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「赤い髪のメイドと猫王子」(セーラー服と雪女 第17巻)  作者: サナダムシオ


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⑩ 超人の証明

「散り散りバラバラになったお仲間を集めて、300光年先まで行っていただけたら、そこに❝アナタ方の地球❞が有るはずなのです。ウラシマ効果で2万年調整できるなら、300年くらい朝飯前の事ですよね?ああ、そうそう、万が一クレームが有る場合は、また300光年戻って来て言って下さいね?でも僕の寿命は、せいぜい残すところ60年。不老不死ではないので、その時にはもう、この世に居ませんけどね。」


 そんなジョークとも何とも言えない事を、笑顔で雪村は言った。そして…。

「何だかとても疲れました。ちょっと休憩させて下さい…。」

 そう言い終わるや否や、雪村は仰向けに倒れ込んだ。


 その気配をいち早く察したのであろう。

 京子が後ろからサッと彼を抱き留めて言った。

「よく頑張ったわね。流石、私の雪村よ。ゆっくりお休みなさい。」

 そして少し涙ぐみながら、そのまま雪村を抱きしめた。


 それきり暫くの間、皆、無言だった。

 雪村の成し遂げたことが荒唐無稽すぎて、誰もが俄かには信じられなかった。

 しかしミケーネの船には、高性能の望遠鏡が備えられていた。


 それを使ってすぐに、ミケーネは白鳥座を覗き、ケプラー1649Aの周りを公転する、青い惑星があることを確認したのだった。


「そんなバカな…ウソだろう?…ホントにやったんだ…。」

 そう言うミケーネの顔は、喜びや賞賛や驚きを越えて、一種の恐怖の色を見せていた。


「やっちゃうヒトなんですよねえ、ウチのお兄ちゃんは。」

 由理子が冗談めかして言うが、船内の空気は一向に和やかにはならない。


「彼は一体何者なのですか?」

 そこで初めてナーガ王が口を開いた。

「フェニックスのチカラを持つ男よ。」

 京子が答えた。


「伝説の鳥族の首長に、昔そんな存在が居たと聞いたことはあるが…彼はただのニンゲンだろう?」

 ミケーネも首を捻る。


「色々な体験を経て、彼はただのニンゲンではなくなったのです。」

 京子が言う。


「まあでも、一番大きな要因は、4次元人に憑依された経験かな。」

 由理子も補足する。


「皆さんが警戒したり恐れたりしている、真田雪子は彼の姉であり、彼を構成する精神体の、ほんの一部でもあるのです。彼から生まれたのが雪子であり、幼い頃から、彼を導き育てたのも雪子なのです。そしてその事実も、彼のパーソナリティの大事な部分なのです。」

 京子が言う。


「そこらへんは、少しややこしいのです。ニワトリが先か、タマゴが先か、に近い論争になります。」

 と由理子。


 やはりよく分からない、と言った表情のミケーネ、ナーガ王、ケクロプスであった。

 まあ、分かるわけがないのである。


「ああ、それから、もしも今回の事を、孫子の代まで語り伝えるなら、サン・ジェルマンの手柄、ということにしておいて下さい。雪村君が4次元人たちに目を着けられたら、面倒なことになるので。」

 最後にそう言って、京子が笑顔で話を締めくくった。


「そろそろこの宙域を離脱しますね。のんびりしていると、こっちが隕石にヤラれますから。」

 ミケーネにそう言われて、皆、我に返った。


「そうだな。帰るとしよう。」

 ナーガ王がそう言うのを潮時に、一行の船は元の爬虫類族の世界に帰ったのだった。

 

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