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「赤い髪のメイドと猫王子」(セーラー服と雪女 第17巻)  作者: サナダムシオ


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⑥ 伝説の続き

「しかしその隕石の襲来を、異世界から来た神の子の子孫が打ち破る、と言うのが伝説の続きなのです。」

 ナーガ王がそう言うと、目の前の宇宙トカゲが驚いた表情をした。

 由理子はそれを見逃さなかった。


「アナタの世界線では、隕石衝突の回避に失敗したのね?」

「そうだ。」

 そこで初めて宇宙トカゲが口を開いて言葉を発した。

 それはなんとヘブライ語だった。


 ヘブライ語って、もしかして並行宇宙の共通言語なのかしら?

 バベルの塔の崩壊前は、世界中が皆同じ言語を使っていたらしいし…。

 そんなことをふと考える由理子だった。


「私の名はケクロプス。例え心の奥底でも、キサマのような下等な生き物に、宇宙トカゲなどと思われるのは心外だな。」

「あら、ごめんなさい。でもそんな下等生物に、アナタは❝生殺与奪の権❞を握られているのよ?」

 由理子は少しイラっとして皮肉を言ってしまった。


「そもそもアナタが、最初からこの方たちに、素直に話をしないからいけないのよ。反省なさい。」

 由理子が畳み掛けるように言う。


「悪かったよ。こちらも色々と急なことで混乱していたのだ。だが、今はなら冷静な判断ができる。」

 ケクロプスはそう言った。


「私はわが故郷を脱出する時に、確かに隕石群が降り注ぎ、惑星が崩壊するのを見た。だが、外宇宙へ出てから浦島効果を使って、2万年後の太陽系を確認しに来た時には、何故かこの惑星が無事に存在していたのだ。そして、ここに来る途中で、船の調子が悪くなったこともあって、取り敢えず、自分の城があった元の座標に不時着したのだ。」

 彼は堰を切ったように喋り出した。


「…だそうですよ?」

 由理子はナーガ王の方を見た。

「事情は分かった。拘束を解こう。」

 彼はそう言うと、腰のベルトの左側に着けた装置を、ナニやらいじっていた。


 やがて、それまでケクロプスの周りに在った、大きな透明な立方体が、消えてしまった。

 やはりアレはガラスなどではなく、何かしらの電磁的な防壁だったようだ。

「ありがとう。お陰で敵対勢力紛いの、誤解が解けたようだ。」

 ケクロプスは言った。


「どういたしまして。」

 なあんだ。ちゃんと礼儀正しく出来るヒトじゃないの。由理子はそう思った。


「次に我々の取るべき行動は…」

 ナーガ王が口を開く。

「…取り敢えず、それぞれの時間軸に戻って、紀元前2万年に異常が無いか、確認ですね?」


挿絵(By みてみん)



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