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六畳一間で妖精と戦う  作者: 南蛇井


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2/56

1-2 プリン3つで

殺虫剤の霧がゆっくりと晴れていく。

沙月は息を詰め、恐怖に引きつった顔で机の裏を覗き込んだ。

そこにあったのは――。

「…………おじさん?」

小さい。身長はせいぜい十センチほど。

しかし背中には透明な羽が生えており、手足は人間そのもの。

顔立ちはくたびれたサラリーマン風で、額に汗を浮かべて絶命していた。

「な、なにこれ!? きもっ!!」

ただのGならまだしも(いやそれも充分に嫌だが)、この得体の知れない生物は彼女の理性を完全に超えていた。

「ねえ兎子っ! 兎子来て! ほんとに来てよ!これはGよりやばいから!!」

隣室から返ってきたのは、冷ややかな声だった。

「……嫌。気持ち悪そう」

「いやマジでやばいのよ! おじさんよ! 羽の生えたおじさんが倒れてるの!」

「ますます無理。そんなの見たくない」

「プリン三つ買ってくるからっ! 三倍返しするからお願い!」

「…………プリン三つ、ね。……わかった。でも見るだけだからね?」

渋々やって来た兎子は、机の下を覗き込むと同時に飛び退いた。

「なにこれ!? キモッ! おじさんじゃん!!」

「でしょ!? どうすんのよこれ!? とりあえず捨ててきて!」

「は? 嫌に決まってるでしょ。ゴキならまだしも、おじさんは無理。気持ち悪さのジャンルが違う」

「じゃあどうすればいいのよっ!!」

もはや妹は完全に役立たず。

沙月は奥の手を思い出す――。

「……しょうがない。真子を呼ぶしかないか」

幼馴染にして親友の、鉄の肝っ玉を持つ少女。

彼女ならきっと、この不可解すぎる状況を打破してくれるはず。

震える手でスマホを掴み、沙月はダイヤルを押した。

三十分後。

「……なんだ、ゴキブリごときで私を呼び出すな」

玄関のドアを開け、仁王立ちで現れたのは幼馴染の 真子まこ だった。

長い黒髪を後ろでざっくり結び、制服の袖をまくったその姿はまるで戦場に降り立つ傭兵のよう。

彼女の登場に、沙月は涙目で縋りついた。

「ち、違うの真子! 今回はただのゴキじゃないの! おじさんなのよ! いや、おじさんがGで……いやGが……とにかく見て!」

「お前、何言ってるのか全然わからん」

「見ればわかるから! 机の裏よ!」

真子は面倒くさそうにため息をつきながら、机の下に身を屈めた。

そこに転がっているのは――羽の生えた小さなおじさん。

真子は眉一つ動かさず、指先でその死体をつついた。

「ちょっ、ちょっと大丈夫なの!? 触って!」

「大丈夫だ」

「大丈夫じゃなさそうに見えるんだけど!?」

真子はしばらく観察したのち、静かに口を開いた。

「――妖精だな、これは」


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