遭遇
「――いやー、ほんとありがとな逢糸! 来てくれとは言ったけど、まさかほんとに来てくれるとは正直思ってなかったわ。ほんと、すげえ嬉しかったしめっちゃ力になった」
「……そ、そう?」
それから、数時間後。
正午を少し過ぎた頃、帰り道にて晴れやかな笑顔でそう口にする瀬那くん。……そ、そう? そう言ってもらえるなら、来た甲斐があったというものだけれど。
……ところで、今更だけど僕が一緒に帰ってもいいのかな? 部員のどなたか、とでなく僕で。……まあ、瀬那くん自身が声をかけてくれたんだから、そこに関して僕がどうこう言うことじゃないんだろうけども。
「……ところで、今更だけどほんとにすごかったね、瀬那くん。特に、最初のホームランなんてぶわっと鳥肌が立ったくらいで」
「……そっか、ありがとな。まあ、確かにあれは自分でもめっちゃいい感触があったけどな!」
ともあれ、歩みを進めつつそう口にする。ずっと伝えたかったんだけど、何となくタイミングを計りかねていて。……いや、タイミングも何も、きっといつ言ってもいいんだろうけど。ともあれ、瀬那くんが嬉しそうで良かっ――
「「…………あ」」
刹那、ふと声が重なる。だけど、瀬那くんと……ではなく、前方からこちらの方向へと歩いている三人の内の真ん中の――
「――あれ、偶然だね逢糸くん!」
「……あ、その……はい、晴香さん」
すると、ほどなくパッと微笑みそう口にする清麗な女性。地元の大学に通う三年生、そして僕の家庭教師を務めてくれている真野晴香さんで。
「ん、この子と知り合いなの? 晴香」
「うん。結構前から家庭教師をしてるってことは言ったと思うけど、この子がその教え子なの」
「……へぇ、すっごく可愛い子だね。こんな子を教えられるんなら、私も家庭教師やろっかな」
「いやあんたは絶対ダメでしょ。変なこと教えてクビになるのがオチだって」
「うわ、ひっどい景子!」
「ああごめん、捕まるの間違いだった?」
「もっとひどいよ!!」
すると、僕らが知り合いであることを知り何やら愉しそうに会話を交わす二人の女性。歳も近そうだし、晴香さんのご友人なのだろう。大学、あるいはしていたらアルバイト先の……まあ、何でもいいんだけども。
「……ところで、その子は逢糸くんのお友達?」
「……あ、えっと、その……」
「――ええ、そうっすね。朝川瀬那――仰る通り、逢糸の親友っす」
すると、晴香さんの問いに答えたのは僕でなく瀬那くん。まあ、流れからすれば不自然じゃない。僕に問われているとは言え、話題に上がってるのは瀬那くん本人なわけだし。……でも、理由はきっと僕が口籠っていたからで――
「……そっか。それにしても、すっごくカッコいいね朝川くん。学校とかでもモテるんじゃない?」
「……別に、それほどでもないっすよ。そもそも、モテたってしょうがないですし」
「……ふぅん、もったいないなぁ。まあ、考え方は人それぞれだしね。それじゃ、またね逢糸くん、朝川くん」
すると、そう言って笑顔で手を振り去っていく晴香さんと二人のご友人。そんな彼女らの背を見送った後――
「……おいおい、大丈夫かよ逢糸」
「……あ、ごめん瀬那くん」
ほどなく、そう口にする瀬那くん。突如ふらっとなった、僕の身体を優しく支えながら。……うん、ごめんね瀬那くん。




