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「赤い髪のメイドと猫王子」(セーラー服と雪女 第17巻)  作者: サナダムシオ


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3/9

③ 依頼の承諾

「…ただ彼が、精神を閉ざす前に、気になることを心の中に思い描いたのだ。」

 ナーガ王が話を続ける。

「なあに?」


「…地球文明の崩壊。」

「えっ!?」

 由理子ミケーネも同時に聞き返した。


「だから我々は、何が何でも、彼の胸の内の記憶を、引き出さなければならない。この星の危機に関わることならば、余計にな!」

 それまで冷静に語っていた彼だったが、言葉の最後で、初めて感情を露わにした。


「…大体分かったわ。良いわよ。爬虫人類の世界に行きましょう。」

「おい、おい、ユリコ。正気か?」

 慌ててミケーネが止める。


「でもその前に、私の雇い主であるサン・ジェルマンに許可を貰って、鷹志さんに行ってきますのキスをして、兄の真田雪村に連絡をさせてちょうだい。」


「いいとも!本当に来てくれるのなら、それでいい。」

 ナーガ王はとても安堵したようだった。


 そして彼女は宣言通り、階下からサン・ジェルマンと杉浦鷹志を呼び出し、それぞれ許可を貰い、キスをした。 


 鷹志はとても心配そうだったが、サン・ジェルマンは全て予定通りのような顔をしていた。

 まったく、異世界の歴史まで、全て御見通しなのだろうか?底知れないオジサンだわ。由理子はそう思った。


 さらにその後、彼女は腕のマルチデバイスの、通話機能を使って、雪村を呼び出した。

 すると、電話を切るや否や、彼は店内に瞬間移動して来た。 


「やあ、ユッコ。久しぶり。元気だった?それに鷹志くんに、サン・ジェルマンさんに…カワイイ猫ちゃんに…蜥蜴男?」

「ああ、そちらが、さっき電話で説明した、猫族のミケーネ王子と爬虫類族のナーガ王よ。」


「ああ、これは失礼しました。僕は真田雪村。由理子の兄です。どうぞ宜しく!」

 そう言いながら、彼はフランクにも猫王子と蜥蜴王に握手を求めた。


「…随分と怖い物知らずな兄上なんですな?」

 ナーガ王が不思議そうに言う。 


「実は今日まで、彼は色々と特殊な経験を積んで来ていまして…それに三次元世界で、チカラを完全解放した彼に敵う存在は…恐らく皆無なんですよ?」

 そう捕捉説明したのはサン・ジェルマンだった。


「ほう。それはまた、聞き捨てならないなあ。是非一度お手合わせを…おっとイケナイ。つい、昔のクセが…。」

 ナーガ王は一人でノリツッコミをしていた。


 それには構わず、サン・ジェルマンは話し続ける。

「…ですから、彼女の人選は正しいのです。それはこのサン・ジェルマンが保障致します。」

 

「伝説の、サンジェルマンの名に賭けて、か。まぁ良いでしょう。彼女がお共を何人連れていても構いません。来てくれさえすれば。」


「じゃあ、決まりね?お兄ちゃん、早速出かける支度をしましょう!」

 二人は準備のために一旦エレベーターで降りて行った。


 しかし直ぐに用意が済んだらしく、戻って来た。

 ただエレベーターから降りて来た時には、三人になっていた。


 もう一人は村田京子だった。

「今、下で聞いたんだけど、なかなか楽しそうなお話ね。私も一枚噛んで良いかしら?」


 彼女はサン・ジェルマンに尋ねていたのだった。

「ええ、良いですとも。たまには大好きな雪村君とのデートを楽しんで下さい。前回の騒ぎの時は、すっかり蚊帳の外でしたものね。」


 彼は太っ腹にもそう行った。

「度量の大きな旦那様で助かるわあ。」

 今日も黄色いワンピースを着た彼女は、そう言いながらとても嬉しそうだった。


 いや、否定せぇへんのか〜い!と由理子は心の中でツッコミを入れた。

 テレパシーで、ソレが筒抜けなミケーネとナーガは、顔を見合わせて苦笑したのだった。


挿絵(By みてみん)

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