
——呪文の紙は枕の下からなくなっていた——
あいつの本、もらってこようかな。




