11-3 ――水だ! 水を持ってこないと……!
真子はすぐに気を取り直し、片付けられたゴミや突風の跡を見渡しながら決意を固める。
「水が足りないが、やるしかないな」
彼女は部屋の隅へと移動し、これからの作業に取りかかろうとする。
真子は無言で部屋の四隅へと歩み寄り、丁寧に塩の結晶をどけ始めた。
「ふむ……これで水の確保が可能になる」と小声で呟き、手際よく配置をずらしていく。
沙月と兎子が横目で見守る中、その表情はまるで戦場の指揮官のように冷静で真剣。
「焦るな。準備は万全にしておかねば」と、妖精襲来に備えるかのように慎重に作業を続ける。
部屋の隅に散らばった小さな白い結晶も、真子の手にかかればただの戦略の一部にすぎない。
真子が慎重に塩をどけ終えた瞬間――
「ピシャッ!」とドアが開き、灼熱の妖精がにゅっと姿を現した。
沙月と兎子は目を丸くし、思わず後ずさる。
まるでずっと二人を監視していたかのような俊敏な登場に、空気が一気に張りつめる。
妖精はにやりと笑い、声高らかに宣言する。
「おはよう諸君!今日はおとなしく焼かれてくれる気になったのかな?」
そして次の瞬間――
「灼熱極熱日差しサンサン光線!!!!」
じりじりと肌を焼く熱気が部屋を満たし、三人は咄嗟に身をすくめる。
真子の冷静な目の前に、灼熱の脅威が全力で押し寄せてきた。
灼熱の妖精の姿を目にした瞬間、沙月は思わず叫ぶ。
「えっ、早すぎ! ちょ、ちょっとストーカーかよ!」
兎子も顔をしかめつつ、突っ込みを入れる。
「お姉ちゃん、何で待ち伏せしてんのよ! 怖すぎるんですけど!」
だが、じりじりと肌を焼く灼熱の熱気が二人を直撃すると、笑い声は消え失せる。
「うっ……や、やばい、これマジでヤバい!」
瞬時に戦闘態勢に切り替え、沙月は机にしがみつき、兎子は壁際に身を寄せる。
笑いと恐怖、焦燥感が入り混じる不安定な空気の中、三人は灼熱の妖精に対峙した。
「ぐわぁっ……! な、なんだこの熱さ……!」
灼熱の妖精が放つ光線は、まるで真夏の直射日光そのもの。
部屋全体を覆う眩い光が、肌をじりじりと焦がす。
沙月は額に汗をにじませながら机にしがみつき、
「う、うぅ……水が欲しい……!」と苦悶の声を漏らす。
兎子も壁際で身をすくめ、顔をしかめる。
「暑い……熱すぎる……なんでこんな時に水も食料もないの!?」
空気は熱気で膨張し、食糧不足と水不足で体力の落ちた二人の防御力は低下。
灼熱の光線は容赦なく襲い、息をつく暇もない。
この窮地、沙月たちはどうやって耐え抜くのか――。
部屋全体が、まるで真夏の砂漠に変わったかのようだった。
窓から差し込むわけでもないのに、天井から床までが灼熱の光に包まれていく。
「――【灼熱極熱日差しサンサン光線】ッ!」
妖精が掲げた手から溢れた黄金色の光が、壁を突き抜けて拡散する。
瞬間、室温がぐんと跳ね上がり、乾いた熱気が肌をじりじりと焦がした。
「ひぃっ……あっつい!」
沙月が慌てて頬を押さえる。皮膚が焼かれるような感覚に、思わず涙目になる。
「ま、まるで蒸し風呂……」
兎子も額から汗を滝のように流しながら、背中を壁に押し付ける。
しかし一番冷静なのは真子だった。腕を組み、息を切らしながらも敵を睨む。
「……水も食料も不足している。防御力は低下している状態だ。
このまま長時間は持たんぞ」
沙月と兎子の表情に、焦りと絶望が交錯する。
昨日から何も口にしていない渇き。
その上で肌を焼く熱。
「や、やばいよ……ほんとに死んじゃう……」
「ちょっと……笑えない……」
汗が雫になって落ちるたび、体力が削られていく。
部屋に漂うのは焦燥感と、背筋をなぞるような死の予感だった。
「うぅっ……もうダメ……! あっつ……!」
沙月は汗でぐしゃぐしゃになった前髪をかき上げ、必死に叫んだ。
「――水だ! 水を持ってこないと……!」




