7-1 突風マシマシ
風で舞い散る紙屑やゴミ袋が顔にバサバサと直撃し、彼女は半泣きで絶叫する。
「いやあああああ! 生き地獄ぅぅぅぅ!!」
ランドセル姿の突風の妖精は、そんな沙月を見下ろしてニヤリと口角を吊り上げた。
「その通りだ! お前らは俺の風に吹き飛ばされるまで、この部屋に閉じ込められるんだ!」
突風が唸りを上げ、散らかった部屋がさらにカオスと化していく。
沙月のプリンの空カップすら、まるで運命を嘲笑うかのようにクルクルと宙を舞っていた。
部屋の中央で仁王立ちする「小学生風の妖精」が、ランドセルの留め金をバチンと外した。
次の瞬間――。
「突風マシマシだぁぁぁぁッ!!」
バカみたいな宣言と同時に、ランドセルの口から爆風が噴き出した。
ブオオオオオオオオッ!! と耳をつんざく轟音が鳴り響き、部屋全体が地震のように揺さぶられる。
床に散らばっていた漫画本は一斉にページをめくりながら宙を舞い、クッションは天井に叩きつけられ、ゴミ袋は風船のように膨らんで飛び回る。
天井近くまで渦巻く乱気流は、まるで部屋そのものが竜巻に飲まれたかのようだった。
「ぎゃああああ!? なにこれ!? 部屋ごと洗濯機に突っ込まれたみたいなんだけどぉぉ!!」
沙月の悲鳴も、突風の轟きにかき消されていく。
突風が荒れ狂う中、沙月は必死に机の脚へしがみついていた。
しかし散乱していた漫画本や、丸めた靴下、脱ぎっぱなしのTシャツが次々と顔面へバチバチ直撃。
「ぎゃああああ!! ちょっ、まって!? 目に……目にプリンのカップ入ったぁぁぁぁ!!」
涙目で叫ぶその姿は、もはや戦闘どころではない。
一方の兎子は、逆立った髪をバサバサさせながら、風圧で壁に押し付けられていた。
制服の袖がバタバタとはためき、必死に踏ん張りながら、冷ややかに言い放つ。
「お姉ちゃんの部屋……完全に災害ゴミ置き場だよ!」
部屋中の物が嵐のように舞う中、真子だけは髪をなびかせながら冷静に状況を見据えていた。
鋭い眼差しで風の流れを観察し、短く指示を飛ばす。
「まず窓を閉めろ! 外と繋がっているせいで風が加速している」
「えぇぇぇ!? こんな暴風の中で!? 無理無理無理ぃぃ!!」
沙月が机にしがみついたまま絶叫する。髪も服も完全に吹き荒れる風のオモチャ状態だ。
兎子は呆れ顔で一度だけため息をつき、そして決意したように走り出した。
「……仕方ない」
ゴオオオッと吹き抜ける暴風に逆らいながら、床を蹴って窓際へダッシュ。
カーテンが鞭のように彼女の頬を叩く。だが兎子は怯まず、勢いよく両手で窓を掴むと――
「っ……閉まれぇぇ!!」
ガシャァァン!!
強引に窓を引き閉めた瞬間、部屋の中の風の流れが一気に鈍り、空中に舞っていた紙屑や服がバサバサと床へ落ちていった。
窓が閉まり、部屋の空気が外と遮断されると、突風は徐々に勢いを失い始めた。
紙くずや漫画、脱ぎっぱなしの服、飛び散ったプリンのカップ――あれほど狂ったように舞っていた物たちが、ゆっくりと床へ落ちていく。
沙月は机にしがみついたまま、ほっと息を吐いた。
「す、少しマシになった……!?」




