表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六畳一間で妖精と戦う  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/56

13-1 あなたたちを氷漬けにしてあげるわ

真子は汗をぬぐいもせず、冷静な表情で呟く。

「文明の利器と妖精の対決……これは時代の象徴だな」

数分、いや数十分。

冷風と灼熱が拮抗し、ただの一歩も譲らない消耗戦。

三人の頬を、熱気と冷気が交互に叩き、息を吸うたびに喉が焼けるように痛む。

それでも――誰一人として、目を逸らすことはできなかった。

部屋の空気はなおも灼熱と冷気がせめぎ合っていたが――均衡は、ゆっくりと崩れ始めた。

灼熱の妖精の身体が揺らぎ、膝から崩れ落ちる。

頬は蒼白に変わり、息も荒い。

「さっ……寒い……」

震える声が、かすれた吐息と共に漏れた。

その肩は小刻みに震え、まるで真夏の太陽そのものだった存在が、冬の吹雪に飲み込まれたかのように弱々しい。

沙月は思わず両手を握りしめて叫ぶ。

「やった……!エアコンが勝ったんだ!」

兎子は信じられないという顔で口を開く。

「……妖精が文明の家電に負けるとか、どんな時代なのよ……」

真子は一歩前に出て、冷静に見下ろした。

「終わったな。灼熱の妖精は、文明の冷風に屈した」

静かに、しかし確かに――決着の瞬間が訪れていた。

エアコンの冷風が部屋を満たし、灼熱の妖精はすっかり萎れて消え去った。

戦いは終わり――だが、静けさの中に残ったのは爽快感よりも、ぐったりとした疲労感だった。

「……勝った、のはいいけど……」

沙月がへたり込む。額に汗はもうなく、代わりに鼻をすすっている。

兎子が眉をひそめた。

「ちょっと沙月、お姉ちゃん。声ガラガラじゃん」

「へっくし!」と盛大なくしゃみをした沙月が情けない声で答える。

「だって……エアコン18度全開なんて……寒すぎるんだよぉ……」

「自分でやったんじゃん!」と兎子が即座にツッコミ。

真子は腕を組み、どこか呆れ顔で分析を加える。

「妖精は撃退できたが、代償は風邪か……。完全に本末転倒だな」

「むぅ……文明の利器の勝利の代償が、私の鼻水って……納得いかないんだけど……」

沙月が涙目で抗議するが、声はすでに鼻にかかっている。

兎子は肩をすくめ、にやりと笑った。

「次はエアコンじゃなくて加減ってものを覚えたら?」

戦いの緊張は解け、部屋には久しぶりにコミカルな空気が流れた。

ただ一つ確かなのは――沙月の喉の渇きも、風邪気味の体調も、まだ解決していないということだった。



沙月の部屋は、昨日の灼熱妖精との死闘の余韻でまだほのかに熱気が残っていた。床には散乱したティッシュや、灼熱光線のせいで少し焦げた跡が点々とついている。

沙月はベッドの縁に腰を下ろし、額の汗を拭いながら、意気込むように叫んだ。

「水!!次こそ水の妖精!」

真子は腕を組み、冷静に視線を巡らせる。

「別に私は何もしてないよ。妖精呼ぶ力なんて、私にはない」

沙月は必死に手を合わせ、訴えるように言った。

「頼んだぞ、真子!」

真子は肩をすくめ、呆れ半分に返す。

「いや、だから私は力なんてないって……」

そんなやり取りをしていると、部屋の空気がひんやりと変わった。窓際の影から、白銀の髪と透き通るような蒼の瞳を持つ少女が現れる。

「ふふっ、私は氷の妖精!あなたたちを氷漬けにしてあげるわ」

沙月は思わず拳を握り、喜びの声をあげた。

「でかしたぞ、沙月!」

真子は半ば呆れた表情で小さく呟く。

「半分バカ……」

一方の兎子は口をぽかんと開け、驚きと戸惑いを隠せない。

氷の妖精アスカの登場で、水確保作戦は予期せぬ展開に動き出した――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ