⑯ 混ざり合う遺伝子
「…アナタたちの故郷の名は、ニビルよね?そしてソレは、つい先日の隕石群により破壊された。」
「その通りだ。流石はニンゲンの神。何でもご存じという訳だな。」
「何でもは知らないわ。知っていることだけ。ああ、西尾維新センセイ、ごめんなさい。」
「?」
「気にしないで。ちょっと著作権が心配なだけ。因みに私たちは、貴方の故郷の事を、カウンターアースと呼んでいるわ。」
「じゃあ、我々アヌンナキが、ハダカ猿族の遺伝子に我々のモノを混ぜて、より賢いニンゲンを作った事も、当然知っているな?」
「そうね。ついでに言うと、その作りだしたニンゲンたちを、自分たちの為に使役する労働力として、利用している事もね。」
「…そうか。」
「だからニンゲンに、文明の開花をもたらしてくれた事実には、感謝しているわ。でもその動機には、リスペクト出来ないわね。」
「なるほど。ところで、そちらの赤い髪のお嬢さんはどなたかな?」
「彼女は、真田由理子。あらゆる種族と、心を感応させるチカラを持っているわ。そして特に、鳥族は得意よ。だから彼女の前では、ウソや誤魔化しは無意味なのよ。」
「良く分かった。キミたちをこれから、我々の指導者の元に案内しよう。」
「話が早くて助かるわ。流石は現時点での、オーバーロードと言ったところかしら?」
鳥男はその場で、美しい黄緑色の翼を広げると、チグリス川方面に向けて飛び出した。
ついて来れるものなら、ついて来い、という訳だ。
そこで雪子はまた、由理子を小脇に抱えて、長い、長い、三段跳びを続けるような形で、それを追って行く。
するとそれまで黙りこくって、何やら集中力を高めていた由理子が、顔を上げて口を開いた。
「お姉さま、もう大丈夫です。今、助けが来ます。」
彼女がそう言うと同時に、彼女たちの上空が急に暗くなった。
二人が見上げると、直上から次第に大きな影が迫って来ていた。ソレは、この時代の巨鳥、ケツァルコアトルスだった。
その巨鳥は、ポップ・ステップ・ジャンプで飛び上がった雪子の下に回り込むと、そのまま彼女たちを背中に乗せたのだ。
コレには、流石の鳥男も驚きを隠せないようだった。
そして、雪子に向けたのと同様の、畏怖の念のこもった眼差しで由理子のことを見るようになったのだ。まったく、現金なものである。
「どう?私のお友だちよ。素敵でしょ?」
「…大したものだな。そなたも神使いと言う訳か。」
もちろん、彼女のチカラを知っていた雪子も、少なからず驚いたが、 鳥男の方は目を白黒させながら、やっとのことで、それだけのセリフを口にしたのだった。




