⑲ 力試しの提案
「どう思う?」雪子が由理子の意見を求める。
「一応、話の筋は遠ってますね。うさん臭いけど。」
由理子はそう答えた。
「ところであなた方、サン・ジェルマンについてご存じのようね?」
彼女が、その場に居る全員に聞こえるように、大声を張り上げてその名を口にした。
すると身長2m以上はあろうかという、7名の神々たちが、急にザワつき、慌て出したのだった。
「…おい、伝説の名を口にしたぞ。…何て恐れ多い事を…あの我々の災厄から逃れる手段を、教えてくれたという…彼女たちは本当に彼の下僕なのか?」
その様子を見た由理子は、ついクスクス笑ってしまった。皆さっきまであんなに威張ってたのに…でも猫王も爬虫類王も皆、ちゃんと約束を守ってくれたのね。手柄は全て、サン・ジェルマンの下僕が、やってくれたことになってるんだわ。これで雪村兄さんは、四次元人たちに目を付けられずに済みそうね。
雪子も同様に思ったようで、彼等の反応に満足気だった。
「しかし、ニワカには信じ難い話だ。貴様ら…いや貴殿たちがサン・ジェルマンの使いの者だと言うなら、何かしらの証拠を示して欲しいものだな。」
天王が言う。
「いいわよ。そういう事なら、この中の誰かと、勝負してあげるわ。何なら一度に全員を、お相手しましょうか?」
いつもながら好戦的な雪子が言った。
「あまり、思い上がるなよ?ニンゲン。お前の相手は、そこにいる戦争王イシュタルだ。勝負の条件は、互いに一振りのオリハルコンの剣を使った、デュエルだ。」
「いいわね。望むところよ。」
雪子は即答した。
「私が勝ったら、色々と言う事を聞いてもらうわよ。もし負けたら、この子と一緒に、あなた方の下僕になるわ。」
由理子は突然の巻き沿いを食らったが、雪子が負けるなんてコレっぽっちも思っていないので、全然平気だった。
「私もそれでイイで〜す。」と元気に同意した。
戦争王イシュタルは、エメラルドグリーンの羽毛が美しく輝く女神だった。
その場で彼女が立ち上がると、雪子たちを優雅に誘いながら言った。
「では、こちらへどうぞ。」
二人が彼女に着いて行くと、まるで古代ローマのコロッセオのような、立派な闘技場に案内された。
「まあ、素敵ね。私は戦士ではないけれど、こんな所でいつかはヤッてみたかったのよ。」
雪子が思わず呟いた。
「随分と余裕なのですね?」
イシュタルがジェントルな感じに話しかけてきた。
「あら、戦争王にしては、品の良い話し方をされるのね?さっきの天王とは大違い。」
雪子は少し意外に感じた。
「これでも私は、愛の女神も兼ねているのよ。だから、どんな異種生物に対しても寛大なの。でも…。」
「…もしも、逆鱗に触れるようなことをされたら、その限りではない…でしょ?」




