㉗ 真田香子
「何かヘンな話ししちゃった。ゴメンね?」
と雪子。
「いえ、いえ。お姉様のお話しならば、何でも聞いてみたいです。もっと色々知りたいです。」
と由理子。
「…由理子さんは、イイ子よねえ。」
「えへへ。よく言われます。私、人たらし…ううん、動物たらしなんです。」
「多分それは、アナタがいつも素直で、ウソを感じさせないからよ。きっと。」
二人でそんな事を話している間に、ケツァルコアトルスは、ピラミッドの前のビートルの所まで、連れて来てくれた。
ジェントルに着陸して翼を畳んだ怪鳥に、由理子は別れの挨拶をした。
「今日は本当にありがとう。また、何か困っことがあったら、いつでも相談に乗るわね。」
由理子に嘴をナデナデされた怪鳥は、一声「キャウ!」と言った後、静かに翼を広げて、ゆっくりと離陸して帰って行った。
「ねえ、2万年も時空が離れてるのに、どうやって連絡を取るの?」
雪子が当然の疑問を口にした。
「お姉様、知らないんですか?ケツァルコアトルスは、基本的に長寿命なんです。それに大切な記憶は、代々受け継がれるんですよ。」
「へええ、初耳だわ。知らなかった。確か"鳥頭"って、三歩進むと記憶を無くす、忘れっぽい人の例えじゃなかったかしら?」
「もう、ホントなんですからね!」
「うん、アナタが言うなら、きっとそうなのね。信じるわ。」
そう言いながら、雪子はビートルのドアを開けて乗り込んだ。
「さあ、アナタも乗って!」
言われて、由理子も助手席に乗って、この時空を後にした。
「…話は変わるけど、私、最近とても気になっている人物がいるのよ。」
時空転移中のビートルの車内で、雪子がまた話し始めた。
何だか、今日のお姉様は、いつになく饒舌だわ。
由理子は不思議に思った。
「誰なんです?好きな殿方でも居るんですか?」
「そうじゃなくて…アナタの姉というか、雪村のもう一人の妹というか…。」
「ああ、真田香子のことですね?」
「そう、そう。もう長いことアナタたちに関わっているけど、小学生のころ見かけて以来、存在感を全く感じないのは、一体どうしてなのかしら?」
「私たち、兄姉妹は全員、血液型がAB型なんです。」
「…だから?」
「ですから、幼少期からずっと、通常の兄弟姉妹より、お互い干渉し合わないのです。お互い出来るだけ深く関わらず、好き勝手ヤッているのです…お姉様の時空では、違うんですか?」
「…ああ、多分私のチカラが強すぎて、半ば強引に、香子と由理子を引っ張り回しているのかも…そうか、本当は自由が好きなんだ。ちょっと反省しなくちゃだわ。」
「…まあ、そんな訳で、割とお互い、音信不通になることも珍しくはないんですけど…姉の香子は、その中でも、筋金入りの自由人なのです。」
「…そうなんだ。この時空の雪村やアナタが、素敵なチカラを持っているから、香子も、もしかしたらと思ったんだけど…。」
「どうでしょう?今は確か、豊橋市で小学校の教師をしているらしいんですけど…何しろ実家を出てからというもの、最近の詳しい動向が分からないので…それに…。」
「…それに、何?」
「いえ、何でもないです。」
「ふ〜ん?」
彼女はそもそも昔から雪子に対して、イイ印象を持って無かったなんて、口が裂けても言えないわ。
由理子はそう思った。
多分、姉の香子は、私や雪村兄さんが、雪子さんのために度々出かけるのを、面白くないと感じていたに違いないんだわ。だからずっと、無視するような態度をとっていたのよ、きっと。




