13-3 恋人同士
「アスカ!待ってろ――!」
扉が勢いよく開き、炎の妖精サンジが飛び込んできた。
周囲の空気が一気に熱を帯び、氷の冷気との対比で部屋中の温度差がはっきりと感じられる。
サンジの体からは赤い火のオーラが立ち上り、髪の先や指先から小さな火花が散る。
焦りと決意が入り混じったその表情は、ただ助けたいという一心の証。
沙月と兎子は思わず後ずさり、真子は眉をひそめて冷静に観察。
捕獲された氷の妖精アスカの目も、驚きと期待で輝く。
――この瞬間、部屋の空気は戦場のような緊迫感に包まれた。
氷の妖精アスカを机に縛りつけて、ようやく一息ついた――その時だった。
「そこまでだッ! アスカ! 助けに来たぞ!」
ドアも窓も閉まっているはずの沙月の部屋に、炎のような赤い光が瞬き、炎をまとった少年――炎の妖精サンジが唐突に現れた。
室温が一気に上がり、さっきまで涼やかだった空気が熱に揺らぐ。
「サンジっ!」
机に縛られたままのアスカが、涙声で叫ぶ。
「待ってろアスカ! 今すぐ助け出してやる!」
三人は唖然としたまま、そのやり取りを見ていた。
「……え?」真子が眼鏡を押し上げ、眉をひそめる。「ちょっと待て。いま、“助けに来た”って言ったか? え、まさか恋人?」
「なにこの展開!? 氷の妖精捕まえたと思ったら……恋愛ドラマ始まったんだけど!」沙月が頭を抱える。
「話が一気に昼ドラ化した……」兎子は口をぽかんと開けたまま固まっていた。
アスカは必死に声を上げる。
「サンジ……私、もうだめかと思った……!」
「アスカ! 俺がついてる! 離れ離れでも、俺たちの絆は溶けない!」
「……いやいやいや!」沙月がツッコミを炸裂させる。「氷と炎って相性最悪じゃん! その比喩おかしいから!」
「しかも、まさかの恋人設定。どこからラブストーリー要素が混ざったんだ」真子が冷徹な声で突き刺す。
「完全にジャンル崩壊してる……」兎子はため息交じりにぼそっとつぶやいた。
その瞬間、アスカの身体がじわりと溶け始めた。
「ちょ、ちょっと! アスカが溶けてる!」沙月が慌てて叫ぶ。
「なに!? サンジ、近づきすぎだ!」真子が即座に状況を把握。
「うそ……近くにいるだけでアスカが……!」兎子も目を見開いた。
サンジが顔を青ざめさせ、必死に叫ぶ。
「頼む! 俺をアスカから離せ! このままじゃ……彼女が……!」
即座に真子が動いた。虫取り網GT-Rでサンジを絡め取り、アスカから引き剥がす。
「捕獲完了……っと。危ないところだったな」
アスカは荒い息を吐きながらも、溶けかけた身体を保つ。
「……サンジ……」
「アスカ! ごめん、俺が不甲斐ないばかりに……!」
三人は顔を見合わせる。
「……なんか急に重いラブストーリー見せられてるんだけど」沙月。
「私ら、完全に悪役みたいになって
灼熱の炎をまとい、部屋に飛び込んできた炎の妖精サンジは、迷わず机に縛られた氷の妖精アスカへと駆け寄った。
「アスカ! 今すぐ助けるからな!」
その声には焦りと必死さがにじみ、ただの仲間以上の響きがあった。
「サンジ……!」
縛られたままのアスカが震える声で呼びかける。その瞳には涙が光り、まるで再会を喜ぶかのように彼を見つめる。
瞬間――二人の間に淡い光がゆらりと漂った。
赤と青、相反する炎と氷が不思議に調和し、まるで心臓の鼓動が重なるように、部屋に「ドクン、ドクン」と無言の脈動が響いた気がした。
サンジは彼女に手を伸ばす。
「待たせて悪かった……俺が必ず助ける!」
「ううん……来てくれただけで、嬉しい……!」
二人の視線が絡み合い、恋人同士であることを隠しようもなく示していた。




