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六畳一間で妖精と戦う  作者: 南蛇井


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10-2 未来を守るため

フライパンの底に、かすかにきらめく白い結晶が浮かび上がった。

漂う異臭と、漂う緊張感――そのアンバランスな空気を切り裂くように、真子が指を突き出す。

「――出来たぞ!」

声は重く、響きわたる。まるでノーベル賞級の発見でもしたかのように、厳かで堂々たる口調だった。

彼女の視線の先にあるのは、どう見ても加熱されたコップ一杯分の……おしっこの残骸。

「女子高生のおしっこから抽出した、純度の高い塩だ!」

その宣言は、神聖さすら帯びていた。科学者の栄光に酔うような真剣さ。

しかしその場にいる沙月と兎子にとっては――あまりにも悪夢じみた光景だった。

沙月は口をぱくぱくさせ、兎子は顔を真っ赤にして硬直する。

けれど真子の雰囲気だけは、紛れもなく「偉業を成し遂げた人類の英雄」のものだった。

――ただし、題材が最低だった。

真子の厳かな宣言が部屋に響いた直後――。

沙月がプルプルと肩を震わせ、ついに耐えきれずに吹き出した。

「じょ、女子高生の塩……! なんか、いやらしい響きだね!」

目の端に涙まで浮かべながら笑う沙月に、兎子は顔を真っ赤にして振り返る。

笑ってはいけない。真子は真剣だ。だが、その言葉の破壊力はあまりに強烈だった。

「ちょ、ちょっと! それって……売ったら……売れるのかな?」

羞恥に身を縮めながらも、そんな余計な一言を口走ってしまう兎子。

その瞬間、二人の間で一気に茶化しのムードが広がった。

フライパンの上でキラリと光る白い結晶は――どう見ても、商品化の道を歩むべき代物ではなかった。

茶化す沙月と兎子をよそに――真子は一切笑わなかった。

フライパンの縁から小さなスプーンで白い結晶をすくい上げる。その瞳は真剣そのもの、冗談の入る余地はない。

「……ふざけるな」

低く鋭い声が響き、空気が一瞬で引き締まった。

「これは遊びや冗談で扱っていいものじゃない。妖精との戦いにおいて、必要不可欠な武器だ。軽々しく言葉にするな」

淡く光る塩の粒を、真子は戦略兵器を掲げるように高々と持ち上げた。

彼女にとってそれは、屈辱の産物でも、茶化しの対象でもない。

――未来を守るための、れっきとした武器だった。


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