㉖ 雪子の独白
「私ね…。」
シュメールの城からの帰り道、雪子が、怪鳥の背に跨りながら、前にいる由理子に声をかける。
「…最近、よく考えるようになったの。"命"とは何なのかって。」
「えっ?」
彼女の唐突な話題に、由理子は少し驚いた。
「前にも話したと思うけど、私、初めの内は、"自分探しの旅"という、とても個人的な目的で、並行宇宙を渡り歩いていたの。」
「はあ…。」
「だから基本的には、自分の同位体が居る所に、精神を飛ばして、その肉体を借りて、観測するだけだったの。」
「そうらしいですね…。」
「もちろん、その旅で各同位体から得た、知識やスキルやその他のチカラを吸収して、自分のモノにすることも忘れなかったわ。」
「さすが…。」
「そんなことを、タダがむしゃらに続けていた或る日、大人のサン・ジェルマンに出会って、言われたの。」
「…なんて?」
「その活動の行き着く先には、何があるのですか?って。実は元の、真田雪村になろうとしているのではないですか?ってね。彼は雪村の正体、そして私の正体に、いち早く気づいていたのよ。」
「ああ…。」
「私は無意識に、私こと、雪村の欠片を、必死にかき集めていたのよ。まるで、命の形を取り戻そうとするように。」
「そうなんだ…。」
「でも、例えこの私が、元の雪村の100万分の1の欠片だとしても、一個の立派な生命として、成立しているのよね。」
「…そうですよね。」
「そのうちに、私は17歳で不老不死になった。並行宇宙で雪村に物理的に接触した影響で、この昭和だった時間軸で、物理的な活動も可能になった。だからこそ、アナタとも一緒に、こうして自由に行動も出来る。」
「…有り難いことです。」
「最近では、過去のサン・ジェルマンと関係を持ったり、大幅に違う世界線の異種族に出会ったり…ついにはカウンターアースの住人にも、出会うことになった。」
「…大変でしたね。」
「だから、私以外のたくさんの命の存在にも、気を配るようになった。皆を守りたいって思うようになった。でも思うの。こんなにも、多種多様な生命の生き様が、全て"四次元世界の影"に過ぎないなんて、あんまりよね?」
「…えっ?」
「四次元人たちときたら、私たちが少しでも、歴史を変えようとすると、目くじらを立てるクセに…彼等自身はというと、その気まぐれな振る舞い一つで、私たち三次元の生命全ての、運命に影響を与えるのよ。コレが…この理不尽が…我慢出来るかしら?」
「それは…イヤですね。」
「…コレは四次元人から聞いた話よ。私はすっかり考え込んでしまったわ。だから今の私の目標はね…。」
「…うん、うん。」
「…四次元人の影響下からの、三次元の生命の独立よ。」
「ええっ!?」
「たぶん、アインシュタインは無理だって言うでしょうね。でも、ニコラ・テスラなら、どうかしら?そしてサン・ジェルマンなら?雪村なら?アヌンナキなら?様々な出会いを通じて、色々な能力者を見つけた私は、今、希望を感じているのよ。」
そう言うと、雪子は不敵な笑顔を見せるのだった。




