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六畳一間で妖精と戦う  作者: 南蛇井


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2-2 逃げ道は塞いだ

六畳一間に再び漂い始める、殺気にも似た気配。

戦いはまだ、始まったばかりだった――。

沈黙。

殺虫スプレーの噴射音が消えた六畳一間に、奇妙な静けさが広がっていた。

だが、その静けさは決して平穏ではない。

むしろ――嵐の前の静けさ。

真子はスプレーを片手に立ち上がり、じっと天井を睨みつける。

「……来るな。次のお客さんが」

「え、ええ!? もう!? 早すぎじゃない!?」

沙月は心臓を掴まれたように喉を震わせる。

兎子は慌ててベッドの上に避難しながら叫んだ。

「いやいやいや! もう充分でしょ!? 一匹で大騒ぎだったのに、次って何!? おかわりとか要らないから!!」

部屋の空気がじわりと冷え込む。

外はまだ真昼なのに、まるで夜に変わったかのような影が壁に落ちた。

――バサッ……バサッ……。

どこからか聞こえる羽音。

重たく、鋭く、先ほどの子供妖精の軽やかさとは明らかに違う。

「うそでしょ……? なに、何が来るの……?」

沙月は唇を震わせ、無意識に妹と親友の方へ寄る。

真子は薄く笑った。

「言ったろ。沙月、お前の戦争は始まったばかりだ」

六畳の空間に、次なる“敵”の影が忍び寄る。

それは、彼女たちの平凡な日常を永遠に奪い去る――戦いの序章にすぎなかった。

部屋の空気が急にざわめき始めた。

まるで目に見えない誰かが、薄暗い六畳一間の隅で息を潜めているような……そんな圧力。

「な、なになに何が来たの!?」

沙月が声を裏返らせて辺りを見回す。

真子は冷静に唇を引き結んだ。

「……新しい妖精だな」

「は!? また!? ちょっと勘弁してよ!」

「もう無理! 逃げる!」

沙月と兎子は同時にドアへ駆け寄った――が。

カチャン。

ドアノブを回そうとしたその瞬間、無情にも金属音が響いた。

ドアは固く閉ざされている。

「え? ちょっと!? 開かない! なんで!? 閉じ込められてるじゃん!」

兎子がドアをガチャガチャ揺さぶるがビクともしない。

後ろで真子が淡々と腕を組んでいた。

「……逃げ道は塞いだ」

「なんで!? どうしてそんなことするのよ!」

沙月が半泣きで振り返る。

真子は一歩前に出て、冷たい視線を二人に向けた。

「この部屋にいた時点で、お前たちはもう戦争に巻き込まれてる。姉妹は連帯責任だ。……だから一緒に戦ってもらう」

「連帯責任!? 小学校の掃除当番じゃないんだから!」

沙月が必死に否定するが、兎子はさらに追い打ち。

「やだやだやだ! お姉ちゃんが勝手にやったんだからお姉ちゃん一人で責任とってよ!」

「だからって妹を盾にできるかっての!」

「そもそも盾にされる側の気持ち考えてる!?」

姉妹喧嘩が再燃し、部屋の温度が一気に上がる。

だが、その時――

……カサッ……。

部屋の天井裏から、羽音にも似たかすかな物音が響いた。

その瞬間、三人は同時に息を呑んだ。

戦いの舞台から逃げることなど、もう不可能なのだ。


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