帷の下りた帰り道
「――いやーマジで助かったよ逢糸! ほんと、あの辺りは自信がなかったんだよ。でも、お前のお陰で何とかなりそうな気がするわ!」
「……うん、それならよかった。でも、瀬那くんが本当に真剣に聞いてくれたからだよ。だから、僕もちゃんと応えなきゃって改めて思ったわけだし」
「……逢糸……そっか、改めてだけどありがとな」
「……うん、どういたしまして」
それから、数時間後。
帷の下りた空の下を、和やかな雰囲気でやり取りを交わし歩いていく。こうして感謝をしてくれているのはとても嬉しいけど、感謝をしたいのはむしろ僕の方で。瀬那くんが、あまりにも真剣に――それこそ、一字一句すらも逃さないといった様子で聞いてくれていたから、僕の方もとても気合いが入って……まあ、ありがとうって言ってもきっと呆れられちゃうんだろうけど。
……ところで、あの後――ふと、手が重なりぎこちなくなってしまったあの後だけども……うん、しばらくは気まずかった。でも、お互い勉強に集中しているうちにぎこちなさはすっかりなくなって……うん、テスト前でよかった。お陰さまで、勉強という口実が……いや、そもそも勉強がなければあの状況もなかったけども。
……ところで、それはそれとして――
「……あの、瀬那くん。さっきも言ったし、しつこいかもしれないけど……その、わざわざ送ってくれなくていいんだよ? ほら、僕の家って瀬那くんのお家からだとそれなりに遠いんだし」
そう、控えめに伝えてみる。もちろん、近くでも送らなきゃならない義務なんて皆目ないんだけど、それなりに遠いとなればいっそう申し訳ないわけで。
「……まあ、そう言うなよ。ほら、よく言うだろ? 男が夜に一人で歩くのは危険だって」
「……いや、聞いたことないけど」
「まあ、ほんと気にすんなよ。ほら、今日はほとんど勉強ばっかだったろ? だから、まだまだ話し足りないんだよ」
「……まあ、そう言うのなら……」
すると、柔らかな笑顔で告げる瀬那くん。確かに、今日交わしたのはほとんど勉強に関することで、雑談のようなものはほとんどしていなかった。だから、僕を送るがてらこうして……うん、そう言われてしまえば返す言葉もないんだけども。……それに、やっぱり――
「……その、ありがとね瀬那くん」
「ん? おお、気にすんな!」
そう、たどたどしく感謝を告げる。送ってくれなくていい、なんて言っておいて我ながら現金だとは思うけども……それでも、こうして心配してくれているのはやっぱり嬉しいし、それに……我ながら情けないとは思うけど、やっぱり夜道は怖いから。




