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六畳一間で妖精と戦う  作者: 南蛇井


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2-3 黄色い粉まみれ

天井裏から舞い降りてきたのは――

ぱっと花びらが散るような光の粒子をまとった、小さな影だった。

「……君たちかい?」

声はやけに澄んでいて、妙に耳に残る。

やがて降り立ったのは――

人間なら十センチほどしかない、小さなイケメン妖精だった。

金色の髪をさらりと揺らし、薔薇の花びらのようなマントを羽織っている。

「イケメン!」

沙月が思わず叫ぶ。

「……でも、ちっちゃい」

隣で兎子が冷静に突っ込む。

「残念!」

沙月は両手をバッと広げて叫んだ。

小妖精は一瞬むっとした表情を浮かべる。

だがすぐに、花のつぼみが開くような優雅な仕草で胸に手を当て、名乗りを上げた。

「我こそは――花の妖精、フローリス。

 同胞を次々と葬った人間どもよ。君たちの罪、絶対に許さない」

言葉とは裏腹に、声色も立ち姿も妙に絵になる。

モデルみたいなポーズで片手を差し伸べ、光を背負って佇んでいる。

「……いやいやいや、なんで敵がそんなに爽やかなんだよ」

沙月は思わず顔を引きつらせる。

しかしフローリスの瞳は鋭い怒りの光を宿していた。

その小さな体から放たれる気配は、まるで嵐の前触れのように張り詰めている。

「君たちに花粉の裁きを――!」

部屋の空気が一瞬で重くなる。

次なる戦いの幕は、もう上がってしまったのだ。

フローリスが高らかに指を鳴らした瞬間――。

「くらえ!花粉の舞!」

ひらり、と舞い散るのは可憐な花びら……ではなかった。

次の瞬間、部屋一面を覆う黄色い粉が、ドバーッと放出されたのだ。

「ぎゃああああああ!!?」

沙月が悲鳴を上げる。

テーブル、カーペット、ベッド、ぬいぐるみ……。

何もかもが一瞬で黄色い粉まみれに。

「ちょっと!やめてよ!!」

沙月は両手をぶんぶん振り回して粉を払うが、効果はゼロ。

「部屋が! 部屋が粉だらけじゃない!!

 これは嫌がらせ!? 完全に嫌がらせでしょ!!」

隣では――。

「くしゅんっ!! くしゅんっ!!」

兎子がくしゃみの連発で完全にダウン。

涙目で鼻を押さえながら、必死に叫んだ。

「お姉ちゃん!くしゃみが止まらないよぉ!

 ……助けて!本当に死ぬ!!」

沙月はぎょっとして兎子を見る。

「ま、待って兎子!? 鼻水まで垂れてきてるし!?」

そんな阿鼻叫喚の姉妹の横で――。

「……ふっ」

一人だけ落ち着いた声が響いた。

振り向けば、真子。

ゴーグル、マスク、フード付き防護服。

全身を完全防備で固め、まるで研究所の職員のように立っていた。

「私は既に完全防備済みだ。

 この状況は想定の範囲内だ」

「ちょっとぉ!? なんでアンタだけ準備いいの!?

 こっちは鼻水と粉まみれなんだけど!?」

沙月が怒鳴る。

「さすが真子っちゃん……でも今は見てないで助けてぇぇぇ!」

兎子は涙とくしゃみでぐしゃぐしゃになりながら、必死に手を伸ばす。

フローリスは不敵に笑った。

「ふふ……人間どもよ。これが花の妖精の恐怖、永遠の花粉地獄だ!」

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