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六畳一間で妖精と戦う  作者: 南蛇井


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8-1 ゴミ箱ポイッ

真子が胸の前で両手を組み、低く唱えると、床に置かれた巨大な装置が轟音を立てて唸りをあげた。

「――【真空X 吸引暴君掃除機Zero式】、起動!」

瞬間、部屋の空気が一気に吸い込まれ、突風の暴れまわる紙や衣類、プリンの空カップまでもが吸い寄せられていく。

突風妖精は必死に風を吹き出そうとするが、空気そのものが奪われ、力が全く入らない。

「な、何だと……!? 風が……吹けない……!」

一瞬で部屋はほとんど真空状態に近づき、嵐のような突風は止まり、混乱に包まれていた空間は静寂を取り戻した。

突風妖精は必死にランドセルの中で抵抗しようとするが、空気が吸い尽くされ力が入らない。

「く、くそっ……動けない……!」

やがてふわりと空中で力尽き、床にどさりと倒れ込む。

沙月は思わず息をつき、兎子も肩の力を抜いた。

「やった…これで、終わったの…?」

「……終わったな」

真子は冷静に妖精の状態を確認しながら言う。

「吸い取りの効果は絶大だ。これで突風は完全に封じられた」

部屋には静寂が戻り、舞い散っていた紙や衣類もゆっくりと床に落ち着く。

部屋の中は、真空掃除で多少片付いたものの、床にはまだ飛ばされた漫画や空カップが散乱している。

沙月はため息混じりに床を見つめ、ぽつり。

「まだ片付かない…うぅ…」

兎子はその横でニコリと笑いながら、倒れた突風妖精を指差す。

「でも、もう妖精は飛ばせないね。平和だよ」

真子は満足げに掃除機を片付けつつ、ふと遠くを見つめるような仕草をする。

「これで一段落。だが、次の妖精戦も控えている。準備は怠らないぞ」

部屋には静寂が戻ったが、次の嵐の気配を感じさせる空気が、かすかに漂っていた。

轟音とともに【真空X 吸引暴君掃除機Zero式】が唸りを上げる。

突風妖精の周囲の空気が一気に吸い込まれ、渦巻く風がピタリと止まった。

「……これで終わりか」

真子の冷静な声が響く。

ランドセルから飛び出していた突風ギミックも動きを失い、床に落ちて無力化。

部屋の中は、突風の暴れ狂いの後とは思えないほど静寂に包まれる。

沙月は目を丸くし、まだ微かに揺れるプリンのカップを見つめる。

「……終わったの?」

すべてが、一瞬の静寂に飲み込まれた瞬間だった。

沙月は床に転がる突風妖精を見て、思わず悲鳴を上げた。

「いやあああ!Gの死骸みたいで怖いぃぃ!!」

プリンの空カップや散乱した漫画の間に、まるで無惨な虫のように転がる妖精の姿。

恐怖と絶望が入り混じった沙月のリアクションは、妙にコミカルで現実感のないほど大げさだった。

兎子はそれを見てクスクス笑いながら、冷静に言った。

「お姉ちゃん、死んでないから大丈夫だよ……」

真子は倒れた突風妖精をじっと見下ろし、眉ひとつ動かさず言った。

「無害だろ。生きてるわけでもないし、ただ床に転がってるだけだ」

その横で兎子は、ためらうことなく手を伸ばすと――

「はい、ゴミ箱ポイッ」

あっという間に突風妖精はゴミ箱の中へ。

飛び散った漫画や空カップの中で、何事もなかったかのように片付けられるその手際の良さに、沙月は呆然と目を見開くしかなかった。

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