⑦ 彼なら出来る
「でも、無数に有る並行宇宙を、全てチェックすることなんて不可能よね?」
京子が当たり前のことを言う。
「ところが、ここにソレに近いことが出来る人が居るわ。」
由理子が雪村を指さす。
「ああ、少なくとも、人類が地球の覇者で、雪子さんの同位体が居る世界線は、全てチェック可能だよ。精神波を飛ばして全ての雪子さんに指示することができるんだ。ただ一旦、テレビ塔に戻らないと無理かな…。」
雪村はそう言った。
「わかった。私がもう一度、キミたちを送り届けよう。その後で猫族の時間軸を調べてみよう。」
ミケーネが言った。
「犬族、鳥族には、超時空ホットラインを使って、私から連絡を取ってみようと思う。」
そちらはナーガ王が引き受けた。
それぞれが役割を分担すると、皆ただちに行動に移った。
ケクロプスはミケーネ王のサポートに回って細かい情報の交換をした。
しばらくたった後、ミケーネに送られて再び雪村が戻って来た。
行く時には、余裕タップリの表情だった彼の顔色が、あまりに冴えないので、心配してナーガ王が声をかけた。
「確か…雪村君だったな。どうした?浮かない顔をして…。」
「ナーガ王。…それが…。」
雪村がナーガ王に近付いて、小声で耳打ちする。
ソレを聞いたナーガ王も「何と!?」と言ったきり黙りこくってしまった。
「どうかしたんですか?」
そばに居たケプクロスが気にしている。
「コレは、もう一度皆さんに集合してもらって説明しなくては、ですね?」
「はい。ぜひそうしていただきたいです。」
そんなナーガ王と雪村のやり取りの後、当初のメンバーが城の一室に集められた。
いつも余裕タップリの雪村が、珍しく深刻そうな顔をしているので、皆は直ぐに只事では無いと気づいた。
特に昭和…いや元昭和の時間軸組は長い付き合いだからよく分かった。
雪村は、そこに集まった一人一人の顔をよく見て…特にケクロプスの顔をしっかり見つめて、話を切り出した。
「今日皆さんに集まっていただいたのは、他でもありません。調査を進める中で、重大な事実が発覚したからです。念のため、ミケーネさんの宇宙船兼タイムマシンをお借りして、確認をしたので間違いありません。」
「どうしたの。一体、何だっていうの?」
京子が尋ねた。
「…それは重大な勘違いでした。」
構わず雪村は話し続ける。




