㉛ 兄姉妹が勢揃い
兄にも妹にも秘密にしていたチカラが、確かに香子には有った。
逆に言うと、そのチカラ故に、彼女は家から一歩も出ずに、外界の様々な情報を、得ることが可能だったのである。
そのチカラとは…。
「…植物を操るチカラよ。」
「…は?」
由理子も鷹志も、一瞬理解出来ないようだった。
「私が利用出来るのは、あらゆる植物の根、茎、葉、花、実。あ、キノコはダメよ。アレは菌類だから…。」
「一体どういう…?」コレは鷹志。
「チカラを発揮するために、もちろん理想的な環境は、森林の中だけど、街中でも何とかなるのよ。」
「…?」まだ皆ピンと来ない。
「切り花でも、鉢植えでも、オシャレなインテリアとしての観葉植物でもイイのよ。ただそこに植物が存在してさえいれば…。」
由理子と鷹志はまだ理解不能だ。
「私はね…あらゆる植物を介して、そこら中の情報を集めることができのよ。色々な場所にある植物が、一種の中継機となって、私に情報を送ってくれるの。そして私は、安楽椅子探偵よろしく、その情報を分析して、状況を理解するのよ。」
「ええっ!?」
由理子はショックだった。何故なら、このカフェの花瓶のバラや、部屋の片隅の観葉植物のお世話をしていたのは、自分だったからだ。
「まあ、言うなれば、合法的な盗聴よね?」
「いや、そんなワード有りませんて!」
由理子と鷹志は、同時にツッコミを入れた。
それにかまわず、香子は話し続ける。
「後、植物に物理的に助けてもらう事もできるのよ?」
「ほう?」コレはサン・ジェルマン。
「蔓や根を伸ばして相手を縛りつけたり、特大のウツボカズラで、死体を消したりね?」
「えっ?」コレは雪子。
「なによ。冗談に決まってるでしょ?」
そう言う香子の笑顔が、シャレにならない感じだ。
「…じゃあ、そのリュックの中身は?」
由理子の問いに、笑顔のまま、香子が答える。
「さあ、何だと思う?」
「…いや、分からないなあ。」
少し震えながら、鷹志がかろうじて、そう言った。
「ねえ、生首一つ分のウツボカズラに、ちょうど良いサイズだと思わない?」
薄ら笑いを浮かべながら、そんな事を言う香子。
「ひいいっ」と鷹志。
「ウソに決まってるでしょ!何度も同じ手にひっかからないの!ホントは午前中に、金城埠頭でやってたコミケで買った、BL本が大量に入っているだけよ。」
「ひいいっ」と別の意味を込めて鷹志。
そう。彼女はソッチ側の腐女子だったのだ。
「アナタ色白のイケメンで細身で、BL本のモデルにピッタリよね?もちろん"攻め"じゃなくて"受け"ね?」
「だからさっきあんなに…。」
由理子がナニか言いかけて、やめた。こんなことは、とても珍しいのだ。
「まあ、まあ、香子さん、冗談はそれくらいにして。」
見かねたサン・ジェルマンが助け船を出した。
「そんな訳だから、今後は、仕事に影響が出ない範囲内で、サン・ジェルマン伯爵のチームに参加するから、よろしくね?もちろん、報酬無しのボランティアで。公務員は副業禁止だから。」
香子はそう皆に宣言して、満足そうに、ティーカップのお茶を飲んだ。
「期待していいのよね?」と雪子。
「もちろん。」クドいな、という感じの香子。
「まあ、人手は多い方が、何かとイイでしょう?」
サン・ジェルマンはそう言った。
「因みに、ここに不在のメンバーは、真田雪村くん、村田京子くん、酒井弓子くんの3名ですよ。」
「了解です。」と香子。
こうしてついに、真田兄姉妹が漏れ無く全て、時空調査が名目の、サン・ジェルマンのチームのメンバーとして、勢揃いしたのだった。
最後の1名の合流の仕方が、まるでNHKの人形劇でやっていた"新八犬伝の犬江親兵衛"のように唐突感があったのは、ご愛敬だ。
果たして、このチームでどんな冒険に立ち向かうのか。
それはまた、別の話なのである。
以上で第17巻は完結です。
第18巻を待つ間に、"真説 竹取物語 第零章〜第二章"を読んでいただくと、より面白くなる構造にしました。
是非どうぞ(>ω<)




