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「赤い髪のメイドと猫王子」(セーラー服と雪女 第17巻)  作者: サナダムシオ


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② 助太刀を名乗り出る

「それにしても、一体全体どうしたのよ?随分慌てて来たみたいだけど…。」

 由理子が当然の疑問を尋ねる。

「実はちょっとした話を小耳に挟んでな…。」

 ミケーネが語る。


「鰐王セベク以外の、何処かの爬虫類族の王が、どんな動物種族とも話せるニンゲンを、探していると言うんだ。なんでも何かの通訳にしたいと言うことだった。そして、どこからかキミの噂を聞きつけたらしい。」


「ああそれは、あの時スフィンクスの前で、皆と語り合ったのがまずかったのかもしれないわねえ。」

「連中のやり口は、毎度紳士的とは言えないモノだから、私が心配して飛んで来たという訳さ。」


「あら、ありがとう。優しいナイトさん。」

「ユリコはハダカ猿族としては、上等な方だからな。それに、この間の恩もあるし…。」


「それにしても、アナタたちって、易易と並行宇宙を越えて来るのね?」

「まあそこが、文明レベルの差かな。並行宇宙を旅するためには、キミたちの知らない、もう一つの座標が必要なのさ。」


「…それは、教えてくれたりしないのかしら?」

「ヤメといた方がイイかな。お互いの幸せのためにね。」

「あら、そう。残念ね。」


「何しろ、キミたちの世界には、あのサン・ジェルマンがいるしな。それにあの、ユキコとか言うメス猿も厄介そうだし…。」


「メス猿じゃなくて、ニンゲンね。ちゃんと覚えてよ。」

「ああ、コレは失礼した。何しろ長年言い続けて来たので…悪気は無いんだ。」


「でも、私を通訳に使いたいだなんて、一体相手は何者なのかしら?」

「さあな。それが分かれば、苦労は無いのだが…。」


「そもそもアナタたちって、テレパシーが使えるんでしょ?じゃあ、言葉なんて必要無いじゃない。」

「…細かいニュアンスを伝える必要があるなら、言葉を使うのだ。後は、よほど我々とかけ離れた生物と遭遇したとか…?」


「ふ〜ん。ヘブライ語が通じない相手なのね?」

「多分そうだ…なるほど、よくよく考えると、不審な点が多いな。」


「…そういうことだ。」

 その時、出し抜けに彼等二人の背後から、第三者の声がした。


 由理子が、慌ててそちらに顔を向けると、そこには、初めて見るタイプの爬虫人類が立って居た。

 綺羅びやかな身なりの、そのトカゲは口を開いた。

「ミケーネ王子、はじめまして。そちらはユリコ殿とお見受けするが…?」


「…そうよ。アナタはだあれ?」

「コレは失礼した。我が名はナーガ王。インダス川の畔の王国から来た。」


「…へえ。まさか王様が、わざわざお供も連れずに、直々に並行宇宙の時空を越えて、私を迎えに来たと言うの?」

「その通りだ。二人が話し合ってくれたお陰で、説明が省けて助かった。」


「どうしても、私を通訳にスカウトしたいのね?」

「そうだ。先日、我が国に、ちょっとした客人を迎えたのだが、どうにも話が噛み合わない。彼の見た目は、キミたちニンゲンと、我々爬虫人類の、中間のような姿をしているのだ…何とかチカラになってはくれまいか?」


「その口ぶりだと、途中までナニかを聞き出せたけど、その先がよく分からない…とか?」

「…なかなか鋭いな。流石は真田雪子の妹だ。ハッキリ言うと、彼は精神防壁を張れるようだ。その先は、我々には見せないつもりらしい。」


挿絵(By みてみん)

 


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