㉚ 彼女のチカラ
「彼女は私がお招きしたのです。」
急な来客に対して、すっかりポカンとしている三人に向かって、サン・ジェルマンがそう言った。
そうなのだ。
基本的にこの亜空間レストランは、専用のキーを持った者か、彼が招いた者しか、入れないことになっているのだ。最近は特殊能力者たちが、連続して押しかけて来ていたから、すっかり忘れていた。
「初めまして。サン・ジェルマン伯爵。私が真田香子です。本日はお招きありがとうございます。」
「こんにちは、香子さん。こちらは妹さんと、雪子さん…は面識が有るのかな?」
「ええ、まあ、一応…。」香子は目を逸らす。
「あと、こちらは…。」
「杉浦鷹志です。妹さんとお付き合いさせていただいております。今後とも、どうぞよろしくお願い致します。」鷹志はすっかり固くなっていた。
「…そう。あなたが?」
香子はそう言うと、鷹志を頭のてっぺんからつま先まで、舐め回すように見た。
「さあ、立ち話もなんですから、コチラに座って、まずはゆっくり寛いでください。」
サン・ジェルマンにそう言われて、香子は座席についた。重そうなリュックは、隣の座席を近づけて置いた。
「でも、お姉ちゃん、珍しいよね。私たちに誘われても、仕事以外では、なかなか外出しないのに…。」
由理子はいつも正直に、皆が訊きにくいことを平気で言うのだった。
「ああ、それ?まあ、ぶっちゃけ私も、サン・ジェルマン伯爵のファンなのよ。もしも、実在するなら逢いたいって、ずっと思ってたの。」
「…そうなんだあ。」由理子は何故か残念そう。
「実は私、しばらく前から、彼女と連絡を取り合っていたのですよ。」
サン・ジェルマンからの突然のカミングアウトに、皆、あっけにとられた。
「…最初に電話がかかって来た時は、手の込んだイタズラかと思ったのよ。だってこの人、日本語ペラペラでしょ?」
「あ、ああ…。」皆そう言うのがやっとだった。
「でも話に出て来る、由理子や雪村のエピソードは正確だし、本人しか知り得ないような事を言うから、一応信じることにしたわ。ただ例えドッキリでもいいように、心の準備と武器の準備をして、今日ここに来たのよ。」
「なるほど。」鷹志がそう言って頷いた。
何だかヘンな空気になった。
「たがらそんな、戦闘モードでいらっしゃったんですね?」
サンジェルマンがそう言うと、香子はガラにも無く、少女のようにモジモジした。
「失礼しました。」
顔を赤らめる香子。サン・ジェルマンに何か言われる度に、少女のような反応を見せる。本当に彼のファンなのだ。
「いいんですよ。ちょうど他の皆さんにも、アナタのチカラを披露できそうですし…。」
「香子の…チカラ!?」
由理子と鷹志が、仲良くユニゾンでそう言った。




