表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六畳一間で妖精と戦う  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/56

11-1 サバイバルの緊張感とブラックユーモア

真子は冷ややかな声で告げた。

「……持ってきてはいない」

その一言に、沙月はガタッと机から身を乗り出す。

「えええええ!? じゃ、じゃあどこにあるの!? ご飯あるって言ったじゃん!!」

期待と絶望の入り混じった視線が真子に突き刺さる。

だが彼女は一切動じず、淡々と人差し指を伸ばした。

「……あそこだ」

二人の目線の先――指差されたのは、部屋の隅に放置されたゴミ箱。

空カップやら丸めたティッシュやら、突風で散乱した残骸が無理やり突っ込まれている、カオスの坩堝。

「…………いやいやいやいや!!」

沙月が全力で両手を振った。

「ちょっと待って!? あそこゴミしかないでしょ!? ゴミ! 残飯とプリンのカップとゴミだからね!?」

兎子も半眼になってため息をつく。

「……真子っちゃん、まさか食料ってそのゴミ箱から探すって言わないよね?」

真子の横顔は真剣そのもの。

「当然だ」

沙月と兎子の顔から、血の気がサーッと引いていった。

真子は無言でゴミ箱に手を突っ込み、ガサゴソと漁り始めた。

沙月と兎子が固唾をのんで見守る中、彼女の手に掴まれたのは――突風で吹き飛ばされ、くしゃくしゃに潰れた妖精の死骸。

「こ、こわっ!?」

沙月が条件反射で後ずさる。

真子は表情を崩さず、真剣にそれを掲げ上げた。

「……これだ」

部屋の蛍光灯の下、黒ずんだ羽と萎びた体が不気味に照らされる。

「よ、妖精……?」

兎子が震える声で呟く。

真子は冷静そのものだった。

「妖精は魔力生命体。構造は単純だ。焼けば不純物は飛び、魔力を帯びた蛋白質になる。……つまり食料だ」

「ひぃぃぃぃぃぃ!?」

沙月と兎子、二人の悲鳴が重なった。

沙月は慌てて両手を振り回す。

「なにそれ!? ホラー映画!? ゾンビ食べるやつでしょ!? 無理無理無理ぃぃぃ!!」

兎子も涙目で頭を抱える。

「ぜっ、絶対イヤだから! 妖精なんて食べたら一生トラウマだよ! 夜寝れなくなるよ!!」

しかし真子は譲らない。

その姿は、極限状態のサバイバルを生き抜く兵士のように厳格だった。

真子は手にした妖精の死骸を、冷ややかな視線で見つめたまま口を開いた。

「……だが、食わなければ餓死するぞ」

その声は一切の感情を交えず、現実だけを突きつける冷徹なものだった。

沙月は反射的に口を開くが、言葉が出ない。

「ぐっ……」

声にならない呻きだけが喉を漏れる。

横で兎子は、両手で顔を覆いながら震えていた。

「そ、そんな二択……イヤすぎるよぉ……」

涙目で今にも泣きそうな声を絞り出す。

空腹でぐぅぅと鳴る腹の音が、残酷な現実をさらに強調した。

真子の冷徹な言葉と二人の絶望感が、狭い部屋の空気をじわりと重くする。

まるでこの部屋そのものが、異様なサバイバル実験場へと変わっていくようだった。



部屋の片隅、ゴミ箱から救出された突風妖精の死骸が無言の圧力を放っていた。

焦げ臭さと鉄っぽい匂いが鼻をつき、誰も口を開けなくなる。

真子は冷静に言い放つ。

「焼いて食べるか――それとも、他の方法を探すか。選べ」

沙月と兎子は息を呑み、互いの顔を見合わせた。

「……そんな、選択肢が地獄しかないんだけど!」

「生き延びるためとはいえ、妖精料理は無理だよぉ!」

胃袋を締めつける空腹感と、心を締めつける嫌悪感。

二つの板挟みに耐えながら、彼女たちは答えを出さねばならなかった。

部屋の中に漂うのは、サバイバルの緊張感とブラックユーモア。

彼女たちは妖精を食べるのか……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ