㉒ 彼女の奥の手
「じゃあ今度は、私の番ね。アナタも神ですものね。私のチカラを、正面から受け止める勇気と度量は、あるわよね?」
雪子はそう言うと、イシュタルの返答は待たずに、行動を開始した。まず剣を構える彼女の姿が、一瞬だけ見えなくなった。次に姿を現すと同時に、一人、二人、三人と、だんだん雪子の人数が増えて行った。
それはまるで、マンガNARUTOの中に出て来る、影分身の術のようだった。
イシュタルが気づいたころには、彼女と最初の雪子との間の距離10mを半径にした、直上まで含めた半球状の中で、無限とも思えるような人数の雪子たちに、すっかり取り囲まれていたのだった。
そして次の瞬間、全ての雪子が剣を振りかぶり、半球状の中心に居るイシュタルに向けて、それを振り下ろしたのである。
すると、半球状に取り囲んだ各々の剣から、火の玉が飛び出し、勢い良くイシュタルに向かって行ったのだ。
イシュタルは正々堂々と、迎え撃つ姿勢を取った。
先程と同様に、闘技場の中心が真っ赤に輝き、やがて光が収まって行った。
そこには、やはりイシュタルが無事に立っており、
不敵な笑みをたたえていたのだった。
しかしよく見ると、彼女もまた、衣装が焼け焦げてボロボロになっていた。
「クックックック…。」堪えきれずに、彼女が笑い出した。「アッハッハ…。」雪子もまた、声を出して笑い始めた。
「ああ、楽しかった。アナタのお陰で、日頃の退屈な政務の、ストレス解消になったわ。」とイシュタル。
「私も、周辺に迷惑がかからないように、普段はチカラをセーブしてるから、思い切りヤレて良かった。」と雪子も答えた。
「天王アン!」イシュタルが観客席に向かって叫ぶ。
「何だ?」
「私はこのニンゲンの娘の事を、私と同等の戦士として認めるわ。」
「…そうか。分かった。」
「ところで、引き分けの時はどうするのかしら?」
雪子とイシュタルがユニゾンで同じ事を言い、お互い顔を見合わせて、また二人で笑い出した。
「私たち、気が合いそうね?まるで本当の姉妹みたい…。」イシュタルがそう言うのを、雪子も否定出来なかった。ひょっとしてこの鳥女も、雪村の欠片の一つだったりして…。そんなことまで、つい考えてしまったのだった。
その時点をもって、決闘は終わりを告げ、二人は別室に案内された。
そこには服を着たまま、元通りに修復出来る装置が有り、二人とも焼け焦げた服を、すっかりキレイに復元してもらった。
「まさに、充分に発達した科学は、魔法と見分けがつかない、ってヤツですねえ。」
それを見た由理子が呟いたのだった。




