㉔ 下僕のチカラ
「…それにしても。」
天王アンは言う。
「…そのサン・ジェルマンの下僕とか言う人物とは、どんな化け物かね?生身の単身で、惑星まるまる一つを、別の星系に瞬間移動させるなどと…ニワカには信じられない所業だ。」
「天下のアヌンナキの長から見ても、やっぱりそう思うのね。光栄なことだわ。」
「もちろん、我々も同じ事をしようと計画した。ただし、惑星を取り囲む、専用のマシンを起動させるためには、我々の誇る高水準の科学技術を持ってしても、膨大なエネルギーが必要で、計画は頓挫したことを付け加えておこう。」
「そうなのよねえ。チートにも程があるって言うか…やっぱりどう考えも、異常なチカラよねえ。因みに私自身は、彼の細胞のほんの一部が、変異した物なのよ。」
「ほう、それは興味深い。」
「はい!王様。」
「何かな?赤い髪の…由理子だったか?」
「私、その現場に居ました。彼…実は私の兄なんですけど…直接話も聞きました。エネルギーじゃなくて、イメージのモンダイなんだって言ってました。」
「それは…。」
「一番大事なのは、自分がそれをヤッているところを具体的に想像出来るかどうか。なんだって。」
「そんな…それじゃあまるで…魔法だ。」
「まさかアヌンナキのトップの、天王アンの口から、そのワードが出るとは思わなかったわ。」
雪子はちょっと嬉しそうだった。
「ところで今後、アナタたちがこの地を去った後、私がエジプトのキャップストーンを移動させても、怒ったりしないわよね?」
「ああ、別に構わないが、ポータルの制御は難しくなるぞ。」
「ピンポイントで搾取のために、他の並行宇宙から狙い撃ちされるより、まだマシだわ。」
「まあ、せいぜい気をつけることだ。爬虫類族のやり口は、ジェントルとは言い難い部分もあるからな。」
「は〜い。爬虫類族と鳥族って仲悪いの?」
横から手を上げて、また訊きにくいことを、由理子が平気で質問した。
「…どちらがより進化した存在であるのか…つまりどちらがより上位の存在であるのかについては、よく論争になったりしているよ…下らない事だ。」
「犬族と猫族は?」
「ヤツらはそもそも、最も後発のエジプト介入者たちだから、大人しいものだよ。もともと種族としても、好戦的では無いようだしな。」
「へえ。じゃあ、鳥族や爬虫類族の方が、喧嘩っぱやいのね?」
「まあ、そう言うな。確かに、縄張り意識は強いがな。」
「色々教えてくれてありがとう。今日のところは、これで帰るわ。」
雪子はそろそろ話を切り上げることにした。
これ以上長居すると、由理子が次から次に、余計な事を言い出しかねない感じだった。
尋ねられる相手も、ウソがつけないから、気の毒だ。
それに城門の外に待たせている、ケツァルコアトルスの事も、そろそろ心配になっていたからだった。




