⑤ 驚愕の証言
「その人物は、我が城の中庭に不時着した、船の中に居たのだよ。」
ナーガ王が言った。
「我々は、船内で意識を失っていた彼をただちに保護して、検査及び治療などを済ませた後、事情を訊くことにしたのだ。」
「しかし、我々の持つ、翻訳機のリストにある、どの言葉も通じないようだった。そこで、テレパシーによる尋問…いや質問を試みたのだ。」
「同じ爬虫類族に見えるせいか、テレパシーの利用は、途中まで有効だった。たが話が核心に触れたとたん、彼が心を閉ざしてしまったんだ。」
「すっかり困り果てていた時、ふと、鰐王セベクから聞いたキミの話を思い出してな…どんな種族の生物とも心を通わせることが出来る…それは或る意味、テレパシーより高度なチカラだと…。」
「…いやあ、そんな大層なモノでは。」
謙遜する由理子。
「早速で申し訳無いが、彼の心の中は、キミに見えているのだろうか?」
正直に言うと、由理子には、目の前の彼の心が、最初から全て丸見え…と言うか丸聞こえだった。
ただその内容が内容だけに、気軽に皆に知らせて良いモノかどうか、いささか躊躇していたのだった。
ニワカには信じ難い、ヤバい話だが、伝えない訳にはいかないだろう。
彼女は覚悟を決めた。
「アナタは躊躇っているようだけど、言わないことには状況は変わらないわ。このままでは、アナタはそこから出して貰えない。だから私から、ここに居る皆に説明します。いいわね?」
本人の名誉を尊重し、彼女は囚われの彼にそう声をかけた。
しかし当の彼からは、激しく混乱するばかりで、肯定の意思も否定の意思も伝わって来なかったので、彼女は説明を進めることにした。
「では、私が彼の心の中から読み取れたことを、今から皆さんに説明します。」
皆、固唾を飲んで、彼女の次の言葉を待った。
「彼は今から2万年程前の地球を脱出して来ました。」
彼女は話し始めた。
「そしてしばらくの間、宇宙を旅していたのだそうです。」
「脱出した理由は何だ?」
ミケーネが訊いた。
「隕石群の襲来だそうです。」
「なに!?」
ナーガ王が思わず声を上げた。
「何か、思い当たることでも?」
由理子が尋ねる。
彼女の前ではウソや誤魔化しは無意味だ。
「いや、確かに神の子が地上に現れる2万年前に、我々の世界に、空から沢山の大きな石が振りそそいだ、と言う言い伝えはある。」
「アナタの世界では、やっぱり神はトカゲの姿をしているのよね?」
何となくそんな質問をしてしまう京子。
「無論、そうだ。他にどんな可能性が或ると?」
「…いえ、何でも無いわ。気にしないで。」




