㉑ 接近戦に挑む
次に二人は、一気にお互いの距離を詰めた。
剣と剣の打ち合いからのツバぜり合い。
接近戦になっても、どちらも譲らない。
実力が拮抗しているように見えた。
「オリハルコンの剣は、基本的に、持った者のチカラを純度高く、最大限に引き出します。ですから二人の能力は、今のところ互角に見えますね。」
エンリルがまたアンに話しかける。
「だが、イシュタルはまだ、アレを出していないだろう?」とアンが答えた。
「たかがニンゲン相手に、あのワザを使うのは、流石に大人気無いと思っているのでは?」とエンリルが返した。
事実、イシュタルは最終奥義とも言える大ワザを、いまだ温存していた。
それは、雪子とて同じ事だった。
「あなた、まだ何か出し惜しみしてるわね?」
とイシュタル。
「それは…アナタも同じでしょ!」
雪子もそう言い返して、ツバぜり合いから後ろに飛び退った。
再び10m程離れて睨み合う二人。
「遠慮しなくてもイイのよ?」とイシュタル。
「アナタもね?」と雪子。
闘技場の端で、由理子は息を飲んで、そんな二人を見つめていた。「お姉様、とっても楽しそう…。」
そんな事を思っていた彼女が、ふと気がつくと、闘技場の上空が夜でもないのに、すっかり暗くなっていた。
その事には、雪子も気がついていた。
「とうとう仕掛ける気になったみたいね?」
彼女がイシュタルに声をかける。
「私に本気を出させたニンゲンは、アナタが初めてよ。光栄に思いなさい。」とイシュタル。
「…それは、どうも。」と雪子。
イシュタルは、右手に持ったオリハルコンの剣を、ゆっくりと、地面に対して垂直になるまで、振り上げた。
「コレを食らってまだ立っていたら、褒めてあげてもいいわよ?」
「あら、何を食らわせて下さるのかしら。楽しみね?」と不敵に笑う雪子。
すると上空で雷がゴロゴロと音を立て始めた。
その音は次第に近づいて来た。
そして…次の瞬間、雷鎚が避雷針よろしく、イシュタルの剣に落ちた!
彼女は動じる事なく、剣から自らの身体全体に帯電したまま、その姿勢を崩さない。そして…。
「さあ、行くわよ!」
彼女は左脚を一歩踏み出すと同時に、右手の剣を素早く下に振り降ろした。
雪子は、両手で剣を正眼に構えたまま、飛んで来る強大な電撃を待ち構え、そしてソレを、まともに正面から受け止めた。
一瞬、眩い光で辺りは真っ白になり、何も見えなくなった。それはまるで、あの宇宙戦艦ヤマトが、波動砲を発射した瞬間のようだった。しかし次第に光が収まると、そこには確かに、雪子がまだ、持ち応えて立っていた。
「ああ、気持ちイイ電気の刺激だったわ。ありがとう…お陰で肩や腰がほぐれた感じ…とは言うものの、服はすっかりボロボロね?」
そう言う彼女のセーラー服は、まるで、今火事の現場から出て来たばかりのように、あちこち焼け焦げていた。中身の身体が無事なのが、不思議な程だった。
「今のワザ、昔のアニメで見たことがあるわ。確かグレートマジンガーの…サンダーブレイクだっけ?」
「なに、ソレ?」
「ううん、いいの。気にしないで。コッチの話。」




