⑫ 次回こそ猫の恩返し
一行を乗せたミケーネの船は、やがて並行宇宙の垣根を越えて、ニンゲンの世界線に到着した。
今回も、見つかって大騒ぎにならないように、名護屋市守山区志段味地域の、真田研究所のアプローチ前に出現したのだった。
「じゃあまたね、ミケーネ。」
由理子が、元気に別れの挨拶をする。
「今回は、運転手役ぐらいにしかならなかったから、また改めてお礼に来るよ。」
ミケーネが言う。
「まるで気の長い“猫の恩返し”ね?」
「?」
ジブリを知らないミケーネには、分からない例えだった。
もっとも、12年先の未来のアニメを、赤いビートルでコッソリ見に行く彼女も、どうかと思うのだが…。
「だってしょうが無いじゃない。ジブリって面白いから、ついつい新作を観たくなるんだから。」
彼女はいつも、そんな言い訳をするのである。
まったく、タイムマシンの無駄使いとはこのことである。
もっとも、劇団ヨーロッパの舞台劇、サマータイムマシンブルースよりはマシだが…。
そしてミケーネが船を垂直上昇させ、やがて消えて行くと、あらかじめ帰還する日時は決めてあったので、杉浦鷹志が、シルバーのビートルで迎えに来た。
「たまには普通にドライブして帰りますか?」
鷹志が言って、皆、賛成した。
そこで助手席に由理子、後部座席に雪村と京子が乗り込んで、久屋大通の名護屋テレビ塔へと出発したのだった。
「キャップストーンの件、気になるわ…。」
帰る道すがら、京子がポツリと呟いた。
「ケクロプスの船と、色や形が似すぎていた…。」
「紀元前2万年から1万年の間に、彼等の種族の誰かが、今回のように我々の世界線に迷い込んで、現地のニンゲンの生活に干渉した可能性は、否定出来ませんねえ。」
雪村がそう言って同意した。
「そして、避難した爬虫類族の一部が、我々の地球の並行宇宙にもやって来て、ナーガ王たちの祖先になった可能性も、大いに有りますね?」
と鷹志が付け加えた。
「更に、鳥族、犬族、猫族にも同じ事が起きていたとすれば…。」
雪村もその推論の延長を披露した。
「…皆、元を正せば、祖先はカウンターアース由来…有りうる話よね?」
京子もその説に同意した。
「だから、私たちニンゲンの世界線には、紀元前2万年の、隕石の言い伝えが無いのね?」
由理子もそれに思い当たった。
「それに彼等が、我々ニンゲンを差し置いて、単なる動物から、急激に霊長類並みの進化を遂げた理由も、明らかになる。何故なら彼等は、それぞれのカウンターアースで、独自に育ったのだから。」
最後に鷹志が、推論の行きつく先を述べたのだった。
「…だから皆、私たちよりちょっとだけ、文明レベルが高かったのね?」
そして由理子が、付け加えの感想を言った。




