表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六畳一間で妖精と戦う  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/56

10-1 “女子高生の尿塩”

一方その横で、兎子は顔を真っ赤にし、両手で膝を抱え込みながら縮こまっている。

「……もう無理、恥ずかしすぎて死ぬ……」

小声で震えるその姿は、まるで処刑を待つ囚人のよう。

真子は淡々と頷き、冷静に記録者のような声を落とす。

「よくやったな兎子。これで妖精から生存確率が上がる」

「褒められても全然うれしくないからぁぁ!!」

涙目で叫ぶ兎子の悲鳴をかき消すように、沙月の「ドヤ顔ポーズ」はいつまでも続いていた。

真子は無言でカバンをごそごそと漁り、なぜか取り出したのは――電気コンロとフライパンだった。

「……いや、なんでそんなの持ってきてるの!?」

沙月が素で突っ込む。

「妖精との戦闘を想定して、あらゆる状況に備えているからだ」

真子は真剣そのもの。

そしてコップに貯まった“例の液体”を、ためらいなくフライパンに注ぎ込む。

「じゅわぁぁぁぁ……」

一瞬にして広がる、鼻をつんざく刺激臭。

「くっさ!!」

「地獄の臭いだよこれぇぇ!!」

沙月と兎子は口と鼻を同時に押さえ、涙目でのたうち回る。

しかし真子だけは無表情でフライパンを見つめ、木べらでかき混ぜ続ける。まるで調理番組のシェフのような手際だ。

数分後――。

白い結晶が、焦げつく鉄板の上にかすかに姿を現した。

真子は指先でそれを摘み取り、満足げに宣言する。

「……出来たぞ! 女子高生のおしっこからできた、純度の高い塩だ!」

「そんな誇らしげに言うことじゃないからぁぁ!!」

「恥ずかしすぎて逆に死ねるぅぅ!!」

部屋中に充満する異臭と、謎の達成感。

沙月たちは絶望と羞恥の狭間で、言葉にならない悲鳴を上げ続けた。

白い結晶を慎重にティッシュに包み、沙月は部屋の四隅へと配置していった。

それを見届けると、彼女は両手を腰に当て、にっこりと笑う。

「やったね! これで安心だよ!」

「いやったね、じゃないからぁぁ!!」

すかさず兎子が全力でツッコミを入れる。顔は真っ赤、声は裏返り気味だ。

「何その誇らしげな笑顔!? やってることは、恥ずかしさの極みだからね!?」

しかし真子は腕を組み、顎を上げ、どこか勝ち誇ったような表情を浮かべていた。

「ふっ……安心しろ。これで妖精よけは完璧だ。奴らがこの結界を破ることは不可能だろう」

「いやいやいや、結界の材料が“女子高生の尿塩”って! そんなファンタジー聞いたことないからぁぁ!!」

兎子の絶叫が部屋に響き渡る。

一方で沙月は、まるで勝利の方程式を完成させたかのように親指を立てていた。

「ほら、私ってばやるときはやるでしょ!」

異臭漂うカオスな部屋の中で、三人の温度差だけが妙に鮮明だった――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ