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「赤い髪のメイドと猫王子」(セーラー服と雪女 第17巻)  作者: サナダムシオ


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⑧ 反地球の危機

「実は彼の…ケクロプスの故郷は、この地球ではないのです。」

「えっ!?」ケクロプスが思わず声を出す。


「今から22000年ほど前に、彼が脱出した星は…太陽に対して、常に地球と正反対の位置で、同じ軌道上を公転している、言わば❝反地球❞…つまりカウンターアースだったのです。」


 雪村の説明は続く。

「カウンターアースは、我々の地球にソックリな惑星です。そして、地球からの見た目上、常に太陽の向こう側に有るため、地上からは見ることが出来ませんでした。それは太古の昔から存在が囁かれていたモノですが、我々の住む現代…西暦1990年代には、存在が否定されつつあります。」


「…そうよね。」

 最近、サン・ジェルマンの影響で、少し宇宙の勉強をしている、京子が相槌を打つ。


「つまり、ソレは、カウンターアースが、過去の歴史上の何処かで、消えてしまったことを意味します。」

「…なるほど。」コレは由理子の声。


「ケクロプスが体験した隕石の襲来は、その可能性の一つ。その他の原因も有り得ますが、少なくとも、僕の観測可能な全ての世界線で、カウンターアースは、22000年前に消滅しています。」

「…そう…なのか。」ケクロプスのため息。


「そんな訳で、取り敢えず我々の地球は安全です。ただ、彼の…ケクロプスの帰る場所は…取り戻せません。」

「なんで?」お気楽な感じで由理子が尋ねる。


「もしも、そんな事をしてご覧なさい。また4次元やら5次元やらの上位の存在から、色々と干渉されて、厄介な事になるわよ。」

 代わりに京子が答えた。


「…ただ、たった一つのカウンターアースだけなら、崩壊させずにコッソリ残せる、裏ワザが有ります。そしてソレは、僕にしか出来ない事です。」


「ソレは何だ?どんな手段でもいい!やってくれ!」

 ケクロプスが叫んだ。

 それは悲痛な叫びだった。

 それはそうだろう。

 自らの故郷が救えるかどうかの瀬戸際なのだ。


「この太陽系から、カウンターアースが失われる運命は変えずに、ソレを存続させる方法かあ…って、まさか!?」

 流石、日頃から、文明レベルが高いと自負しているミケーネが、ナニやら思い至ったようだった。


「…ソレは、僕にきっと出来る事ですが、なにぶん、初めての試みなので、もしもの場合の保障は有りません。本当にそれでもやりますか?」

 雪村が、後々誤解を生まないよう、少々クドいくらい、一言一句ハッキリと、ケクロプスに確認した。


「…頼む。やってくれ。」

「…承知しました。」

 息づまる問答が終わった。


「では出来るだけ、この時空の歴史に変動を与えないようにするため、カウンターアースから、全ての住民が避難し終わった直後に、ソレを行います。」

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